VOLKSWAGEN GOLF GTI /GOLF R

往年のホットハッチ的キャラクター

同じコースで取っ替え引っ替え乗ってみれば2台の違いは明確だった。結論から述べれば「ゴルフGTI」は軽快でカジュアルな操縦性が、一方の「ゴルフR」は高いスタビリティと積極的に振り回せるシャシー性能が魅力であった。だが、2台とも従来の成り立ちから期待される以上の走りを見せてくれたのは間違いない。まずゴルフGTIの印象からお伝えしよう。

1976年の初代モデルの登場以来、実用的なハッチバックにスポーツカーの性能を組み合わせるというコンセプトを継承してきたGTIは、スポーティな走りと日常の使いやすさを高次元で両立していると広く認知されている。現行型のいわゆるゴルフ8.5では、最高出力265PSと最大トルク370Nmを発揮する2.0リッター直列4気筒ターボエンジンに7速DCTを組み合わせる。駆動方式はFWDで0-100km/h加速は5.9秒を誇る。

ショートコースで走らせると、往年のフロントエンジン・フロントドライブホットハッチ的元気のよさが前面に出たキャラクターであると感じた。2025年5月にポルシェ・エクスペリエンス・センター東京で試乗した際は、FWDらしいトルクステアもあって、やや荒々しい挙動という印象を持っていたが、今回の富士スピードウェイのショートコースでの走行は異なる一面が見えてきた。

格段にコントロールしやすい後輪

DSCは問答無用でオフにして走り出す。下りのS字コーナーの最初の左コーナーでステアリングを切り込んでいくと、リヤがスーッと流れ、クルマの向きが自然に変えられる。リヤの動きを積極的に利用して旋回姿勢を作れるFWDだ。その挙動に唐突感はなく、トンボが止まりそうなマイルドさでコントロールは容易だ。続く右コーナーも同様に揺り返しで入っていける。操舵に対する反応は軽快で、クルマ全体の動きに機敏さがある。往年のホットハッチのようにリヤを引きずり回して走るようなことはない。リヤの動きが格段にコントロールしやすく、それでいて電子制御油圧式ディファレンシャルロック(XDS)の効果か前輪の駆動力も期待以上だ。

GTIはRほどの絶対的なパワーや駆動力を持たない一方、身のこなしは軽く、コーナリングを楽しめた。日常では扱いやすく、ワインディングやサーキットで走りを楽しめる、ホットハッチの王道を行くモデルでありながら、そのハンドリングには想像以上の懐の深さがある。

装着されていたハンコック製スポーツタイヤ、ヴェンタスS1エボ3を走行後確認すると、4輪が比較的バランスよく摩耗し、前輪が効果的に駆動していると証明していた。10分ほどの短時間走行での観察ではあるものの興味深い結果だった。

トルクベクタリングが生むコーナリング無双

「ゴルフR」は初代の「ゴルフR32」の頃からお気に入りの1台だ。当時は3.2リッターV6に6速MTと4モーション(AWD)を組み合わせ、ポルシェもかくやという走りに感動した。以前PEC東京で行われた試乗会では、スキッドパッドで定常円旋回を自在に楽しめたので、サーキットでの楽しさに期待が膨らんだ。最新のRはGTIと同じ2.0リッター直列4気筒ターボエンジンながら、最高出力333PS、最大トルク420Nmに性能を向上させ、0-100km/h加速は4.6秒と圧倒的だ。4輪駆動システム「4MOTION」を組み合わせ、GTIのスポーツ性能をさらに高い領域へと引き上げたモデルだ。

今回の試乗で強く印象に残ったのはトルクベクタリングの効果だ。後輪左右に伝える駆動トルクを0〜100で可変制御させるRパフォーマンス・トルクベクタリングの効果で、リヤがゆっくりと程よく流れ始める。GTIと異なるのは、きちんと姿勢を作りに行こうと構えなくても、アクセル操作と操舵で気持ちの良い旋回姿勢を作りつつ、XDSでしっかりとトラクションをかけてコーナリングできる。その挙動はGTI同様に唐突にリヤが流れ出すようなものではなく、あくまで穏やかにドライバーがコントロールしやすい速度で姿勢変化する。狙ったラインを外れそうになっても、ステアリングを少し戻せば修正は容易だ。リヤを流す楽しさとオンザレールの安心感が共存していた。コーナリング時には外側の車輪へ積極的にトルクを配分することで旋回を助け、容易にイン側へ巻き込むような感覚を生み出す。

ゴルフRのコーナリングが気持ちいい理由はもうひとつある。コーナー出口でのレスポンスを高めるべく、アクセルを戻した際にタービンを待機状態に保つプリロード・ターボチャージャーが備わるのだ。実際にレースモードで走らせると、単純にエンジンの高出力だけではなく、後輪の駆動力でコーナリング性能を高める技術が、ゴルフRの楽しさを支えていることを痛感した。さらにブレーキングディスクもフローティングでブレーキは信頼感のあるタッチだったことも付け加えておこう。

速さのR、操る楽しさのGTI

ゴルフGTIとゴルフRを乗り比べて感じたのは、両車が異なる方向から走りの楽しさにアプローチしていることだ。GTIはFWDとしては理想的な挙動で、リヤを多少振り出してもトラクションがかかり、コーナリングを楽しめた。ドライバーが積極的にクルマを操る感覚を味わいやすく、軽量な車体もあって、日常からサーキットまで肩肘張らずに付き合える。

対するRもリヤの動きをコントロールしながらコーナーを攻略できるところが魅力だが、より強力なエンジンとAWDによるトラクションを備え、さらにトルクベクタリングによって旋回性能を高めている。GTIより80kg重くとも、それをものともせずに走り、重厚感あるいはいいもの感のある走りが楽しめる。価格もGTIの160万円高とそれなりだが、その価格差に見合うだけのパフォーマンスと技術が盛り込まれていると感じた。

RとGTIは、いずれも単にパワーを競うのではなく、ドライバーが操る楽しさを大切にしている点が印象的だった。どちらが優れているかという単純な話ではなく、どんな走りを楽しみたいかによって選ぶべきモデルが変わる。その両方を用意していることが、ゴルフのスポーツモデルが長く支持されてきた理由だ。

PHOTO/フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン

SPECIFICATIONS

フォルクスワーゲン ゴルフGTI

ボディサイズ:全長4295 全幅1790 全高1465mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1430kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
総排気量:1984cc
最高出力:195kW(265PS)/5250〜6500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1600〜4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後4リンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:225/40R18
最高速度:250km/h(電子リミッター)
0→100km/h加速:5.9秒
車両本体価格:557万9000円

フォルクスワーゲン・ゴルフR

ボディサイズ:全長4295 全幅1790 全高1460mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1510kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
総排気量:1984cc
最高出力:245kW(333PS)/5600〜6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2100〜5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後4リンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:225/40R18
最高速度:270km/h(電子リミッター)
0→100km/h加速:4.6秒
車両本体価格:714万9000円

新型フォルクスワーゲン ゴルフRをPEC東京で試乗「簡単にドリフトが楽しめる感動的ゴルフだ!」

新型「フォルクスワーゲン ゴルフR」を、千葉・木更津のポルシェエクスペリエンスセンター東京(PEC東京)で試乗した。通称「ゴルフ8.5」と呼ばれる8代目ゴルフのマイナーチェンジ版をベースに、シリーズの頂点に立つスポーツモデルがこのゴルフRだ。