「人馬一体」を追求してきたマツダ・ロードスター

ロードスターは、マツダが1989年に発売した2人乗りのライトウェイトオープンスポーツカーである。

初代は同年2月のシカゴオートショーで発表され、日本では9月に「ユーノス・ロードスター」として発売された。海外では「MX-5」の名称で展開され、北米では「MX-5 Miata」として知られている。

開発で重視されたのが、ドライバーとクルマが一体となって走る感覚を表す「人馬一体」という考え方だった。

FRレイアウトや2人乗りのオープンボディ、軽量な車体などを組み合わせ、エンジンの絶対的な出力ではなくドライバーの操作に素直に反応する楽しさを追求している。

この考え方は世代交代を重ねても受け継がれ、現在ではロードスターだけでなく、マツダのクルマづくりを象徴する考え方のひとつとなった。マツダ自身もロードスターをブランドの象徴として位置づけている。

世界的にも長く支持され、「2人乗り小型オープンスポーツカー」の生産累計世界一としてギネス世界記録にも認定されている。

ロードスターの変遷

ロードスターは1989年の初代登場から、現在まで4世代にわたって展開されてきた。

初代NA型ではライトウェイトオープンスポーツカーとしての基本形を確立。2代目NB型はその思想を受け継ぎながら安全性や走行性能を高め、3代目NC型では2.0Lエンジンや電動ハードトップを採用した。

4代目ND型では、軽量・コンパクトという原点を改めて重視しながら、現代の安全・環境性能にも対応している。

ここでは、それぞれの世代の特徴と主な変化を振り返っていく。

初代ロードスター NA型(1989〜1998年)|ライトウェイトスポーツカーを現代に復活

初代ロードスターNA型

初代ロードスターは1989年9月に日本で発売された。

国内では、当時の販売チャネル名を冠した「ユーノス・ロードスター」として登場。オープン2シーター、FR、軽量なボディという構成を採用し、ライトウェイトスポーツカーならではの操る楽しさを追求した。

エンジンには1.6Lの自然吸気直列4気筒DOHCを搭載。

大きな出力を狙うより、アクセル操作への反応や高回転まで滑らかに吹け上がる感覚を重視した。トランスミッションとデファレンシャルを結ぶパワープラントフレームや4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションなども採用されている。

外観ではリトラクタブルヘッドライトを採用。コンパクトなボディと丸みを帯びたスタイルも初代を特徴づける要素となった。

軽量化にも力が注がれ必要以上に装備を増やさず、アルミ製ボンネットなどを採用。車体の軽さそのものを走る楽しさにつなげる考え方が随所に盛り込まれている。

その後は1.8Lエンジンも追加されるなど改良を重ねながら、初代だけで43万台を超える累計生産台数を記録した。

ロードスターに現在まで続く「FR」「2シーター」「オープン」「軽量」、そして「人馬一体」という基本的な方向性を形づくった世代である。

2代目ロードスター NB型(1998〜2005年)|基本思想を継承しながら安全性と性能を向上

2代目ロードスター NB型

1998年1月、ロードスターは初めてのフルモデルチェンジを迎えた。

2代目のNB型では、初代が確立したコンパクトなFRオープンスポーツという構成を維持しながら、走行性能や安全性、日常での使いやすさを高めている。

ボディサイズは全長3,955mm、全幅1,680mm、全高1,235mm。初代からのサイズ拡大を抑え、エンジンをフロントミッドシップに配置する基本レイアウトも受け継いだ。

外観で大きく変わったのがヘッドライトである。

初代の特徴だったリトラクタブルヘッドライトを廃止し、固定式へ変更。一方、丸形を基調としたリヤコンビネーションランプなど、ロードスターらしさにつながるデザインは残された。

エンジンには1.6Lと1.8Lの直列4気筒DOHCを設定し、1.8L車には6速MTも用意。

高剛性・安全ボディ「MAGMA」の採用やSRSエアバッグの標準装備など、安全面も強化された。ボディ剛性や装備を高めながら、アルミ製ボンネットなどを用いて重量増を抑えている。

NB型では、派生モデルも増えた。

モータースポーツを意識した「NR-A」をはじめ、固定式ルーフを持つ「ロードスタークーペ」、ターボエンジンを搭載したモデルなども登場。基本となるライトウェイトスポーツカーの楽しさを維持しながら、選択肢を広げていった。

初代の基本思想を大きく変えることなく、安全性や性能を時代に合わせて磨き上げた世代といえる。

3代目ロードスター NC型(2005〜2015年)|2.0L化と電動ハードトップで楽しみ方を拡大

3代目ロードスター NC型

3代目となるNC型は2005年8月25日に発売された。

「人馬一体」という開発コンセプトを引き続き中心に置きながら、車体やパワートレーンを刷新。新開発の2.0L MZRエンジンを搭載し、環境・安全性能への対応と走る楽しさの両立を図った。

ボディは歴代モデルの中では拡大したものの、重量増を抑えるために各部を見直している。

開発では、重量を削減できる部分を細かく積み上げる「グラム作戦」を展開。アルミ製トランクリッドなど軽量素材も採用し、ボディサイズや安全性能を高めながら軽量な車体を目指した。

NC型を特徴づけるもうひとつの要素が、ルーフの選択肢である。

発売当初のソフトトップに加え、2006年には電動格納式の「パワーリトラクタブルハードトップ」を追加。オープン走行を楽しめる基本的な魅力を残しながら、クローズド状態での快適性や利便性にも配慮した。

2008年にはマイナーチェンジを実施し、内外装だけでなく走行性能も改良。MT車ではエンジンの最高回転数を引き上げるなど、スポーツカーとしての感覚をさらに磨いた。

2.0Lエンジンや電動ハードトップといった新しい要素を取り入れ、ロードスターの楽しみ方を広げた世代だった。

4代目ロードスター ND型(2015年〜)|軽量・コンパクトという原点を見つめ直す

現行の4代目となるND型は2015年5月21日に発売された。

開発では「守るために変えていく」という考え方を掲げ、環境・安全性能への要求に対応しながら、ライトウェイトスポーツカーとしての楽しさを継承。SKYACTIV技術とデザインテーマ「魂動」を取り入れた。

国内向けソフトトップモデルには、1.5L直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.5」を搭載。

エンジンをフロントミッドシップに配置し、前後重量配分にも配慮した。アルミや高張力鋼板などを各部に使用し、先代から100kg以上の軽量化を実現。仕様によっては車両重量990kgまで抑えられている。

ND型では、歴代モデルの中でも特に「軽く、コンパクトなロードスター」という原点を強く意識した設計となった。

発売後の反響も大きく、2015年6月21日時点の累計受注台数は5,042台。月間販売計画500台を大きく上回った。

2016年には、電動格納式ルーフを備える「ロードスター RF」を追加。

ファストバックスタイルとオープン走行を組み合わせ、ソフトトップとは異なるデザインや快適性を持つモデルとしてラインアップに加わった。

4代目ロードスターは「2016 ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」と「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」のダブル受賞も果たしている。

その後も商品改良は続いた。

2021年12月には商品改良を発表し、コーナリング時の車体姿勢を安定させる「KINEMATIC POSTURE CONTROL(KPC)」を全モデルに採用。軽さを追求した特別仕様車「990S」も設定され、2022年1月から販売を開始した。

2023年10月には、4代目として大幅な商品改良を発表。一部のMT車にアシンメトリックLSDを採用したほか、MT車にはサーキット走行を想定した「DSC-TRACK」を追加。マツダ・レーダー・クルーズ・コントロールや8.8インチセンターディスプレイなども導入し、走行性能から安全・コネクティッド機能まで幅広く更新した。改良モデルは2024年1月から発売された。

2024年12月にはロードスター誕生35周年を記念した「35周年記念車」を発表。専用色のアーティザンレッドプレミアムメタリックとスポーツタンのインテリアを組み合わせ、2025年から販売された。

さらに2026年6月には商品改良を発表し、特別仕様車「PS」を追加。

PSにはRAYS製16インチアルミホイール、Brembo製ブレーキ、ビルシュタイン製ダンパーなどを装備した。MT車には加速応答改善制御やヒール&トゥアシスト制御なども採用し、新塗装色「ジンクグリーンメタリック」も設定。同色は2026年10月からの生産開始が予定されている。

初代から受け継いだ軽量・コンパクトなスポーツカーという価値を、現代の技術で磨き続けているのがND型の特徴である。

ロードスターの国内販売台数から見る35年以上の歩み

ロードスターは1989年の国内発売以来、販売台数に増減がありながら現在まで販売を続けてきた。

初代が登場した1989年は9,307台。翌1990年には2万5,226台まで増加し、1989〜2025年の年間販売台数では最も多い数字を記録した。

1991年も2万2,594台、1992年は1万8,648台となり、初代NA型の登場初期には年間1万台を大きく上回る規模で販売されていた。

国内販売台数の推移は以下のとおりである。

ロードスター 国内年間販売台数の推移(1989〜2025年)
年国内販売台数
1989年9,307台
1990年25,226台
1991年22,594台
1992年18,648台
1993年16,779台
1994年10,828台
1995年7,171台
1996年4,409台
1997年3,537台
1998年10,174台
1999年4,952台
2000年4,644台
2001年4,211台
2002年2,934台
2003年1,520台
2004年1,646台
2005年3,657台
2006年4,067台
2007年3,845台
2008年1,858台
2009年1,947台
2010年1,120台
2011年1,104台
2012年941台
2013年768台
2014年595台
2015年8,509台
2016年6,126台
2017年7,005台
2018年5,331台
2019年4,717台
2020年4,413台
2021年5,369台
2022年9,567台
2023年5,991台
2024年9,543台
2025年10,001台
2026年(1〜8月)7,202台

※1989〜2013年はマツダが公表した日本市場の販売実績、2014〜2023年はマツダ公表資料などをもとに整理された国内販売実績、2024〜2026年は日本自動車販売協会連合会の「乗用車ブランド通称名別順位」をもとに記載。1989年は9月発売のため約4カ月分、2026年は1〜8月の累計。

初代NA型では、発売翌年の1990年に2万5,226台を記録。その後は販売台数を減らしていったものの、2代目へ切り替わった1998年には1万174台まで再び増加している。

一方、NB型後半からNC型にかけては販売規模が縮小した。

2002年に3,000台を下回り、2008年以降は年間2,000台前後まで減少。2012年には941台、2013年は768台、2014年には595台となっている。

大きな転換点となったのが、4代目ND型の登場した2015年である。

同年の国内販売台数は8,509台となり、前年の595台から大幅に増加。2016年は6,126台、2017年も7,005台を記録し、新型投入後に販売規模が大きく回復した。

その後は4,000〜5,000台程度で推移する年もあったが、2022年には9,567台まで増加した。

2023年は5,991台へ減少したものの、2024年は9,543台、2025年には10,001台を記録。日本自動車販売協会連合会の集計では、2025年の登録乗用車ランキングで43位となっている。

2026年は8月までに7,202台を販売している。

ND型は発売から10年以上が経過した2025年にも年間1万台を超え、2026年も8月までに7,000台を上回った。長期間販売されている現行モデルが一定の販売規模を維持している点も、ロードスターの国内販売推移を特徴づける動きのひとつといえる。

国内だけでなく、ロードスターは海外でも長期間販売されてきた。

シリーズ累計生産台数は2000年に53万1,890台でギネス世界記録に認定され、2016年には100万台へ到達した。

国内販売が年間数百台まで縮小した時期にもモデルが存続し、世界市場を含めて販売・生産を積み重ねてきたことも、ロードスターが35年以上にわたって4世代を継続してきた歩みを考えるうえで重要なポイントとなる。

まとめ

ロードスターは1989年の登場以来、時代に合わせて車体や技術を変化させてきた。

安全性や環境性能への要求が高まるなか、エンジンやボディ構造、電子制御、安全装備も世代を追うごとに進化。NC型では電動ハードトップ、ND型ではSKYACTIV技術や先進安全装備など新しい要素も取り入れられている。

一方、4世代を通じて軸となってきたのが「人馬一体」という考え方である。

2人乗り、FR、オープンボディを基本とし軽さや重量配分、ドライバーの操作に対する反応を重視する。技術や装備が変わっても、クルマを操る楽しさを中心に据える姿勢は受け継がれてきた。

国内販売台数を見ると、その歩みは必ずしも右肩上がりではない。

1990年には年間2万5,000台を超えた一方、2014年には600台を下回った。それでもモデルは途切れることなく継続され、4代目ND型の登場後には再び販売規模が拡大。2025年には年間1万台を超えている。

4代目の開発で掲げられた「守るために変えていく」という考え方は、ロードスターの歩みそのものにも重なる。

時代の要求に対応するために変える部分と、ライトウェイトスポーツカーとして残す部分。その両方を見極めながら進化を続けてきたことが、ロードスターが35年以上にわたって支持されている理由のひとつといえる。