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自衛隊新戦力図鑑

すでに艦歴30年。能力的にも退役やむなし?

令和7年度(2025年度)防衛予算において、「こんごう型イージス艦の除籍に伴う後継艦検討のため」として、「イージス艦に関する調査研究」費が計上された。「イージス艦」と聞くと、最新鋭艦の代名詞のようにも感じるが、「こんごう」型の艦歴は30年を超え、気がつけば海上自衛隊の現役艦艇のなかでもかなりの古株。退役が検討されるのも、やむを得ない。

3番艦「みょうこう」。「こんごう」型は、アメリカ海軍の「アーレイ・バーク」級イージス艦を参考にしており、艦橋など上部構造物のシルエットがよく似ている。ただし、旗艦機能を持たせるため、司令部要員区画を追加したことで艦橋が大型化した(写真/海上自衛隊)

さて、一般に「イージス艦」と呼ばれているが、正確な艦種は「ミサイル護衛艦」であり、冷戦末期にアメリカが開発した画期的な防空戦闘システムである「イージス・システム」を搭載することからイージス艦と俗称されている。イージス艦は、艦隊を敵の対艦ミサイルから守る防空艦として誕生した(なお、「ミサイル護衛艦」の「ミサイル」とは防空ミサイルを装備することを意味する)。

イージス・システムは段階的に発展しており、そのバージョンは「ベースライン〇〇」と表わされる。「こんごう」型は、建造当初には「ベースライン4.1」(1~3番艦)を搭載していたが、2000年代以降に弾道弾(弾道ミサイル)迎撃能力を追加するため、「ベースライン5.3」にアップグレードされている。一方で、「こんごう」型につづくイージス艦である「あたご」型・「まや」型は、最新ミサイルに対応した「ベースライン9」を搭載しており、「5.3」止まりの「こんごう」型は、能力的に差をつけられてしまっている。

2番艦「きりしま」。艦橋の周囲4面に配置された六角形の物体は、イージス・システムの中核とも言える多機能レーダー「SPY-1」。複数の空中目標を同時に捜索・追尾可能であり、迎撃ミサイルの誘導も担う(写真/海上自衛隊)

「SPY-6」と「SPY-7」。2つの新型レーダーがカギ?

「こんごう」型の後継艦検討で、注目されているのが搭載レーダーだ。現在、海上自衛隊のイージス艦が搭載しているのは「SPY-1」と呼ばれるレーダーだ。これはアメリカ海軍のイージス艦と同じものだが、同海軍では今後、新型の「SPY-6」(RTX社製)を導入することを決定した。すでに、2023年就役の最新型イージス艦「ジャック・H・ルーカス」に搭載され、あわせてイージス・システムも同レーダーとの連接を前提とした「ベースライン10」となった。

アメリカ海軍「アーレイ・バーク」級イージス艦の最新タイプ(フライトIII型)の1番艦である「ジャック・H・ルーカス」。同艦はSPY-6レーダーを搭載している(写真/アメリカ海軍)

同盟国であるアメリカ海軍との相互運用性(インターオペラビリティ)を考えるなら、海上自衛隊もSPY-6を採用することのメリットは大きい……のだが、海上自衛隊が建造中の「イージス・システム搭載艦(ASEV)」が、別の新型レーダー「SPY-7」を搭載していることで、話がややこしくなっている。

そもそも、ASEVの誕生経緯も複雑だ。もともと陸上配備の弾道弾迎撃施設「イージス・アショア」の建設を予定していたが、計画が頓挫し、同施設用のミサイル発射装置やレーダーを艦艇搭載としたもので、2隻が建造中である。

イージス・システム搭載艦のイメージCG。陸上配備予定だった弾道弾迎撃機材を、そっくり艦艇搭載とした。全長は190mとされており、護衛艦としては「いずも」型に次ぐ大型艦となる見込み(画像/防衛装備庁)

「こんごう」型後継艦のレーダーに、ASEVで導入済みの「SPY-7」を選ぶのか、アメリカ海軍との連携が容易な「SPY-6」を選ぶのか、性能はもちろんコスト面も含めた調査と検討が、今後なされていくものと思われる。

さて、2022年の防衛力整備計画でイージス艦を現在の8隻から10隻に増勢する方針が示されている。「こんごう」型後継艦は、既存4隻の代艦に増勢分2隻を加えた合計6隻が建造されるとみられている。

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