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軽二輪枠最速マシンは、なんとスクーターだった!|BMW・C evolution 250cc相当なのにナナハンクラスの加速力、最近の電動スクーターってスゴイ!|BMW・C evolution

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実際はまだ現実的に使えないよね、だとか、速いって言ったって「電動ナリ」でしょう? と言った認識もあるかと思うが、もうそういった考えは完全に捨て去った方が良いと断言。BMW・Cエボリューションの速いことと言ったら! 100km/hまでの加速なら250ccクラス最速!どころじゃない速さなんです。

TEXT●ノア セレン
PHOTO●山田俊輔

BMW・C evolution……1,590,000 円

ルックスはシャープでカッコ良く、しかもBMWらしさもあるデザイン。スクリーンの広さやカッコ良いミラーなど目に入るところに未来感もあって特別な印象もある。実際にまたがるとかなり大柄に感じるのは、脚の間にあるトンネル部分が幅広だからだろう。車重は決して軽くはないが、使いやすいバックギアも付いているため取り回しに苦労することはなかった。

電動バイクの今

 一部の人にとっては、「電動はまだまだでしょう」という認識は過去のものになりつつあって、強大トルクをうまく生かせればとてつもなく速く、魅力的な乗り物ができる可能性を理解していることだろう。事実、モータースポーツの世界でも電動マシンのクラスが増え、あのマン島公道レースにもTT- Zeroという電動バイクのクラスがもう10年も開催されている。しかもたった10年にもかかわらず、長い歴史のある内燃機エンジンバイクと遜色ないタイムまでたたき出しているのだ。エコなイメージの方が先行するかもしれないが、スポーツとしてとらえても電動バイクの実力は確実に高まっているのである。
 対する公道向け、一般向けの電動車は主にスクーターといった近距離実用ユースのモデルに限られているのが現状だろう。いわゆるガソリンスタンドに相当するインフラが全く追いついていないというのが国内において普及していかない理由なのだろうが、逆にそういったインフラ整備が進んでいるアジア圏の国の中では電動バイクが大きな割合を占めている地域もある。よって、特に移動の手段としてバイクを捉えた場合、電動化は周辺環境の整備によって大きく変わることができる、今がまさに過渡期・転換期と言えるのかもしれない。
 そんな中で老舗ビッグメーカーのBMWがこの軽二輪枠スクーターを販売しているのは素晴らしいことと思う。周辺環境が整っているとは言えないものの、それでも電気を動力とする乗り物の魅力をしっかりと発信してくれているのである。

ちょっと数値のハナシでも

 一般的なスクーターとは違う所が多すぎるため、概要を説明しておこう。車体はアルミ製で、今までのように前後輪を繋ぎながらエンジンを保持する「フレーム」という考えではなく、大きな防水仕様のアルミの箱にバッテリーや電子制御系などが収納され、この箱に前後足周りを接続させるためのスチール製部品がボルトオンされる構造だ。そこに搭載されるバッテリーはリチウムイオンの94Ahという最新世代のもので、このおかげで160kmという航続距離を実現しているそう。こういった技術は四輪のBMW i と共通するもので、そのおかげで実現できているとも言えるだろう。
 スペックを見てまた驚く。馬力は48PS(35kW)と控えめ(と言っても250ccクラスと考えると十分以上だが)なのに対し、電動の魅力であるトルクはクランクシャフトで理論上72Nm。これは内燃機エンジンで言えばナナハンクラス相当と言えるだろうが、さらに驚くことに後輪で600Nm近くを発生させるというからもはや訳が分からず、今までのエンジンの感覚が無意味なことに気付く。
 しかし電動のネックであるバッテリーの重さゆえ、車重は275kgとなかなかのヘビーウェイトである。この重量で、大きなバッテリーを車体の低い位置に搭載して、電動車の魅力をしっかりと表現するには、やはりこのスクーターの形が一番適していたのだろう、などと想像をめぐらす。
 なお、充電は家庭用200V電源が必要で、満充電には約4時間30分を要する。航続距離は160kmで充電に4時間と考えると、都市部での一日の移動を十分支えてくれ、帰宅したら充電しておくという、スマホ感覚といったところだろう。

大きな車体が機敏に動く

 275kgの重量のスクーターと聞くと不安がよぎる人もいるだろう。実は筆者も大排気量スクーターを所有しているが、小さめなタイヤとあまり剛性の高くない足周りにハイパワーエンジンと重い車重の組み合わせは、GT的な使い方にはよいが、重さ大きさを感じさせる部分も多いと思っている。ところがCエボリューションは引き起こしでは重さを感じるものの、走り出した時の安定感が非常に高く重量ゆえの不安定さのようなものは全く感じない。このしっかりした剛性感は何だ?とのぞき込むと、倒立フォークが通常のスポーツバイク(もしくはTMAX)のようにステムの上下でしっかりと保持されており、ホイールもスクーターとしては大きめな15インチを採用していた。このおかげもあってかフロント周りが全くフラフラせず、大きなスクーターで時たまみられるコーナーでの剛性の低さは全く感じない。
 アクセルを開けていくと、剛性はしっかり確保されていなければいけなかったんだな、と納得する。というのも、とにかく速いのである。電動車としては速いだとか、スクーターとしては速いだとか、そういうレベルではなく、本当に激速なのだ。駆動が繋がる感じは非常にスムーズで(というか、アイドリングという概念がないのだから「駆動が繋がる」という認識自体が間違っているのだろう)、そこからはアクセル開度に応じて、巨体が予想をはるかに超える機敏さですっ飛んでいく。
 加速力は600ccクラスのスクーターを凌ぐもので、100km/hまでならスポーツバイクにだって負けることはまずないだろう。本当に信じられないぐらい速い。いわゆるトラクションコントロールがついているが、それがなければ少しでも車体が傾いている状態から全開にした時、15インチのラジアルタイヤがいとも簡単にブレイクして大ドリフトになるだろう。トラコンなしでは怖くてとても乗れない程のパワーであり、警視庁が白バイとして採用したのも納得の機動力だ。
 一方の最高速は体感パワーでは200km/h近く出てしまいそうだが、実際は129km/hに制限されている。軽二輪枠に納めるための常識的最高速という事情もあるだろうが、同時にこれだけのパワーだと発熱量も相当なものらしく、オーバーヒート対策で最高速を抑えているという話も聞けた。
 何にしても、とにかくその速さには驚くとしか言えない。巨体を軽々と振り回し、アクセルひとひねりであらゆる交通をミラーの豆粒にする感覚は、もはや麻薬的な魅力があった。

最新とアナログの融合

 こういった次世代的な乗り物は「いったいどうやって操作したらいいのかわからない」ということがままあるが、Cエボリューションについては逆にアナログな部分を色濃く残しているというか、これまで一般的なスクーターに乗っていた人にとっても馴染みやすい各種設定にしているのが好印象だった。
 まずはスマートキーとせず、一般的なカギを使っているのが個人的には嬉しい所。そのキーを回し、今までセルボタンがあった所のスタートボタンを押すと画面にREADYの表示が現れ発進準備OKである。またがってから走り出すまでが通常のバイクと同様なのが、電動という垣根をなくしてくれていると思う。またキャリパーやマスターシリンダーにはニッシン製が使われているほか、ライダーに直接接する部分はどこもなじみがあるというか、外観の未来的な印象と違って慣れ親しんだフィット感があるのも印象が良い。良い意味で「特別感」がなく、誰にでも親しみやすいと思う。もう一つ便利に感じたのはサイドスタンド連動のパーキングブレーキ。他のBMWスクーターにも採用されているが、非常に理にかなったアイデアに思う。反対に限られていたのはシート下スペース。出先でも充電したい場合は充電器を持参しなければいけないわけだが、その充電器がわりかし大きく、シート下スペースに入れてしまっては他に何かを入れるというのは難しいだろう。

各種走行モードについて

 最近ではエンジン付きバイクにも各種走行モードがついているものも増えたが、Cエボリューションも4つのモードを備える。最もダイナミックなのは、その名もDYNAMICで加速力は強烈、そして回生ブレーキも強めに効くためいわゆるエンブレが強い印象でスポーティに走らせたくなる。ROADは加速力は変わらず強烈だがエンブレが弱まったモード、SAILはエンブレがなく、回生ブレーキも発生しないため減速時に充電しないのだが、エンブレがないためアクセルを戻せば重い車体が惰性でかなりの距離を走るため実はかなりエコなモードに思えた。ECO-PROは明らかに加速力が鈍り、一般的な250ccクラススクーターほどの感覚だろうか。
 だいぶ走り込んだが、SAILかROADが街乗りには最も適しているだろう。メーターには残り走行可能距離が常に表示されているため、SAILかROADで走りつつ、残距離に不安が出てきたらECO-PROに切り替えるのが良い使い方かもしれない。なお残距離の表示はアバウトなところがあり、「え?もうそれしか走れないの?」と焦ってエコ運転に切り替えると、途端に距離が増えたりするので、慣れが必用だろう。
 もう一つありがたかったのはバックギアの設定だ。この巨体を押し引きするのはなかなか難儀するため、バックギアはむしろ必須。そしてわずかなヒィーンというモーター音以外音がしないため、例えば地下駐車場や早朝の住宅街など音が響くような場所でも遠慮なくバックギア(というかモーター逆回転?)を使って取りまわすことができる。こういった部分でもいちいち感激・感動してしまい、これまでの常識が破られて「電動」という新たな乗り物が自分の知らなかったところでしっかり成り立っているんだ、という感覚があった。

便利やエコだけじゃない、「駆け抜ける歓び」

 確かに重いことは否めないし、ハンドル幅も足元もかなり大柄ではあるし、値段も決して安くはない。走れば一般的な大型スクーター同様に、コーナーはちょっと気をつけなければいけないとか注意点もある。ただなんといってもそのビックリするほどの動力性能はシンプルに楽しいし、エコというだけでなく走らせる楽しさが確かにある。さらにこのパッケージを車検のない軽二輪として登録できるのもありがたい。インフラの整備や航続距離の問題でまだ長距離ツーリングなどには注意が必要ではあるものの、日々の移動はもちろん、近距離の趣味のユースにも十分対応してくれ、満足感は非常に高いであろうCエボリューション。その感動的なパワーを知ってしまったら惚れてしまうこと間違いない。国内メーカーにも是非とも追随してもらい、さらに盛り上がってほしいカテゴリーと感じさせる確かな魅力があった。

足つき

シートに幅があるためか若干腰高に感じることもあったが、足つきそのものは悪くない。足を降ろした時も車体の幅に気付かされるが、全体的なバランスがいいのか「オットット」という場面は皆無だった。

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