
サブロク時代の軽自動車は根強い人気を誇っている。代表的なスバル360やホンダN360とライフ、マツダ・キャロルなどは今でも旧車イベントに行けばお目にかかれる機会が多い。以前は手頃な価格で買えたため今でも人気があるわけだが、近年では旧車価格高騰のアオリを受けてサブロクといえども安い買い物では無くなってしまった。

その昔、ホンダN360を数万円で手に入れたことがあるので、今の販売価格を見ると異常とさえ表現したくなるほど。ただ、今でも安く手に入れる方法がないわけではない。例えば不動車を手に入れ自分でコツコツと修理して車検を取得すれば、通常の入手ルートで買うよりグッと価格を抑えることができる。実際、以前に数万円で手に入れたN360は車検切れの状態で、そこから数年かけてメンテナンスを施した。中古新規登録も自分で行い無事に公道復帰を果たしたわけで、そこまでの累計金額は10数万円程度だった。

整備やメンテナンスに自信がなくても、小さなサブロクの場合ならできないことはない。何しろエンジンは2気筒や3気筒だしキャブレターもシンプルなものが多い。電装系についても電気を使う部品が最小限だから一つ一つハーネスを追うことが可能。燃料タンクのサビやブレーキまわりの整備をしっかりやれば、オーナー自らメンテナンスを行うことは決して難しいことではないのだ。例えば今回紹介するレックスもそうで、オーナー自ら修理とメンテナンスを繰り返して公道復帰を果たしたそうだ。

第2回水戸クラシックカーフェスティバルの会場には、日頃お目にかかる機会の少ない希少なクルマが数多く展示された。中でも目を引いたのがこのレックスで、ボディの上面が見事に錆びて独特の風合いを醸し出していた。さらにナンバープレートを見れば「釧路」とある。もしやこの状態で北海道から自走されたのかと思って、近くにいたオーナーに話しかけてみた。そのオーナーは40歳になる南部博樹さん。「もしや自走ですが」と聞けば「いえいえ、実家が釧路なので登録が北海道なだけで今は宇都宮に住んでます」とのこと。

南部さんがレックス、ひいては旧車を好きになったのはお父さんの影響だそう。なんでもスバル360を所有されていることから古いスバル車に興味を持ったのがきっかけ。運転免許を取得するとホンダCB750FOURやプリマス・フューリーⅢなどを所有するほどになっていた。そんな南部さんが18歳で就職した時に就職祝いとして手に入れたのがレックスだったのだ。

手に入れたレックスは15年間不動だったもの。しかもスクラップヤードにあった個体だそうで、確かにこれだけサビが目立つボディでは売るに売れなかったと思われる。ただ、一部の旧車好きにはサビに愛着や郷愁を感じる人もいる。南部さんもその一人で手に入れてからメンテナンスを繰り返し内装などはキレイにしたが、このボディだけはそのまま残そうと考えた。何しろグレード名であるGSRの文字が残っていることから新車時の塗装だと思われるし、サビが古いクルマならではの味わいとして感じられるからだ。

ただし、グレードがGSRであるために厄介なこともある。レックスは1972年にスバルR-2の後継車として発売された。そのためリヤエンジン・リヤドライブであることや水冷2ストローク2気筒エンジンなどを継承していた。ただスタイルは見事なウエッジシェイプとされ、エンジンも時代に即した高性能ぶりとなった。エンジンは大きく分けて3種類ありシングルキャブの32ps仕様と高性能35ps仕様、さらにツインチョーク式キャブレターにより37psを発生する仕様が存在する。そしてGSRは37psの最強仕様なのだ。

排気量が360ccなのに37psの最高出力を発生するということは、リッターあたり100psというハイパフォーマンスだったことになる。それだけにツインチョークキャブレターの調整次第で高性能を維持できない場合もある。シングルキャブに比べ構造が複雑であり、気筒ずつにベンチュリーがあるため2つの同調をしっかりとらなければならない。それだけに時間も手間もかかるキャブレターなのだ。

南部さんは旧車好きが高じて整備工場へ入社してしまった。そのためメンテナンスやオーバーホール作業は苦ではなく、もしろバイクやアメ車でも鍛えられていたからレックスのことは自分でトコトン面倒を見ることができた。そのためお住まいの宇都宮から水戸までの移動くらいは苦でもない。むしろ運転することが楽しくて仕方ないと言ったところなのだ。

すっかりレックスの魅力にハマってしまった南部さんは、なんと2019年に同じレックスの73年式カスタムLを買い足してしまった。37psのツインチョークキャブだけでなくシングルキャブのレックスがどのようなクルマなのか気になるところからの買い足しだったわけだろう。スバル360やR-2ならともかく、数の少ないレックスを2台も所有できたことに南部さんの思い入れの強さが現れている。
