カーボンニュートラルでここまで速くなるのか!

次世代スペックが筑波の常識を書き換える

HKSレーシングパフォーマーGR86は、これまで筑波で55秒001というベストタイムを記録しながらも、あと一歩のところで54秒台に届かずにいた。しかし今シーズン、その壁をついに突破。アタック筑波2026前日の走行で54秒758をマークし、念願の54秒台へと突入した。

記録樹立当日は路面コンディションに恵まれなかったものの、それでも54秒759を記録。GR86のポテンシャルを改めて証明する結果となった。その背景にあるのが、燃料とタイヤという2つの進化だ。

まず注目すべきは燃料である。長年使用してきたレースガソリン“ドラガス”に代わり、今回投入されたのはバイオエタノール主体のカーボンニュートラル燃料『CNR-FUEL Bio-E85 Plus』。E85をベースに専用添加剤を加えることで、極めて高い耐ノック性能と冷却効果を実現している。実測では市販ハイオク比で約6度、従来のドラガス比でも約2度の点火進角が可能となり、エンジン性能をさらに引き出すことに成功した。

搭載されるエンジンは、HKSオリジナルの鍛造ピストンやH断面コンロッド、専用クランクシャフトを組み込んだFA24改の2.5L仕様。そこに従来のボルトオンターボを上回る風量を持つ試作タービンを組み合わせ、高出力とレスポンスを両立している。なお、カーボンニュートラル燃料のテスト段階ということもあり、ブースト圧は1.4〜1.5キロに抑えたセッティングとなっている。

この仕様での実戦投入は今回が初となるが、燃料変更のみで出力は550psから590psへと向上。さらにシャシーダイナモ上では630psオーバーも記録しており、“環境配慮=パワーダウン”という従来のイメージを完全に払拭した。燃料ラインは一部をアルコール対応に変更したのみで、基本スペックは2025年時点とほぼ同一という点も見逃せない。

足元を支えるタイヤも重要な進化ポイントだ。今シーズンからアドバンA050のA1コンパウンドを採用。従来使用していたGSコンパウンドに比べてピークグリップは高いものの、その性能を引き出せる時間は極めて短く、扱いはシビアだという。それでも、このタイヤのポテンシャルを最大限に引き出すことで、タイム短縮に大きく貢献している。

シャシー周りは昨シーズンから大きな変更はなく、サスペンションはハイパーマックスSPL、ブレーキはエンドレス製(フロントMONO6/リヤS4Rインチアップ)を継続使用している。

インテリアは徹底した軽量化仕様とされ、ブリッド製フルバケットシート「ZETA4」を1脚のみ装着。ロールケージはオクヤマ製を組み込み、シンプルかつ機能最優先の構成となっている。

駆動系には600ps級のパワーを受け止めるべく、トルク容量700Nmを想定した試作シーケンシャルミッションを搭載。完全ボルトオン設計とされ、市販化も視野に入れて開発が進められているという。

エクステリアはタイムアタック専用に開発されたHKSボディキット タイプRをベースに、フロント+55mm、リヤ+65mmのワイド化を実施。295サイズのタイヤを収めるとともに、大型カナードや専用アンダーパネル、スワンネックタイプのGTウイングを組み合わせることで、高速域での安定性とトラクション性能を高めている。市販モデルとは一線を画す競技仕様の空力パッケージだ。

今回のアタックは、あくまでカーボンニュートラル燃料の実戦テストという位置付けであり、エンジンもまだ余力を残した状態でのトライだった。それでも54秒台に到達したことは大きな意味を持つ。来シーズンに向けてはエンジン内部のさらなる強化を行い、630psをフルに引き出す仕様への進化を予定しているという。

環境性能とパフォーマンスを高次元で両立する新たなフェーズへ。HKSが提示したこの1台は、チューニングの未来像を明確に示す存在と言える。

●取材協力:エッチ・ケー・エス 静岡県富士宮市北山7181 TEL:0544-29-1235

「わずか3カ月で筑波57秒台!」HKS最新ワークスカー“FL550R”という異次元の怪物

市販パーツを軸に構築された開発車両が、短期間で筑波57秒台を記録した。HKSレーシングパフォーマーFL550Rは、純正エンジンにボルトオンターボを組み合わせた450ps仕様で、そのポテンシャルを証明。次なる550psを見据えた挑戦が始まっている。

【関連リンク】
エッチ・ケー・エス
https://www.hks-power.co.jp