熱の逃げ場がない真夏のエンジンルーム内は50℃以上

アイドリング中はラジエーターに走行風は当たらず、エンジンルーム内に風を取り込むことも、熱気を抜くこともできないため、エンジンやエンジンルーム内の温度はどんどん上昇する。
適切にメンテナンスされた水冷エンジンであれば、ラジエーターによる水冷システムが水温を一定に保とうとするため、夏の暑さ程度でオーバーヒートや致命的な故障が起こることはない。
熱源となるエンジン周りのゴム製のホース類やプラスチック部品の硬化や亀裂の懸念はあるが、近年のクルマであれば十分な耐熱性が備わっているため過度な心配は無用といえるだろう。
しかし、アイドリング中は冷却水の温度管理を電動ファンのみに頼ることになるため、電装系に大きな負担を強いる。
夏場における長時間のアイドリングが直接クルマを壊す原因にはなりにくいが、バッテリーやエンジントラブルにつながる起点となることだけは覚えておきたい。
夏のバッテリー上がりと劣化の原因もエンジンルームの熱

エンジンルームの温度上昇によって、もっとも悪影響を受けやすい部品がバッテリーだ。
補機バッテリーとして多く用いられる鉛バッテリーは高温にさらされると内部の化学反応が過剰に促進され、蓄えられた電気が減りやすくなる。また、鉛バッテリーは過放電状態が続くと著しく寿命が縮む特性を持つ。
この熱による自己放電と過度な電力消費が重なることで起こるバッテリーの急速な劣化が、夏場によく起こる突発的なバッテリー故障の要因だ。
長時間のアイドリングで断続的に回るラジエーターファンの消費電力はクルマの電装品のなかでも最大級となるうえ、エアコンを稼働させると消費電力はさらに増大する。
消費電力が増えた場合でも、クルマはバッテリー上がりが起きないようにエンジン回転数を上げてオルタネーターの発電量を増やすように制御されるため、バッテリー上がりは起こらない。
しかし、オルタネーターの劣化やベルトの緩みにより十分な発電量が確保できない場合は、不足分をバッテリーからの持ち出しで補う形となり、アイドリング中のバッテリーは過放電状態に陥りやすくバッテリーの寿命が大きく削られる。バッテリーの劣化具合によっては突発的な故障も起きかねない。
吸気温度が高い状態での全開加速はエンジンを壊す恐れが

長時間のアイドリングによるエンジンルーム内の温度上昇は吸気温度の上昇も招く。また、エンジンが発する高温は配管内の燃料を気化させるパーコレーションの発生も促す。
吸気温度が極端に高い状態はエンジンの圧縮熱が想定以上に高まり、ノッキングが発生しやすい状況を作ってしまううえ、パーコレーションにより燃料供給が滞ると希薄燃焼となり、さらなるノッキングを助長する。
電子燃料噴射装置(インジェクション)車は燃料のパーコレーションが発生しにくい設計となっているうえ、制御システムはこうした過酷な状況下でノッキングを回避するために、点火時期の遅角制御や燃料増量による気化熱冷却などの補正制御を自動で行ってくれる。しかし制御の範疇を超えると、“デトネーション”と呼ばれるエンジンを壊しかねない重度のノッキングが発生することもある。
とくに、長時間のアイドリング直後や渋滞路を抜けた直後の全開加速は、こうしたエンジン破損のリスクを自ら高める行為だ。なかでもタービンが発する熱の悪影響が大きいターボ車や制御性能が限られる低年式車、ECU書き換えなどで制御マージンを削っているチューニングカーは特段の注意を払いたい。
上昇した吸気温度自体は数百メートルも走行すれば外気温と同程度まで下がる。長時間のアイドリング後の走り出しは、まず緩やかな加速でエンジンルーム内に走行風を導いてやるのが作法だ。