ただの“買い物グルマ”じゃなかった2代目マーチ

近年の車種で、国内で100万台を突破したクルマは初代フィットや30系プリウス、初代および2代目N-BOXやタントが挙がる。2代目マーチはそれらと肩を並べるクルマだ。

2代目日産マーチは1992年から2002年まで販売されたコンパクトカーだ。ボディサイズはリッターカーとして標準的な全長3720mm×全幅1585mm×全高1430mm。直線的だった初代から、角を落とした丸く愛らしいデザインが2代目マーチの大きな特徴のひとつとなる。

1992年発売当時の新車価格は81万円〜141万円と安価ながら、全車DOHC4気筒エンジンを採用し、排気量は1.0Lと1.3Lが用意された。

2代目マーチは、いわゆる“買い物グルマ”と呼ばれる典型的なコンパクトカーであり特段秀でた箇所はない。しかし欠点らしい欠点が見当たらないところも、当時のクルマとしては非常に珍しい特徴だ。

当時の日産は「1990年代に世界一の運動性能を実現する」ことを目標に掲げており、2代目マーチはR32型スカイラインやP10型プリメーラなどと同時期に開発されたクルマだった。

2代目マーチのシャシーに特別な機構が備わっていたわけではないが、セッティングの妙により、とりわけハンドリングについては評価が高く、海外では『マイクラ』の車名で日本車初となる欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

そのほかにもNME(日産モータースポーツヨーロッパ)がキットカーを開発してWRCに参戦した時期があるほか、フランスの氷上レース“アンドロス・トロフィー”でも活躍していた過去がある。

とくに1.3Lモデルは、ラリーやジムカーナといった国内モータースポーツの入門車として支持され、カスタムパーツも豊富に用意されていた。また、1.0Lモデルの最高出力は現在の軽自動車にさえ劣るものの、エンジン特性はトルクフルで非常に扱いやすく回転数を上げればしっかりとパワーがついてくる。

油圧式のパワーステアリングは適度な重さを備え、MTはスポーツカーのようなダイレクト感こそないが、ロッドリンク式でしっかりとした手応えを返す。なにより軽量であり、1.0LエンジンのFFモデルの車重は700kg台と、いまどきの軽自動車よりも軽い。

免許取り立ての初心者から高齢者まで老若男女に親しまれたクルマでありながら、2代目マーチはその可愛らしい見た目からは想像できないほど多方面で活躍したクルマだった。

未だに100万円以上の値段がつく中古車も

2代目マーチは車両価格が安いうえ流通台数も多かったため、一昔前の中古車市場ではほとんど投げ売り状態だった。

しかし現在では、大手の中古車サイトに掲載されている個体も数十台程度にまで落ち込んでおり、その希少性からか平均価格だけなら次期型となるK12型やK13型マーチよりも高い値付けとなっている。

走行距離5万km以上の個体でも40万円以上の値が付くことは珍しくなく、希少な1.3Lモデルともなれば100万円に近い価格で取引されることもある。

ただし現在販売されている個体は、コンディションが特に優れた極上車や、特殊なグレードなど付加価値の高いクルマが中心だ。

K11型はグレードバリエーションも多岐にわたり、グレード名には“A#”や“B♭”などのように音階や音楽用語が用いられ、クラシカルな意匠を纏うモデルは“タンゴ”“ボレロ”や“ルンバ”などの名前がつけられた。

さらにはスポーツグレードの“アウトストラーダ”や4シーターオープンの“カブリオレ”、ステーションワゴンの“BOX”なども存在したほか、無印良品とのコラボモデルや名門トミーカイラが手掛けたコンプリートカーなども存在する。こうした特殊なグレードは高値となりやすく、なかには価格が明示されず、いきなり応談となっている個体も少なくない。

とはいえ最新車種に比べればあらゆる性能で見劣りするため、2代目マーチは万人におすすめできるクルマではない。しかし、かつてマーチに親しんだ人や身近にマーチがあった人にとっては、強烈なノスタルジーを感じさせてくれる1台となるだろう。

FFの5速MTなら今でも維持は難しくない

故障しやすいCVTモデルや、部品点数が増える4WDモデルを避ければ2代目マーチは非常に壊れにくいクルマだ。中古やリビルトパーツが手に入るうちは維持し続けられるだろう。

2代目マーチは販売期間も長かったため改良も多く、1992年から前期、1997年からの中期、1999年からの後期と大きく3つの世代に分けられる。

もし、これからK11型マーチを購入するのであれば、維持のしやすさを考慮して中期型以降の5速MTを搭載したFFモデルが最善の選択だ。

トランスミッションはMTとATに加え、当時はまだ珍しかったCVTが設定されていたが、初期型の“N・CVT”、後期型で追加された“ハイパーCVT-M6”ともに故障のリスクが高いため避けた方がよいだろう。

メーカーの部品供給は年々乏しくなっているものの、中古部品やリビルトパーツを駆使すれば、まだ辛うじて維持はできる。

K11型マーチのエンジンブロックは堅牢な鋳鉄製であるうえ、カムシャフトの駆動には頑強なローラー式タイミングチェーンが用いられておりエンジンの耐久性自体は高い。その他の部分も含めて構造が単純であるため修理そのものは難しくないはずだ。

ただし、維持するうえではボディの錆が最大の障壁となるため、購入時には下回りの状態をしっかりとチェックしたい。古いクルマではあるが、2代目マーチはまだまだ現役で乗れる数少ない実用車だ。