アルトワークスの韋駄天ぶりはHA36S型でも健在

アルトワークスのフロントバンパーは冷却性を考慮した専用デザインだ。ブラック塗装の専用15インチアルミホイールからは、赤く塗装されたフロントブレーキキャリパーが覗く。ブラックでまとめられた車内には、同じくブラックのレカロシートが標準装備となる。

2015年12月に登場したHA36S型アルトワークスは先行して発売されていたアルトターボRSをベースとして、さらに走りを磨き上げた本格ホットハッチだ。

搭載されるR06A型直列3気筒ターボエンジンはタービンを含めてターボRSやスペーシアカスタムなどと共通だが、アルトワークスではブーストの立ち上がりスピードを高め、より高い最大過給圧を許容する専用制御マップが導入されている。

これにより最大トルクは、ターボRSの98Nmから100Nmへと増強。数値上の違いはわずかだがアクセル操作に対するレスポンスは大幅に向上しているほか、過給圧に応じて白から赤へ色が変化する専用ブーストインジケーターがドライバーの気分を盛り上げてくれる。

5速MTはショートストロークかつ1速から4速までがクロスレシオ化された専用品であり、軽自動車向けFF用トランスミッションとしては極上のシフトフィールを備えている点もアルトワークスの大きな特徴と言えるだろう。

ATモデルは、一般的なトルコン式ではなく自動クラッチ機能を備えた機械式MTである5速オートギヤシフト(5AGS)だ。5AGSにも専用の変速制御が施されたうえでパドルシフトも備わっており、AT限定免許でもアルトワークスならではのダイレクトな加速感が味わえる。

足まわりは専用チューニングのKYB製ショックアブソーバーと強化ブッシュで固められ、さらにドア開口部へのスポット溶接増しによりボディを補強。ハンドリングは標準のアルトとはまったく異なるシャープなものへと変わっており、標準装着タイヤがブリヂストン ポテンザRE050Aであることが高い動力性能とハンドリング性能を裏付ける。

アルトワークスの最大の特徴はパワーウェイトレシオの高さだ。最軽量となるFFの5速MTモデルは車両重量が670kg、4WDの5AGSモデルでも740kgしかなく、0-100km/h加速はより高いエンジンスペックを備えるホンダ S660と同等となる10秒前後で駆け抜ける。

日常の利便性を犠牲にしない4人乗り軽ハッチバックでありながら、天候を問わず高出力を扱える点がアルトワークスの大きな強みであり魅力といえるだろう。

支払い総額100万円を切る中古車が増加中

趣味性が高いスポーツモデルだけに、アルトワークスは走行距離が伸びた過走行気味の個体であっても比較的強気な価格が維持されている。それでも以前よりは買いやすい個体が増えてきた。

アルトワークスの中古車価格帯は、支払い総額で70万円から220万円程度となる。おおよそ170万円以上の個体は未使用車や走行距離が極めて少ない極上車と思ってよいだろう。

走行距離5万km以下の個体は約100万円が底値だが、5速MTや4WDの条件を付けると相場は140万円以上に跳ね上がる。流通している個体の約7割がMT車となるが、4WDモデルは全体の3割程度にとどまっておりやや希少な存在だ。

走行距離5万km以下で5速MTかつ4WDという条件に絞ると150万円が現在の底値であり、当時の新車価格に近い値段が付けられている。それでも同時期に登場したホンダ S660に比べれば、アルトワークスの中古車相場は数十万円ほど安い水準にある。

もし将来的に次期アルトワークスが登場することがあれば相場が下がる可能性はあるが、現状ではコンディションのよい個体は減っていく一方であり、相対的に希少価値も上がっていく。速さと実用性を備えた軽自動車としての価値と希少性を考慮すれば、現在の相場は十分現実的な範疇と言えそうだ。

よりマイルドな乗り味と手頃感を求めるのであれば、アルトターボRSを検討するのもよいだろう。

アルトターボRSは5AGSのみの設定となるが、中古車価格は40万円から130万円程度とリーズナブルだ。走行距離5万km以下の個体であっても100万円を切る。ただし、流通台数はアルトワークスの半分程度となっているため、好条件の個体を探すのはアルトワークスよりも難しいかもしれない。

中古車購入時はエンジンとボディのサビに要注意

ブーストアップなら80ps、タービン交換なら100psが狙える。パワーアップカスタムはエンジンの耐久性は削ってしまうものの、駆動方式を含めてアルトワークスには高出力を許容できるシャシーが備わっている。

アルトワークスはそのキャラクターからスポーツ走行に用いられるケースが多くなる。そのため、走行距離が伸びた個体ほど各部の劣化が進んでいる点は考慮したい。

またカスタムされた個体も多く、過度なチューニングが施された車両はエンジンや駆動系にストレスがかかっている可能性がある。安心して乗りたいのであればノーマルに近い個体を選ぶことが賢明だ。そのうえで、購入時には特有のチェックポイントが存在する。

エンジンまわりではスラストベアリングの摩耗や不具合に注意したい。R06A型エンジンは過去にメーカーによる保証期間延長の対象になっているため、検討車両の整備記録簿に必ず目を通し、適切なメンテナンスやメーカーへの対策が実施されているか確認することが重要となる。

もう1点はボディ後半のサビの有無だ。アルトワークスはリヤフェンダーの内部や下まわりが比較的サビやすい傾向にある。なかでも降雪地域で使用されることが多い4WD車やサーキット走行などに用いられた車両はとくに注意し、購入前にはボディの隠れた場所に深刻なサビが発生していないか入念に確認したい。

ボディの状態さえ良ければ、走行距離が伸び気味の個体でも修理しながらカスタムパーツへ置き換えつつ維持していける。こうした維持ができるのはアフターパーツや純正部品の供給が潤沢な今のうちだけだ。自分好みに仕立て直していきやすい点も中古アルトワークスの魅力であり、維持していくうえでの楽しみ方でもある。