ブレーキ・サスペンション・エンジン全方位スキ無し!

3台の6速MT仕様をテストドライブ!

2026年1月の東京オートサロンでプロトタイプが公開され、大きな話題を呼んだスバルのSTIコンプリートカー「WRX STI Sport#(シャープ)」。抽選申し込みは4月9日から5月17日まで実施され、600台限定という希少性も相まって、倍率は“軽く10倍超”とも噂されているほどだ。

2019年に販売終了したWRX STI以来、約6年ぶりとなるMTモデルの復活であり、現行WRXとしては国内初の6速MT採用車となる。さらに専用のバランスドエンジンも設定されるなど、その内容にも大きな注目が集まっている。今回は、そのプロトタイプに試乗する機会を得た。

このモデル最大のトピックは、やはり6速MTの採用だ。現行WRXとして国内初となる仕様であり、従来のCVTモデルとは異なる走りを求めていたユーザーにとって待望の一台と言える。

今回試乗したのは、4月19日に富士スピードウェイで開催された「シン・モーターファンフェスタ2026」に持ち込まれたプロトタイプ。バランスドエンジン搭載車とノーマルエンジン仕様の6速MT車、さらにラリードライバー新井選手によるカスタム仕様の計3台だ。

まず試したのは、ノーマルエンジン+6速MT仕様のプロトタイプ。クラッチ操作は非常に扱いやすく、発進もスムーズ。2速〜3速主体の走行でも、2.4L水平対向4気筒ターボ「FA24」は十分なトルクを発揮し、ストレスなく加速していく。シフトフィールは軽快で、スコッと気持ちよく入る感触だ。オートブリッピングは非搭載ながら、そのぶん自ら操作するダイレクト感を味わえる。

足まわりにはZF製電子制御ダンパーを採用し、ブレンボ製ブレーキキャリパーや各種STIパフォーマンスパーツも装備。車重は1560kgで、ベースとなるWRX S4 STI Sport R EX(1610kg)より50kg軽量化されている。この差は主にCVTから6速MTへの変更によるものだという。

続いて試乗したのは、コンプリートカーと同仕様となるバランスドエンジン搭載車。スペック自体は標準エンジンと同じ275ps&35.7kgmだが、回転フィールやレスポンスには明確な違いがある。特に常用域での吹け上がりが滑らかで、全体的に雑味が少ない印象。劇的な変化ではないものの、“当たりエンジン”を引いたような気持ちよさがある。

このバランスドエンジンは、ピストンやコンロッドの重量公差を抑え、クランクシャフトやフライホイールの回転バランスも最適化した専用仕様。さらに、このモデル専用ラインで組み上げられる点も特徴となっている。

ミッションは北米仕様WRX用のTY75型をベースに採用。従来のVAB型WRX STIなどに搭載されていたTY85型に対し、単体で約30kg軽量というメリットを持つ。その結果、車両全体の軽量化にも大きく貢献している。さらに、ビスカスLSDや手引き式サイドブレーキも採用され、スポーツ性を強く意識した構成となっている。

インテリアは基本構成こそベース車に準じるものの、レカロ製シートや本革巻ステアリング、専用シフトノブなどで差別化。ブラック×イエローパーフォレーション仕様のウルトラスエードシートはホールド性も高い。

また、スペアタイヤパンやトランクスペースには制振材を追加。単なるスポーツモデルではなく、ストリートでの快適性もしっかり考慮されている点が印象的だ。過度に尖らせるのではなく、グランドツアラー的な性格を残しているのも、このWRX STI Sport#ならではと言える。

さらに、STI製フレキシブルドロースティフナー(前後)やフレキシブルドロータワーバー(フロント)といった専用パフォーマンスパーツも標準装備される。

一般的な補強パーツが左右のストラットタワーをリジッド固定するのに対し、これらは内蔵スプリングによってプリロードを与え、ボディ全体の剛性バランスを均一化する設計。さらに接合部にはリングボール構造を採用し、適度な可動性も持たせている。

“フレキシブル”の名の通り、適度な自由度を確保することで、ボディの不要な遊びや微小なガタを抑制。わずかなステアリング操作にもリニアに反応し、ドライバーがクルマを操っている感覚を強く引き出してくれる。

足まわりは専用セッティングが施され、マットグレー塗装の19インチホイールにポテンザS007(245/35R19)を組み合わせる。ブレーキはフロント6ポット、リヤ4ポットのブレンボ製キャリパーにドリルドローターを組み合わせた本格仕様だ。

エクステリアはベース車のイメージを踏襲しながら、ブラックベゼルヘッドライトやブラック塗装ドアミラー、ルーフアンテナによって引き締まった印象に仕上げられている。大型GTウイングではなく、小ぶりなトランクスポイラーを採用している点も、ストリートユースを重視したキャラクターを感じさせる。

さらに今回は、新井選手がセットアップしたカスタム車両にも試乗することができた。これはスバルやSTIが仕立てた車両ではなく、“振り回して遊べる仕様”をテーマに新井選手自身が仕上げた一台。市販LSDや強化クラッチを組み込み、タイヤも標準の245幅から225幅(ADVAN APEX V601・225/40R19)へ変更されている。

いわば“新井SPL”とも呼べる仕様で、フィーリングは標準車とは大きく異なる。標準車が安定性重視でグリップを失いにくいのに対し、こちらはラフな操作で積極的にリヤをスライドさせられる特性。それでいてコントロール性は高く、過度な怖さは感じない。WRX STI Sport#というベース車両の懐の深さも実感できた。

WRX STI Sport#の開発責任者であり、レヴォーグやレイバックも手がけた小林正明氏は、「MTモデルを求める声は非常に多く、それに応える必要があった」と開発背景を説明する。

そのうえで、水平対向エンジンとシンメトリカルAWD、そして海外仕様で実績のある6速MTといったスバルの既存資産を活用し、できるだけ手の届きやすい形で“スバルらしい走り”を楽しめるパッケージとしてまとめたという。

さらに今後については、「今回は限定モデルですが、将来的にはカタログモデルとしてMT車を展開することも視野に入れています。STI Sport#はその第一弾です」とコメント。今後の展開にも期待が高まる。

バランスドエンジンや6速MT化に加え、ブレーキ、足まわり、内外装まで徹底的にSTIチューンが施されたWRX STI Sport#。それでいて価格は610万5000円と、ベースモデルとなるWRX S4 STI Sport R EX(502万7000円)に対して約100万円アップに収まっている。装備内容や完成度を考えれば、その差額以上の価値を十分に感じられる一台だ。

TEXT:三木宏章(Hiroaki Miki)/PHOTO:平野陽(Akio Hirano)

●取材協力:SUBARU

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