「利益の総額」ではトヨタ、「利益率と1台あたりの利益」ではフェラーリという構図に

世界の自動車メーカーの中でも、最大手のトヨタと高級スポーツカーメーカーのフェラーリは、事業規模が大きく異なる。しかし、営業利益という観点で比較すると、両社のビジネスモデルの違いが鮮明に見えてくる。

フェラーリ F80

トヨタとフェラーリはどちらも自動車メーカーであるが、両者が同じ土俵で語られる機会はそう多くない。トヨタは年間1000万台規模の販売を誇る世界有数の量産メーカーであり、2025年3月期の営業利益は約4兆7955億円であった。売上高は48兆円を超え、自動車業界でも世界トップクラスの収益力を維持している。営業利益率は約10%で、巨大な販売台数を背景に利益を積み上げる「薄利多売型」のビジネスモデルが特徴である。

トヨタ RAV4

一方、フェラーリは年間販売台数が1万台半ばに過ぎない超高級車メーカーである。フェラーリが1年間に世界中で販売する台数は、トヨタが繁忙期の数日間で販売する台数よりも少ない。

しかし、純粋な規模ではなく1台あたりの利益に着目すると、フェラーリの強みが際立つ。1台あたりの利益は極めて高く、営業利益率は20%台後半から30%近い水準を維持している。

販売台数ではトヨタの1000分の1程度でありながら、ブランド力と高い付加価値によって圧倒的な収益性を実現しているのである。つまり、トヨタは幅広い市場で成功を収め、明確な事業戦略と圧倒的な規模で利益を生み出している。一方のフェラーリは、希少性を武器とする極めて繊細な戦略によって高い収益性を確保していると言える。

トヨタは数十の市場で一般消費者向けに数百万台もの自動車を生産する、世界で最も洗練された産業企業のひとつであることは間違いない。

トヨタは2026年3月期において、連結車両販売台数約959万5000台を記録した。純売上高は50兆6840億円、営業利益は3兆7660億円である。営業利益を連結販売台数で割ると、1台あたり約2595ドル(約41万円)の利益となる。

営業利益の総額で見れば、トヨタはフェラーリを大きく上回る。トヨタの営業利益はフェラーリの数倍以上に達しており、絶対額では比較にならないほどの差がある。しかし、利益率で比較するとフェラーリが圧倒的に優位である。トヨタが1台あたりの利益を積み重ねて巨額の利益を生み出すのに対し、フェラーリは希少性とブランド価値を武器に高収益を確保している。

では、トヨタがフェラーリ1台分の利益を得るためには何台のクルマを販売する必要があるのだろうか。

フェラーリは2025年に1万3640台を出荷し、純売上高71億4600万ユーロ(約1兆3000億円)、営業利益21億1000万ユーロ(約3900億円)を計上した。営業利益を出荷台数で割ると、1台あたり約15万4700ユーロ(約2850万円)の利益となる。

前述の通り、トヨタの1台あたりの営業利益は約2595ドル(約2232ユーロ、約41万円)である。そのため、フェラーリ1台分の利益を得るには、トヨタは約65台を販売しなければならない計算になる。

この違いは、自動車メーカーの経営戦略そのものを象徴している。トヨタは幅広いユーザー層に向けた量産車を中心に世界市場を支配する一方、フェラーリは生産台数を意図的に抑えながらブランド価値を高め、高価格で販売することで利益を確保している。

つまり、「利益の総額」ではトヨタ、「利益率と1台あたりの利益」ではフェラーリという構図である。

国産メーカーの多くは薄利多売型のビジネスモデルを採用している。そのため、販売台数や販売数量を維持し続けることが極めて重要となる。1台あたりの利益が小さいため、販売がわずかに落ち込むだけでも利益への影響は大きい。景気後退や市場縮小、競争激化によって販売台数が減少すれば、収益が急速に悪化する可能性がある。

薄利多売は、多くの顧客に商品を届けられるという大きな強みを持つ一方で、販売規模の維持、コスト削減、生産効率の向上など、常に高い経営力が求められるビジネスモデルである。だからこそ、世界規模で薄利多売を成功させている企業は決して多くない。

そう考えると、現在の自動車業界において、トヨタを除く多くの国産メーカーが苦戦を強いられている状況も理解できる。トヨタほどの規模と収益力を持たないまま、同じ量産ビジネスを維持することの難しさが、近年ますます鮮明になっているからである。