ヤリスの使い勝手を見てみると、クルマの立ち位置や考え方も従来型ヴィッツから変化したことを実感する。例えばドライビングポジションは低くなり、空間効率よりもスポーティな感覚を重視。シートの新機構にも注目だ。 REPORT●工藤 貴宏 (KUDO Takahiro) PHOTO●中野 幸次(NAKANO Koji) ASSISTANT●森脇 亜紗紀(MORIWAKI Asaki)(身長160㎝) ※本稿は2019年12月発売の「トヨタ ヤリスのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

〈取材車のプロフィール〉YARIS HYBRID G

ボディカラー:コーラルクリスタルシャイン×ブラック インテリアカラー:トープ オプション:内装色&シート(トープ/ファブリック“G”カラーパッケージ)/8インチディスプレイオーディオ/15インチアルミホイール&タイヤ/LEDヘッドランプ/ブラインドスポットモニター+リヤクロストラフィックオートブレーキ/高度駐車支援システム ※取材車両はプロトタイプのため、生産車とは一部仕様が異なります。 ※一部のカットは別グレードを撮影しています。


【イージーリターンシート】乗降時には、レバーを上げるとスライドロックがフリーになって簡単にシートを最後部へスライドできる。乗り込んだ後は前に動かせば、元の位置でロック。乗り降りの際に足元が広くなるアイデアで、誤操作を防ぐレバー操作方法も秀逸。


【さらに使いやすくなった駐車支援システム「 Advanced Park」】新システムとなった駐車支援システムは、ハンドル操作だけでなくついに停止(センサー連動のブレーキ制御)までも自動化したのがトピック。カメラによる駐車枠認識も水準が高く、白線がなくても位置を登録できるのも新しい。

〈運転席周り〉ハイブリッドとガソリン車との違いはメーター表示メニュー程度とわずか


ベーシックカーでありながら、「G」グレード以上には8インチ(「X」系は7インチ)のタッチパネルディスプレイを標準装備。高い場所で見やすく、手も届きやすい。ハイブリッド車とガソリン車の違いはメーターとスターターボタンの色程度だ。


3つの液晶を組み合わせ、左右はリングで囲んで立体的な形状とした、これまで見たことがないほど個性的なデザイン。速度は右側にデジタル表示され、数字が大きく目に入りやすいのが特徴だ。「X」系グレードにはアナログメーターを組み合わせる。

ステアリングスイッチは左側がメーター内画面の切り替えで、右側はクルーズコントロールの操作系。トグルスイッチが操作性を高める。オーディオの基本操作は左右に分けて最下部へ組み込んでいる。

右側はウインカーレバーで、最先端のライトスイッチはオートライト法制化を踏まえて「AUTO」が中心となる。左側のワイパースイッチは、「Z」系のみ間欠時間が調整できる。最先端のダイヤルはリヤワイパーを操作するためのもの。


ハイブリッド車もシフトレバーはプリウスなどの電子制御式ではなく、通常タイプ。Bレンジはアクセルオフ時の減速が強くなる。


「X」系を除き、スターター(エンジンが常時かかるわけではないハイブリッドはシステム起動スイッチ)はプッシュボタン式。ハイブリッド車はブルーだ。


インパネ右端には運転補助機能系のスイッチが並ぶ。右下にあるヘッドライトに「A」の文字を合わせたアイコンはオートマチックハイビームだ。


走行モード切り替えは一部仕様を除きノーマルの他「エコ」と「パワー」を用意。ハイブリッドは「EVモード」も設定。


「Z」や「HYBRIDZ」にメーカーオプションで設定されているヘッドアップディスプレイ。カラー表示だ。


ヘッドアップディスプレイはフロントウインドウ投影式。車速やシフトポジション、エンジン回転、クルコン情報などを表示。


ガソリン1.5ℓエンジン車には6速のマニュアルトランスミッションが設定されている。球形のシフトノブは形状も大きさ的にも操作がしやすい。左前方にあるリバースへはリングを引きながら入れる。

メーター内のインフォメーションディスプレイ


【エネルギーモニター】エンジンからタイヤへ、タイヤからモーターへなど、ハイブリッドシステムのエネルギーの流れと駆動用バッテリーの残量を表示。


【運転支援システム】アダプティブクルーズコントロールの設定やレーンとレーシングアシストなど、運転をサポートするデバイスの状況を伝える。


【エコドライブ表示】アクセルの踏み込み状況に応じた省燃費運転の目安となるグラフ(Eco Zone)に加え、発進や巡航、減速のエコ運転度を判定し表示。


【ドライブ情報】平均燃費(数字)に加えてバーグラフによる瞬間燃費、さらには無給油での航続可能距離(過去燃費からの推定値)を教えてくれる。

〈ナビ・AV・空調〉車載ナビはオプションだが、スマホ連動タッチ画面は標準装備


新型カローラ以降のトヨタ車はタッチパネルディスプレイ付きオーディオの標準搭載を進め、ナビは”車載ナビ”ではなくスマホアプリの活用を前提とする方向へシフトした。画面は「X」グレード以上で8インチと大型で、オプションとして従来型の車載ナビも選択できる。通信端末は全車に標準搭載。


画面はタッチパネル式。しかし、スマホとの連携で重視されているのは、音声操作で目的地設定などほぼすべての操作を完結できることだ。


SDL(SmartDeviceLink)と呼ばれるツールを通じてスマホと車両を接続。ナビは「LINEカーナビ」と「TCスマホナビ」が使える。


ディスプレイオーディオは車両とも連携していて、詳細な燃費履歴などドライブ情報も大きな画面で確認できるのが魅力だ。


ハイブリッドシステムのエネルギーの流れを確認できるエネルギーモニター。内容はメーター内と同じだが、大画面のため見やすい。


ラジオやUSB,Bluetoothオーディオは標準搭載だが、CD/DVDプレイヤーや販売店オプション。TVチューナーはオプションサービス。


人気のスマホ地図アプリGoogleマップのカーナビゲーション機能も接続して利用可能。ただし接続はオプションサービスで開始時のみ利用料が必要。


真上から見下ろすような合成画像で車両全周囲を見渡せる「パノミラックビューモニター」を全車にオプション設定。前方ビューも用意。


エンジンを掛けた時(システム始動時)には、自動的に視点が車両周囲をぐるりと回る画面を展開。自車は半透明で表示されている。


車両周囲をぐるりと回る画面は、安全性を高めるアイデア。運転席から黙視できない死角まで見渡せるので、安全確認に大きく役立つ。


エンジン始動時に車両周囲を安全確認できる画面は、ドライバー視点に加え、好みに応じて車両の外から見た画面へも切り替え可能。


通常のフロント/バックモニターも表示。ステアリング操作に応じも示す。た進路予測線が入るほか、センサーと連動した障害物の警告も示す。

初設定のターンチルトシート


従来は福祉車両扱いだった回転シートだが、ヤリスではメーカーオプション扱いとして一般化。リフターの代わりに回転機構を組み込んだもので、着座位置やスライド量は標準車両と同じ。


シートが外側へ向くことの最大のメリットは、腰を痛めているひとやタイトスカートや和服など動きにくい服装の人の乗降性アップだ。


重くて健常者(介助者)でも苦労する車イスの荷室への積み込み/積み降ろしを電動でアシストする仕掛けも設定(装着すると免税/減税措置がある)。


回転軸にリンク機構を設けることで、座面先端が外まで張り出すのがポイント。操作レバーも間違えにくい位置。


車イスの積載をアシストする機構は、アームから垂らしたロープを使って電動で車イスを持ち上げてから、アームを回転させて室内へ移動させる。


車イスの昇降(ロープの巻き取り/伸ばし)は電動。ボタンが大きくてシンプルなリモコンを使って操作する。

〈居住性&乗降性〉パッケージングが変化。着座姿勢は低くスポーティに

前席

シート(「Z」系グレードのみヘッドレスト分離型)はTNGA向けに開発された標準タイプのフレームを使い、座面の角度などクッションをヤリスの運転姿勢に合わせた設計だ。欧州車的な感覚の硬めの着座感で、骨盤をしっかり保持するからサーキット走行でも身体がずれなかったことに驚いた。


シート高:580㎜ ステップ高:365㎜

スポーティな運転感覚を求め、前身のヴィッツに比べると着座位置を約20㎜低く設定。そんな変更もあって、ハイトワゴンなどと比べると乗降時の動きは大きめだ。

後席

パッケージングの変化でヴィッツに対して前後席感距離が37㎜減っているが、着座位置が高めなので足の収まりが良く前方の視界も開けている。シート形状は左右の人が座る部分をえぐることで、姿勢保持性が向上。フィット感は良い。中央席ベルトは天井設置ではなく背もたれ内蔵部へ進化。


シート高:620㎜ ステップ高:390㎜

前席に比べると着座位置が高いのでその分身体の動きは少ないが、車体が小さいので足を出し入れする通路はあまり広くない。また、ドアも大きくは開かない。


主要グレード(「X」系と「G」系)ではヘッドレスト一体型のシートが標準設定。注目装備である運転席イージーリターン機能も非採用だ。


「Z」系グレードに標準装備、「G」系にはセットオプションとして組み込めるシートヒーター。スイッチを入れるとすぐに温まるのが魅力だ。

空調コントローラー


ガソリン車の「X」を除きオートエアコンを標準装備。操作性のポイントは温度設定をダイヤル式としていることだ。ハイブリッド車はエンジン停止中もしっかりと冷房を効かせられるよう、電動式コンプレッサーを組み合わせている。

〈注目装備〉


【コンパクトカーでもコネクテッドカー】「DCM」と呼ぶ通信ユニットを搭載し、インターネット経由でクルマとスマホがつながる。遠隔ドアロックなどが可能。


【スイッチひと押しで緊急通報】事故など緊急時はボタンを押すとオペレーターにつながり、緊急車両の手配サポートを受けられる。


【バニティミラー】「G」系や「X」系は運転席のみの採用。「Z」系は助手席にも備わり、照明も組み込まれるなど仕様が向上。


【スマートキー】一部仕様を除き、キーは身につけているだけでドアロック/アンロックやエンジン(システム)始動が可能な非接触式。

〈室内の収納スペース〉多くの収納に加えて、アイデア装備も搭載


❶ 助手席の前にあるトレーは、助手席の人がスマホを置くのに重宝。置いたものが滑り出ないように、底が傾斜して奥が深くなっている。


❶ 助手席の前にあるトレーは、助手席の人がスマホを置くのに重宝。置いたものが滑り出ないように、底が傾斜して奥が深くなっている。


❷ 位置とサイズがスマホを置くのにちょうどいいインパネ中央のトレー。縁があるのに加え、滑り止め&振動防止のマットも敷いてある。


❸ サンバイザーのカードホルダーは、バニティミラーの蓋と一体化。クレジットカードサイズの樹脂製カードを挟むのに特化したタイプだ。


❹ 保湿系の大型ボックスティッシュも飲み込むグローブボックス。ここは、ヤリスの室内では最も大きな収納スペースだ。


❺ シフトレバーの奥にあるトレー。スマホや財布などを置くのにちょうどいいスペースだ。底には滑り止めと振動防止を兼ねたマットを敷く。


❻ フロントドアのプルハンドルにも“底”があり、小物を置くスペースとして利用可能。結構深くて、スマホも収納できる。


❼ フロントドアポケットは500㎖ボトルを入れても余裕が残る。内部は見た目以上に広い空間になっており、B5の冊子も収納可能だ。

❽ 独自のアイデア装備が助手席の買い物アシストシート。座面前端に壁をつくることで急ブレーキ時でも座面に置いた荷物が荷崩れを起こさず、傘やバッグも掛けられる。


❾ センターコンソールの前席用ドリンクホルダーは、コンビニのカップコーヒーを置いても取り出しやすいよう、「上げ底化」されている。


❿ センターコンソールの最後部には大きめで深いトレーが組み込まれている。前席からも後席からも無理なく届く位置だ。


⓫ シートバックポケットは助手席側だけの設定で、「Z」系グレードに標準採用。「G」系にはオプションの「コンフォートシートセット」で用意。


⓬ リヤドアポケットはボトルホルダーに特化。トリム形状は、前方を薄くして足先が当たらないように工夫されているのが分かる。


⓭ 後席のドアハンドルも小物を入れるポケットとして活用できる。サイズはフロントドアと同程度で、一般的なサイズのスマホなら置ける。


⓮ 後席頭上のアシストグリップには衣服を吊るせるコートフックを組み込む。全車採用だが、「Z」系だけは別形状でアシストグリップ一体型だ。

〈ラゲッジルーム〉左右分割可倒シートは全車に採用


車体上部を絞り込んだパッケージングのヤリスは、天井が後方まで伸びていないのでテールゲートを開けた際に車両後方への張り出しが少ない。狭い駐車場などでも開けやすいのがポイントだ。開口部下端の地上高は700㎜。


〈通常時〉高さ:830mm 奥行き:680mm

奥行きはライバルに対して広いわけではないが、左右幅が広いことやホイールハウスの張り出しが少ないのは注目ポイント。ヴィッツに比べると背もたれ上部より上の空間は狭いが、それより下の“日常空間”は同等の広さだ。


〈2列目格納時〉最小幅:815mm 奥行き:1460mm

全車ともリヤシートを倒しての荷室拡大が可能。荷室床が低いので倒した部分とは130㎜ほどの段差ができてしまうが、段差をなくすことよりも絶対的な容量を優先した空間づくりと考えれば理解しやすい。


格納方法は、背もたれを前に倒すだけのタイプ。廉価グレードも含めて左右一体ではなく、6対4分割になっているのがうれしい。床面とシート部分の段差が気になるのであれば、左のカコミで紹介しているオプションの装着で解消できる。


床下アンダーボックスは仕様により形状やサイズが異なり、写真はスペアタイヤ非装着のFFモデル。最深部は10㎝。パンク修理キットを深く沈めて収めるアイデアで、容量を広げている。


右の壁には袋などを吊り下げられるフックを用意。買い物袋を吊って走行中に移動しないようにするのも賢い使い方。


左側にはテールゲート開放に連動し荷室内を照らすランプを内蔵。夜間や暗い場所で便利。


背もたれを倒す際に操作するロック解除ボタンは、背もたれの上部に組み込まれている。

オプション装置で使い方が広がる


メーカーオプションのアジャスタブルデッキボード装着で床面が高くなり、開口部から倒した後席まで大きな段差のない床となる。


ハイブリッド車に装着できるAC100Vコンセントは、1500W(一般的な車載電源の10倍以上)と電子レンジやドライヤーが使える大容量が自慢。停電時に役立ち、アースまで備える。


アジャスタブルデッキボードはいわば“二重底”。ボードの下はサブトランクとして活用できる。取り外しも可能。


4WDモデルやスペアタイヤ装着車など、仕様によっては床下収納スペースの形状が異なる。

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