
ドゥカティ・モンスター……1,662,000円~






世代を超える「モンスター」
第5世代へとモデルチェンジしたモンスターをプレゼンするにあたり、最初に流れた動画は初代を振り返るものだった。女性が小さかったころの娘とおもわれる少女と、初代のモンスターが共に映っている写真を眺める。キャッチコピーは「I “M” LEGEND」。モンスターの“M” が強調され、そして歳を重ねた夫婦がまた今のモンスターで走り出す。人生の各ステージに、各世代のモンスターが寄り添っていたという、モンスターの歴史をアピールするショートムービーだった。
1992年のケルンショーで登場した初代M900は1993年に日本デビュー、851のシャシーに空冷エンジンを搭載するという新たなアプローチで、当時は公道を積極的に走るライダーに歓迎されただけでなくBOTT(バトルオブザツイン)レースでも活躍した。クラシックテイスではない、高いパフォーマンスをもったカウルレスバイクの提案で、カスタムにのめり込むユーザーも多かった。
広く受け入れられたモンスターは2008年に二本出しのアップマフラーと、タンクにエア導入口のような凹みが設けられハンドル切れ角が増した第2世代へ。2014年には再びダウンマフラーになり1200も投入された第3世代に、そして2021年に今のスタイルと共通性がみられる第4世代へと進化。その間には水冷モデルや足回りが豪華なモデルなどバリエーションも豊富に展開。そして今回の第5世代はトレリスフレームからモノコックとなりエンジンもデスモ機構と決別するなど、ルックスこそ第4世代と共通する部分も多いものの、その中身を大きく変えてデビューした。
まるで別物なのに、ほぼ同じ

ドゥカティといえばシリンダーヘッドに確実なバルブ開閉を約束する伝統のデスモ機構を採用することこそがアイデンティティだろう。MotoGPマシンをはじめ現在も多くのモデルがこのデスモを採用している。しかしその機構の複雑さやメンテサイクル、コスト、そしてどうしてもシリンダーヘッドが大きくなってしまうことから、ドゥカティはムルチストラーダのV4から一般的なバルブスプリングを使ったシリンダーヘッドも採用し始めた。
今回のモンスターに搭載される「V2」エンジンもしかり。先行してストリートファイターに採用されたエンジン同様に、シリンダーヘッドはデスモではなく通常バルブスプリング仕様であり、このエンジンをモンスター専用にチューニングしている。
バルブスプリング化によりエンジンのコンパクト化が進み、車体設計そのものを見直したこともトピック。これまでのトレリスフレームからアルミモノコックへと変更され、スイングアームもパニガーレなどで見られる上下に広くそして大きく肉抜きされたものに。
これら総合的な見直しでもともと軽量だった車重はさらに4kg軽量化されて175kgとなった。900cc近い排気量で111馬力を発するのにこの車重なのだから、まさに軽量&ハイパワー、初期モンスターが提案した高いスポーツ性を持ったネイキッドというフィロソフィーが引き継がれている。
これだけの大きな変更がなされているのに、先代からルックス的にはあまり大きな変更がないのも興味深い。内容を知れば大きな変更であることはわかるのだが、ドゥカティやモンスターシリーズに詳しい人でなければ、先代と何が違うの? と思ってしまうかもしれないほどだ。逆に言えば、先代の時点で次世代のモンスター像が確立されており、今回は中身をアップデートさせたと捉えるのが自然なのかもしれない。
5年で得たもの

軽量車体にハイパワーな水冷エンジンと聞けば、ドゥカティというブランドであることも加味して「ハードル高そう……」と感じる人もいるだろう。事実、先代以前のモデルでモンスターの認知が止まってしまっている人にとって、その感覚は正しい。かつてのモンスターはどれもドゥカティらしい、時には過敏なスポーティさを持っていたし、排気量やバリエーションモデルによってはネイキッドなのに極端すぎるだろう!と突っ込みたくなるような激しさがあり、ハードルが高いモデルも少なくなかった。
ところが先代からはそんなイメージはずいぶん和らいだ。シートは低く、車体は小さく、低回転域も十分使いやすいエンジン特性でだいぶフレンドリーになっていたのだ。その先代からわずか5年でのモデルチェンジはモンスターの歴史の中で最短。「今後のモンスターの方向性としてこれが正しい」と確信したうえで、さらに新エンジン、新フレームを投入した流れが見える。
最大の変更はエンジン。バルブスプリング化により軽量コンパクトになり、また吸気側に可変バルブタイミング機構を採用したこともあってわずか3000rpmで最大トルクの70%を発揮、そして4000rpmから10000rpmという広い回転域で80%以上のトルクを維持する。もう一つ見逃せないのはメンテサイクルの延長だ。オイル交換は先代の12000km毎から15000km毎に、そしてバルブクリアランスのチェックに至っては24000km毎が45000km毎となった。
いわゆる「普通のエンジン」化したともいえるだろう今回の変更。これまでずっとデスモにこだわってきたドゥカティはバルブスプリング仕様のヘッドについてはそんなに経験がないはずなのに、なぜこんなに完成度の高いものを作ることができたのか。そんな疑問をぶつけてみると、「ドゥカティは四輪のアウディとも密接ですから、デスモに限らずあらゆるメカニズムにおいて技術を共有できているのです」という答えが聞けた。
極スムーズなライドフィール

果たして新型エンジンは本当に素晴らしい出来だ。アイドリングはとても静かで噛みついてくるようなどう猛さは微塵も感じない。クラッチミートの素直さは国産車的ですらあり、ごく低回転域でもギクシャクすることはない。そもそもデスモのメカニカルノイズがしないだけで平和であることに気づかされる。あのデスモサウンドはドゥカティらしいスペシャル感こそあるが、同時にちょっとした強迫観念もあったかな? などと考えた。
試乗コースは一応サーキットではあるものの、コース幅が狭くアップダウンもある、公道ワインディングを模したようなシチュエーション。そんなに速度が乗るコースでもないのだが、「このコースなら最も低速のヘアピンでも4速で走れてしまうほどエンジンはフレキシブルですよ」と言われた。
ところが走ってみると4速どころか5速でも走り切ってしまえるほど粘り強く、試しに
6速で回転数を下げていくと2000rpm(約50km/h)まで下がってもトコトコとクルージ
ングできるのには驚いた。クラッチの繋がり感が国産車的と書いたが、ハイパフォーマンスなビッグツインでありながらここまでフレキシブルで粘りのある低回転を持つのも国産車的に思えた。
こんなにフレキシブルに乗れるのは「ロード」モードでのことだ。トルクがとても使いやすく、無理に高回転域まで回さずに4000rpmも回っていればどんどんシフトアップしていける。ワインディング路でも5500rpm以上回さないようにシフトアップし、アクセルをワイドオープンすればトルクの波にのって車体が押し出され、そこに恐怖はない。まるでかつてのビッグネイキッドのような大らかなスポーツ性があるのだ。
対する「スポーツ」モード。こちらはよりレスポンスが良くなり高回転域へと誘ってくる。レッドの1万rpmに向かってしっかりとアクセルを開けていくと軽量車体を111馬力がキビキビと走らせる。先ほどまで忘れていたハングオンスタイルで乗るようになり、しっかりとライダーが入力してスポーツライディングを楽しんでしまった。ロードモードでは「国産車的」と思ったのに、スポーツモードにしたとたんイタリア車の血筋が見えた想いだ。ただそれはエキサイティングで確かに速いというだけで、だからと言って気難しさがプラスされてしまったわけでもない。スポーツモードでもしっかりと洗練されていることに進化を感じる。
シートの低さはハードルの低さ
ハードルを低く感じさせてくれるのはシート高だ。本国仕様でも815mmであり、スリムな車体と合わせて足つきは決して悪くないのだが、加えて日本仕様はローダウンシートとローダウンサスが標準装備。それぞれ20mmのダウンとなるため日本仕様は775mmであり、例えばスズキのGSX-8TTの810mmやヤマハのMT-07の805mmよりもかなり低い数値となる。
昨今のスポーツバイクのトレンドは高めのシートによる高めの重心位置でスポーティさを稼ぐようだが、モンスターはそれよりも接しやすさやとっつきやすさを重視したのだろう。低いシートに腰を下ろし、大きく盛り上がっているタンクを自然とニーグリップした時の一体感はそのまま安心感になり、コンパクトなポジションと合わせてまるで400cc以下に乗っているような気軽さに自信が湧き出る。
高い重心位置から豪快に寝かし込む感覚ではなく、低いところにある重心をペタリペタリと労せずに振り回せる感覚は、気軽に乗り出せるだけでなくスポーツ性へのハードルも下げてくれている。低速でワインディングを楽しんでいても気軽な一体感があるし、トバし気味に行っても体でアクションをすれば積極的に操る満足感がある。シートが低いからと言ってスポーツ性が犠牲になっていると感じる場面はまずないだろう。
ただスポーツモードで「ソノ気」になっていると、リアサスにもう少し踏ん張りがあってもいいかも?と思える場面はあった。プリロードをかけていけば解決するかもしれないし、あるいはサーキット走行など含めてスポーツモードをもっと積極的に楽しみたいのならばサスペンションユニットは本国仕様に交換しても良いのかもしれない。
ただそこまで突っ込んだスポーツがしたいのならば他のモデルを選ぶのもテのはず。歴史あるモンスターは最初のショートムービーにあったように、世代を超えて多くのライダーに気軽に楽しんでもらおうというものであり、この第5世代もまたそのコンセプトの上で良きバランスにあると思う。
とても付き合いやすいエンジンと、国産車よりも低いぐらいのシート高、小柄なライダーでも不安なく付き合える軽量さなど、新型モンスターはこれまでのモンスターの中で最も「誰にでも薦めることができる」モンスターとなった。ストリートでもワインディングでも、タンデムでもサーキットでも。「ドゥカティだから…」と構える必要はゼロだ。
ディテール解説


フォークはSHOWA製のSFF-BPφ43mm倒立タイプ。調整機構は持たない。ブレーキはブレンボ製モノブロックM4.32キャリパーにラジアルマウントマスターシリンダーを採用。ディスク径は320mmと大きいが試乗時は部分的にウェットだった路面においても気難しさはなく効果的に減速できた。ピレリのディアブロロッソ4を純正採用。キャスター角23.3°、トレール92mmという数値はかなり攻めていると感じるが、ハンドリングにシビアすぎると感じる挙動はなかった。


「V2」と呼ばれるエンジンは先代まで採用していたデスモ機構を通常のバルブスプリングに変更することで大幅にコンパクト化。これによりモノコックフレームというモンスターにとって新たなチャレンジができ、この軽量コンパクトなパッケージを実現している。なお新エンジンはメンテサイクルが長くなったのもありがたい進化。デスモの音がしないのが寂しい気もするが、逆にメカニカルノイズの少ないドゥカティも上質で高級感がある。



5.5インチに180/55サイズタイヤはもはやモンスターの伝統。スイングアームは歴代モンスターの中では片持ちもあったが、近年のドゥカティのトレンドの大きく肉抜きされた両持ち式スイングアームに。パニガーレなどと同様のスタイルだ。リアブレーキはφ245mmディスクに対向2ピストンキャリパー。



現車にはシングルシートカバーがついているが、これは歴代モンスター同様のもので外せばタンデムも可能。日本仕様のライダー側のシートは本国仕様に対して20mmローダウンされており、サスペンションと合わせて40mmもローダウンされたことになる。シート下にスペースはほぼ無く、ETCユニットがギリギリ押し込めるかという程度。



5インチのフルカラーTFTディスプレイのメーターはとても見やすく、各種設定も難しくなかった。各種ライディングモードも備えるが限られた時間ではロードとスポーツしか試すことはかなわなかった。ただウェット路面でもロードモードで十分こなす懐を実感できたため、電子制御に頼らない確かな実力があると実感できた。




スマートなテールはタンデムシート後ろで切り落とされたデザインで、その裏側にLEDテールランプが埋め込まれる。タンデムには心もとない気もするが、アクセサリーとしてパッセンジャーハンドルやバッグ類も用意されている。
足つき性(ライダー身長 185cm)


日本仕様の775mmというシート高は、走っている時には違和感なくモンスターらしいスポーツ性が楽しめた。スリムな車体と合わせて、当然のように足つきは超良好。筆者は185cm/75kgという体格のため、さすがに少し膝の曲がりが強めにも感じたが、シートが低いのはそのままハードルの低さであり、その点はアピールしておきたい。
諸元一覧
型式:ドゥカティV2エンジン:90° V2、気筒あたり4バルブ、インテーク可変バルブ・タイミング・システム、水冷
排気量:890 cc
ボア×ストローク:96 mm × 61.5 mm
圧縮比:13.1:1
最高出力:111 PS (81.6 kW) @ 9,000 rpm
最大トルク:91.1 Nm (9.3 kgm) @ 7,250 rpm
燃料供給装置:電子制御燃料噴射システム、各シリンダーに1つのインジェクター、フル・ライド・バイ・ワイヤ
エグゾースト:2-1-2システム
ギアボックス:6速、ドゥカティ・クイック・シフト・アップ/ダウン2.0
1次減速比:ストレートカットギア、減速比 1.84:1
ギアレシオ:1速=2.714、2速=2.000、3速=1.600、4速=1.318、5速1.143、6速=1.040
最終減速:チェーン 520:フロント・スプロケット16T、リア・スプロケット42T
クラッチ:油圧式、湿式多板、セルフサーボ/スリッパー・クラッチ、セルフ・ブリーディング・マスター・シリンダー
フレーム:アルミニウム製モノコック
フロントサスペンション:43mm径 ショーワ製倒立フォーク
フロントホイール:鋳造軽合金 3.50″ x 17″
フロントタイヤ:ピレリ製ディアブロ・ロッソ4、120/70 ZR17
リアサスペンション:プリロードを調整可能なショーワ製モノショックアルミニウム製両持ち式スイングアーム
リアホイール:鋳造軽合金 5.50” x 17”
リアタイヤ:ピレリ製ディアブロ・ロッソ4、180/55 ZR17
ホイールトラベル(フロント/リア):130 mm / 145 mm
フロントブレーキ:320mm径セミフローティング・ダブルディスク、ブレンボ製ラジアルマウント・モノブロックM4.32 4ピストン・キャリパー、ラジアル・マスターシリンダ。コーナリングABS
リアブレーキ:245mm径ディスク、2ピストン・キャリパー、コーナリングABS
メーターパネル:デジタル・メーター、5インチ・フルカラーTFTディスプレイ、解像度800 x 480ピクセル、アスペクト比16:9
装備重量(燃料を除く):175 kg
シート高:775 mm
ホイールベース:1,492 mm
キャスター角:23.3°
トレール:92 mm
燃料タンク:14リットル
乗車定員数:2
安全装備:ライディングモード、パワーモード、ドゥカティ・トラクション・コントロール(DTC)、ドゥカティ・ウィリー・コントロール(DWC)、エンジン・ブレーキ・コントロール(EBC)、ボッシュ製コーナリングABS、ドゥカティ・ブレーキ・ライト(DBL)、オート・タイヤ・キャリブレーション
標準装備:ドゥカティ・クイック・シフト(DQS)アップ/ダウン2.0、カミングホーム、TFTカラー・ディスプレイ、フルLEDライティング・システム、デイタイム・ランニング・ライト(DRL)、ダイナミック・ターンインジケーター、オートキャンセル式ターンインジケーター、ラップタイマー
オプション対応:盗難防止システム、タイヤ空気圧モニタリング・システム(TPMS)、クルーズ・コントロール、ドゥカティ・マルチメディア・システム(DMS)、グリップヒーター、ターン・バイ・ターン・ナビゲーション・システム、USBポート、ドゥカティ・パワー・ローンチ(DPL)
※アクセサリーの内容は異なる場合があります。ディーラーでご確認ください。
保証:24か月、距離無制限
Annual Service:12か月
Oil Service:15,000 km / 24か月
バルブクリアランス調整:45,000 km
規制:ユーロ5+
CO2 Emissions:120 g/km
Consumption:5.2 ℓ/100 km
エミッションノート:ユーロ5+規制対応国のみ。
注:モーターサイクルの仕様および装備は市場によって異なる場合があります。詳細は、地域のディーラーにお問い合わせください。




