ホンダK20Aが切り拓くFR旧車の新境地
220馬力ユーロRの鼓動をGX70へ
AE86や70系カローラを得意とする岐阜市の『モーターフィックス』。近年はベース車両の価格高騰によって、ドリフトやエンジンスワップを気軽に楽しめる時代ではなくなりつつある。そんな中、代表の堺さんが「まだ比較的低予算で遊べるベース」として注目しているのが、GX70系マークIIバン、通称「マーバン」だ。

以前、ウェブオプションでは同じマーバンに1UZを搭載したV8スワップ仕様と、横置き用3S-GEビームスを換装した直4スワップ仕様を紹介した。そして今回、新たに挑戦したのが、CL7型アコード ユーロRのK20Aを搭載する”K型スワップ”である。
「たまたまドナーになるアコード ユーロRが手に入ったのがきっかけでした。ただ、K型についてはほとんど知識がなかったので、まずは徹底的にリサーチしました。すると海外ではK型スワップが非常に盛り上がっていて、スワップ前提のアフターパーツも数多く販売されていたんです(笑)。ユーロRはノーマルでも220psありますし、発展性も十分。将来的にはAE86や70系カローラへの展開も考えつつ、まずはマーバンでノウハウを作ろうと思いました」。
以前、S2000用F20Cの縦置き換装は経験済みだった堺さん。しかし、横置き専用として設計されたK型エンジンの縦置き化には、多くの課題が待ち受けていたという。

まず問題となるのがトランスミッションだ。一般的にはS2000用6速MTを組み合わせるケースが多く、近年ではBMW製DCTを流用する海外事例も増えている。しかし堺さんは、自身が得意とするトヨタ系ミッションを使う道を選択した。
海外製の鋳造ベルハウジングを介してK20AとW55型5速MTをドッキング。さらに純正アルミオイルパンを加工し、エンジンメンバーにも手を加えながら搭載位置を調整した。それでもエンジンは純正よりやや前方へ配置されるため、U字形状の純正ミッションマウントを前後反転させて対応している。

ミッション位置が前方へ移動したことで、シフターにはレクサスIS(アルテッツァ)用5速MTのシフターを流用。シフトノブは一見ホンダ純正品に見えるが、実はネットで偶然見つけたノーブランド品だ。本来6速のユーロR用ではなく、5速パターンが刻まれている。

エンジンの縦置き化に伴い、純正インテークマニホールドも加工。吸気の向きを左右反転させ、スロットル先端にはインテークパイプとエアクリーナーを配置し、熱の影響を受けにくい位置からフレッシュエアを取り込むレイアウトとしている。

エンジンマウントはGX81マークII純正品を流用。樽型マウント下部に鉄板が備わる構造のため、加工ベースとして非常に扱いやすいという。また、ツインターボ車用2層ラジエターやマスターシリンダーの遮熱板などもGX81純正部品を流用している。

吸気レイアウトの妨げとなるパワーステアリングポンプは撤去。その代わりに海外製ブラケットキットを用いてオルタネーターを移設し、MR2純正の電動油圧パワーステアリングポンプを採用することで、パワステ機能はしっかりと残している。

エキゾーストマニホールドは純正をベースに加工し、集合部以降が車両後方へ向かうようレイアウトを変更。一部にはS2000純正部品も流用しながらワンオフ製作した。2本出しマフラーは、かつてマーバン専用品として販売されていたものを装着する。


インテリアは基本的にノーマルを維持。ダッシュボードやシートのコンディションも良好で、室内だけを見れば年式を感じさせないサバイバーカーそのものだ。

エンジン情報をスマートフォンで確認できるよう、OBDⅡポートをインパネへ設置。まずはスワップを完成させることを優先したため、今後はこのシステムを活用しながらチューニングも煮詰めていく予定だという。

外観もホイール、車高ともにノーマルのまま。まさに働くクルマ然とした佇まいだ。そんな中で唯一、このマシンの異常性を主張しているのが、「GL」エンブレムの横に貼られた「EURO R」のバッジである。
現時点ではK型スワップ開発の実験車という位置付けだが、「イベントにも参加したいので、さすがに車高くらいは落とそうかな(笑)」と堺さんは笑う。

「まだ改善したい部分は残っていますが、これでひと通りノウハウは掴めました。将来的にはK型スワップをキット化できるような形まで持っていきたいですね」。1UZ仕様&3S仕様に続く「マーバン3兄弟」の末っ子とも言えるK型換装仕様を完成させた堺さんだけに、今後の進化に期待が高まる。

4A-Gや3S-GEも中古価格が高騰する現在、比較的入手しやすいK型エンジンをFRトヨタ旧車へ搭載する道を切り拓いた意義は大きい。このノウハウは、今後AE86や70系カローラへK20Aを載せたいと考えるユーザーにとって、大きな財産となるはずだ。
Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI
●取材協力:モーターフィックス 岐阜県岐阜市石谷429-14 TEL:058-235-7776
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