ヤマハ・CYGNUS X……389,400円(2026年5月22日発売)




CVTのセッティング変更でダッシュ力がアップ

「シグナス X」という名称が登場したのは2003年のこと。前後12インチホイールの軽量コンパクトなシャシーに、空冷SOHC4バルブのパワフルなエンジンを搭載したこの原付二種スクーターは、スポーティなスタイリングと走りが支持されて瞬く間にヒットモデルとなった。特にスクーターレースでの活躍は目覚ましく、その後は勝つために進化してきたといっても過言ではない。
シグナスXは、第6世代でのエンジンの水冷化を機に、車名を「シグナス グリファス」とした。だが、大きくなりすぎた車格に賛否両論あったのか、続く最新の第7世代では“原点に立ち返る”というコンセプトを掲げ、伝統の名称である「CYGNUS X」を復活させた。車体サイズはグリファス時代よりもグッとコンパクトになり、全長に至っては2世代前のシグナスXよりも25mm短い。台湾ヤマハが製作したPVでは、倉庫でのバーンナウトや峠道の疾走、サーキットのバトルシーンなどが映像化されており、新しいCYGNUS Xがどれだけスポーティな走りに振ってきたかがひしひしと伝わってくる。
まずは新しいCYGNUS Xのエンジンから。パワーユニット自体はグリファス時代から大きく変わっておらず、基本的にはエアクリーナーとマフラー、そしてCVTのセッティングを見直したのみと言われているが、部品番号を見るとECU(スタータゼネレータコントロールユニット)の品番はそれぞれ異なっており、ここにもなんらかの変更が加えられていると考えられる


始動用のモーターとジェネレーターを一体化したSMG(スマートモータージェネレーター)を採用しているため、セルボタンを押してもいわゆる「キュルルルッ」というモーター音はなし。エンジンはすぐさま「ストトトッ」と目覚め、アイドリング時の吸排気音やメカノイズは非常に低く抑えられている。この高い静粛性は、同系パワーユニットを搭載するシグナス グリファスやNMAXで経験済みなので大きな驚きはないが、いざスロットルを開けて発進すると、ずいぶんと様子が違うことに気付く。
その変化を一言で表現するなら「ダッシュが鋭くなった」だ。シグナス グリファスでも十分に速いと感じた水冷ブルーコアエンジンだが、CYGNUS Xはスロットルを開けてから実際の加速に移行するまでがワンテンポ短く、その後の伸びもより力強くなったかのようだ。6000rpm付近でVVAがローカムからハイカムへと切り替わるが、加速フィールの移行は極めてシームレスで、スムーズに車速が伸び上がっていく。ちなみにクローズドコースで試したところ、メーター読みで103km/hまで確認できたので、原付二種の動力性能としては十分以上だろう。
なお、CVTのセッティングを加速フィール重視に振った影響か、燃費の目安となるWMTCモード値は約6%ダウン(1次/2次減速比や変速比は変わらず)し、41.9km/Lとなった。ホンダのリード125は49.3km/Lなので、少しでもランニングコストを抑えたい人にとっては、これがマイナス要素になるかもしれない。
アンダーボーン型で最強クラスの剛性、ブレーキはより強力に

先代のシグナス グリファスは、アンダーボーン型のフレームが新設計となり、タイヤは前後とも1サイズずつワイドになった。これらに伴いディメンションも見直され、格段に扱いやすいハンドリングとなった。
新世代のCYGNUS Xは、フロントタイヤおよびリム幅を1サイズずつ細くしている。これにより、グリファス時代の優良バランスを維持しながら、倒し込みや切り返しはより軽快になった。

今回は市街地だけでなく、ご厚意によりサーキット秋ヶ瀬のコースも走らせてもらったのだが、優れた旋回力とフレーム剛性の高さ、そして前後サスの動きに感心しきりだった。ライダーの操縦に対してどこまでも忠実であり、マシンを寝かせた分だけ素直に向きを変える性格は“ヤマハハンドリング”そのもの。標準装着タイヤは、サーキットにおける深いバンク角でもしっかりとグリップしてくれ、腕に覚えのあるライダーならそこそこのタイムを出してしまうのではと思ったほどだ。
フレームは、アンダーボーン型とは思えないほどステアリングヘッド付近の剛性が高く、コーナーの進入では減速Gを残しながらも自由自在にラインをトレースできるほど。フラットなフロアボードを採用するスクーターの中では最強クラスの剛性といっても過言ではなく、日本や台湾のレースシーンで鍛えられてきたことが手に取るように分かる。

ブレーキについては、グリファス時代にリヤディスクがφ200mmからφ230mmに。そして新型のCYGNUS Xはフロントディスクがφ245mmからφ267mmへと大径化されたことで、トータルでのストッピングパワーが向上。日本仕様は前後連動式のUBSを採用しているため、サーキットでペースを上げるとそれがネガになりやすいのは事実だ。しかし、メインステージの街中では非常にコントローラブルであり、しかも軽いレバー入力で高い制動力を引き出せる点は、多くの人にとってメリットとなるだろう。

車両価格は、同じ原付二種スクーターのNMAXと同額となった。CYGNUS Xは、アイドリングストップやデュアルチャンネルABS、スマートキー、スマホ専用アプリ対応機能などを有していないので、装備面で比べてしまうとやはり割高に感じてしまう。しかし、フラットなフロアボードによる乗り降りのしやすさや、コンパクトになった車体による取り回しのしやすさなど、CYGNUS Xにはスクーター本来の姿があり、それを好む人も多いはず。加えて、装備がシンプルゆえにカスタマイズしやすい点も見逃せない。しばらくは先代のシグナス グリファスも併売されるようだが、よほど大きな値引き額を提示されない限り、筆者は新しいCYGNUS Xを強く推す。
ライディングポジション&足着き性(175cm/66kg)
ステップボードの空間をシグナス グリファス比で15~25mm拡大し、前方のボード角度は54°から42°へ寝かせて足首への負担を軽減。シートは前方を絞り込むことで足着き性を向上させている。タンデムステップは先代比で59mmバックさせ、ライダーとの距離を増加。座面はやや前傾しており、それを支えるために足は自然と前へ。足元に燃料タンクをレイアウトしているのでフロアボードは高め。ゆえに膝のすぐ上にハンドルグリップがある。足を後方へ引くと攻めに転じたライポジとなり、シグナスシリーズがサーキットで鍛えられてきたことが分かる。
ディテール解説














CYGNUS X 主要諸元
認定型式/原動機打刻型式 8BJ-SEM5J/E35TE【8BJ-SEJ4J/E33UE】
全長/全幅/全高 1,865mm/715mm/1,125mm【1,935mm/690mm/1,160mm】
シート高 785mm
軸間距離 1,340mm
最低地上高 125mm
車両重量 126kg【125kg】
燃料消費率 国土交通省届出値
定地燃費値 48.6km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 41.9km/L【44.5km/L】(クラス1)1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 124cm3
内径×行程 52.0mm×58.7mm
圧縮比 11.2:1
最高出力 9.0kW(12ps)/8,000rpm
最大トルク 11N・m(1.1kgf・m)/6,000rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.00L
燃料タンク容量 6.1L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、6.5Ah(10HR)/GT7B-4
1次減速比/2次減速比 1.000/10.208 (56/16×35/12)
クラッチ形式 乾式、遠心、シュー
変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比 2.384~0.749:無段変速
フレーム形式 アンダーボーン
キャスター/トレール 26°30′/90mm
タイヤサイズ(前/後) 110/70-12 47L【120/70-12 51L】(チューブレス)/130/70-12 56L(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
乗車定員 2名
※【 】内はシグナス グリファス
製造地:台湾(ヤマハモーター台湾)




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