ブラック×ゴールドの特別感を残しながら、足周りで雰囲気を一変。タイヤサイズの変更によって少しだけ車高アップ。ジェンマ用を流用した武骨な片持ちフロントフォークがスパルタンだ。

初代タクトは、ホンダが本気で作った “新時代スクーター”

ハンドル周りはフルカバードされ、メーターには燃料計を備えるなど、たくとはライバルモデルより豪華なのが特徴だ。

ホンダ・タクトは1980年9月に発売された50ccスクーター。型式はAB07で、49ccの2サイクル強制空冷エンジンを搭載し、最高出力は3.2ps/6000rpm。変速機にはホンダ独自のオートマチック機構「Vマチック」を採用し、キック式が10万8000円、セル付きが11万8000円で販売された。ホンダ公式の当時リリースでも、扱いやすさや乗用車感覚の乗り心地、ファッションに合う軽快なスタイルが特徴として紹介されている。

当時のスクーターといえば、ヤマハ・パッソルやパッソーラの存在感が大きかった時代。そこにホンダが送り込んだタクトは、遠心クラッチ+Vベルト式無段変速、燃料計を備えたメーター、ゆったりした足元スペースなど、ライバルよりワンランク上を狙った内容だった。さらに、オプションパーツや特別仕様車が豊富だったことも特徴で、中でも「TOKYO CUSTOM」は東京地区のみで販売された希少な特別モデルとされている。

ブラックボディにゴールドの「TOKYO CUSTOM」デカールが映える。ベース車がただの初代タクトではないことを示す、見逃せない部分。

ブラックのボディにゴールドのデカールとメッキモール、メッキホイールカバー、フェンダーマスコットなどを備えたモデルだ。この希少モデルをベースに仕上げたのが、カスタムショップ・サブアーム代表の小林さん。狙ったのは、やりすぎない“ベスパっぽい雰囲気”。ブラック×ゴールドの上品さを活かしつつ、スクーターらしい軽さと80年代らしい遊び心をうまくミックスしている。

1980年に登場した初代タクト。ステップスルーの扱いやすさとスクーターらしい快適性を備え50ccモデル。81年のマイチェンで出力が3.6psに。82年には外観を変更して同形式のまま二代目にモデルチェンジ。

片持ちフォーク&正体不明ホイール! 足周りのインパクトはバツグン!

東京限定「TOKYO CUSTOM」をベースに、片持ちフォークとアルミホイールで印象を一新。ブラック×ゴールドの上品さを活かした初代タクト改だ。 MACHINE:HONDA TACT OWNER:小林さん

最大の見どころはフロント周り。ユニークなデザインの正体不明アルミホイールを装着するため、フロントフォークには初代ジェンマ用の片持ちフォークを移植。さらに5本ボルトでホイールを固定するため、ハブは特注で製作している。

この“ホイールを履きたいからフォークごと替える”という発想が、いかにもサブアームらしい。単にパーツを付けるだけではなく、見せたいスタイルのために必要なものを作ってしまう。装着するタイヤは、「★」パターンがかわいいダンロップのKIRARAをチョイス。「★」というのが何ともヤンチャで、80年代スクーターの空気にぴったりだ。

片持ちフォークの武骨さと、アルミホイールのちょっと洒落た雰囲気。その組み合わせによって、初代タクトが一気に普通じゃない佇まいになっている。車高もタイヤサイズ変更の影響で少しアップしており、低く構えるというより、すっきり立たせた感じがこの車両にはよく似合う。

渦を巻くようなスポークデザインが強烈な社外製アルミホイール。車体全体の印象を決める重要パーツで、スズキ・ジェンマの片持ちフォークを移植し、5本ボルト固定の特注ハブまで製作している。

当時物チャンバーにナポミラー! 80年代の“わかってる感”が満載

エンジン周りでは、当時物のオクムラ製チャンバーを装着。サウンドも元気で侮れない加速を披露してくれた。小物の選び方も実に80年代。ミラーはナポレオン・クロスミラー。クルマのサイドミラー風デザインで、スクーターにはちょっと大きく見えるのだが、当時感を出すならやっぱりコレ。レンズ類はクリア化され、モノトーンの車体にうまく馴染んでいる。

シートは張り替えてタックロールに。段付きやアンコ抜きでヤンチャに振るのではなく、ノーマル形状を残したまま、先端部分にクロコダイル風の型押し表皮を使って上品にまとめている。さらにフロアには純正オプションのカーペット風フロアマットを装着。ゴムマットではなくカーペットというあたりが、初代タクトの“ちょっと豪華なスクーター”感を引き立てている。

80年代の定番といえば、クルマのサイドミラー風デザインで大型のナポレオン・クロスミラー。スクーターには不釣り合いな大きさだけど、逆にこれが良かった。

シートは張り替えてタックロールに変更。段付きやあんこ抜きにはせず、ノーマルのまま上品に。先端部分の表皮はクロコダイル風の型押しを使用している。

これも当時の定番クリアレンズ。もちろん電球は赤に塗装されたタイプに変更。ついでにウインカーもクリアレンズに。モノトーンだから似合う。

当時の純正オプションパーツで、フロアマットはゴム製ではなく、ちょっと豪華なカーペット・スタイル。スクーターなのに土足厳禁にしているオーナーもいました。

走り出したら意外に軽快!

40年以上前のスクーターだから遅いと思いがちだが、ライバル車とは異なり現代のスクーターと同じく遠心クラッチとV ベルトの無段変速機構を採用しているので、出だしこそ多少モッサリしているものの、2ストらしくグイグイ加速。オクムラチャンバーのおかげで中間からの加速はなかなか。クラッチはDio 用に換装されているので、これでもスタートからの加速は改善されているのだとか。

こうした80年代モデルを丁寧にアップデートして自分流に仕上げる。ネットオークションを駆使したり、スワップミートへ足しげく通うなど、パーツ集めは苦労するけれど、そんなカスタムを比較的手軽に楽しめるのもミニバイクならではの魅力だろう。

※この記事は月刊モトチャンプ2022年3月号を基に加筆修正を行っています

【モトチャンプ編集部】