M177 V8ではなく高性能版となる「M177 Evo」を搭載、700ps級まで高められる可能性も
メルセデスAMGが、新たな高性能モデルの開発を加速させているようだ。ニュルブルクリンクで目撃された開発車両は、現行ラインアップ最強の「GT 63 PRO 4MATIC+」をベースとしながらも、明らかにそれを超える装備をまとっていた。

正式な車名はまだ公表されていないが、現地では便宜的に「Track」と呼ばれている。サーキット走行を徹底的に意識した仕様とみられ、次期「GT Black Series」の登場を予感させる1台として注目を集めている。

開発車両を見てまず目を引くのは、量産モデルを大きく上回る空力パーツだ。巨大なリアウイングに加え、フロントバンパーには新たなカナードを装備。大型化されたフロントスポイラーも確認でき、AMGがダウンフォースをさらに高めるため、ボディ下面を含めたエアロダイナミクス全体を見直している可能性が高い。
足元にはミシュラン製のハイグリップタイヤを組み合わせた鍛造ホイールを装着し、その奥にはカーボンセラミックブレーキを備える。現行GT 63 PROでも十分にサーキット志向の装備が与えられているが、このプロトタイプはさらに踏み込んだ仕様となっている。
興味深いのは、車内にロールケージらしき構造が確認できることだ。ロールケージは単に安全性を高めるだけでなく、ボディ剛性を向上させ、高速コーナリング時のシャシー変形を抑える効果も期待できる。その結果、サスペンション本来の性能を引き出しやすくなり、タイヤの接地性やハンドリング精度の向上にもつながる。
もちろん重量増や乗降性の悪化といったデメリットもあるが、それ以上にラップタイム短縮を優先したモデルであることを示唆しているとも考えられる。
さらに注目したいのがパワートレーンだ。
現段階で入手している情報では、このモデルには従来のM177 V8ではなく、高性能版となる「M177 Evo」が搭載される見込みだ。フラットプレーンクランクを採用し、高回転まで鋭く吹け上がる特性を備えるこの新世代V8は、今後のAMGハイパフォーマンスモデルの中核を担うエンジンになるとみられている。
CLE 63では600psを超える出力が噂されており、この「Track」仕様では650〜700ps級まで高められる可能性も十分考えられる。トランスミッションには湿式発進クラッチを採用する9速AMG SPEEDSHIFT MCTを組み合わせ、レスポンスと耐久性をさらに磨き上げることになりそうだ。
今回のプロトタイプで興味深いのは、フェイスリフト前のヘッドライトやテールランプを装着している点である。しかし最近目撃されている改良型GTクーペやSLでは、スリーポインテッドスターをモチーフとした新世代ライトデザインが採用されており、このTrack仕様も市販時には最新デザインへ変更される可能性が高い。つまり今回の車両は、空力やメカニズムを優先して開発が進められているテストミュールという位置付けなのだろう。
そして最大の注目点は、このモデルが「GT Black Series」へどうつながるかである。
AMGはこれまでもBlack Seriesで、通常モデルとは一線を画す究極のサーキット性能を追求してきた。巨大なエアロパーツや専用サスペンション、軽量化されたボディ、そして専用チューニングのV8エンジンを組み合わせ、911 GT3 RSやフェラーリのスペシャルモデルに真正面から挑んできた歴史がある。
今回のTrack仕様にも、その思想が色濃く反映されているように見える。現時点で正式名称は明らかになっていないものの、AMGが次期Black Seriesへ向けた技術開発を進めているプロトタイプである可能性は十分考えられる。
ニュルブルクリンクでのテストは今後も続く見通しで、市販モデルは2027年にも姿を現す可能性がある。AMGが送り出す次なる”究極のGT”が、ポルシェ911 GT3 RSや将来のGT2系モデルにどこまで迫るのか。その全貌が明らかになる日も、そう遠くはなさそうだ。












