高性能パーツの採用と専用セッティング
音作りの核となるのが、音質に大きく関わるパーツの見直しだ。高音質オペアンプやコイルなど、信号の根幹に関わる部品を厳選しながら、リミテッドエディション専用のチューニングを実施。説明によれば、部品は単に高級なものを使えばよいわけではなく、組み合わせや使用箇所によって音の出方は大きく変わるという。そのため、開発では何度も試聴を重ねながら、音の艶、厚み、クリアさ、ノイズ感まで確認していったのだという。
実際の試聴では、まず柴咲コウがカバーした「テルーの唄」が印象的だった。冒頭に入る水滴の音は、水面に波紋が広がるような余韻まで感じさせる。解像度が高いという言葉はよく使われるが、今回の場合は、細かな音が明確に聞こえるというだけではない。音が生まれ、空間に広がり、消えていくまでの表情が見えるかのようで、そこに宿る命のようなものにまで思いを馳せさせてくれる。ボーカルが入ると、その特徴はさらに明確になる。声の輪郭を必要以上に強調するのではなく、息づかいや喉の湿度、声の肌感まで自然に伝えてくる。企画されたサウンドの持つ意図が、明確にこの室内にまで伝わってきている、ということなのだろう。



リアリティがさらに強調されたサウンドに心酔
ジャズでは、ピアノ、ベース、ドラムの位置関係や演奏の力加減がわかりやすい。ピアノの打鍵には重みがあり、同時に余韻には軽さもある。音にそれぞれ質量があるように感じられ、演奏のダイナミクス、奏者の息遣いというだけでは一般的だが、奏者が音に質量をつけてここに出してきていることがまざまざと伝わってくる。米津玄師の「感電」では、音数の多いアレンジの中でも、それぞれの音が埋もれず、リズムのキレや細かな効果音まで浮かび上がった。原曲にこんな音が入っていたのかと、改めて気づかされる瞬間がある。奏者の「どうだ!」という意気込みを感じるオペレーションや、お茶目さといった一面にもニヤリとさせられる。
パイオニアの音作りは、アーティストの想いを故意に演出するのではなく、原音を忠実に再現することを基本としている。だからこそ、オーディオの存在感が前に出ずに、サウンドの持つメッセージがきれいに伝わってくるのではないだろうか。その意味でこのサイバーナビは、最新の空間オーディオという新たなサウンドの楽しみ方とは別に、カーオーディオの真価を再確認させてくれる。2チャンネルオーディオが長年にわたって進化させてきた、生身のサウンドの再現。今ここで演奏しているかのような、ピュアな音は、やはり外せないんだなぁと実感する。高い解像度と自然な艶を備えたこのサウンドは、音楽をもう一度きちんと聴き、そして楽しみたくなる力を持っていた。


