icode PORSCHE 911 Turbo(Type 964/997)
半世紀以上の経験を持つマイスター、鶴田氏

アイコード代表の鶴田昭臣氏は1970年代前半から50年以上に渡ってポルシェのメンテナンス、チューニングに携わり、ポルシェマイスターと称されるほどのエキスパートだ。
鶴田代表が初めてポルシェに触れたのは、以前に在籍していたシグマオートモーティブ(現サード)の時代。当時のグループ4レギュレーションに沿って生産された73カレラRS2.7やポルシェ934ターボのメンテナンスを担当したことで、エンジンから足まわりに至るまでポルシェの高度な技術力を痛感したそうだ。またポルシェ純正タービンに使用されているKKKの輸入元となり、いち早くターボチューニングの基礎を習得している。当時の日本はまだターボが普及する前の時代のことだ。
本格的にポルシェのチューニングを行うようになったのは、1990年に創業したアイコード(当時の社名はアイメック)の頃からだという。ベース車両としてタイプ964、993の中古車(当時の価格はターボで600万円、NAで300万円程度)を購入しチューニングを始めると、ハイパワーを求める911ユーザーがショップを訪れるようになった。そこでドイツからの輸入パーツ&オリジナルパーツを使って吸排気系のライトチューンからタービン交換のオーバー500PS仕様まで、数多くのチューンドポルシェを製作するようになった。また水冷エンジンになったタイプ996以降も、空冷同様のチューニングメニューを用意してポルシェユーザーの要望に応えてきた。
現在の空冷911トレンドはオリジナル重視





今日でもアイコードには空冷、水冷を問わず多くのポルシェが入庫してくる。だがユーザーからの要望は、以前とは大きく異なっているという。まず空冷の場合は、ほとんどが修理&メンテナンス。以前のようにハイパワーを求めるユーザーはほぼいない。知ってのとおり中古車市場では空冷の価格が高騰しているが、チューニングされたクルマよりもオリジナルをキープしている個体の方がバリューは高い。つまり今のユーザーが空冷に求めるのはパワーではなくメンテナンスが行き届いた程度の良さなのだ。年式の古いクルマだけに傷んでいる箇所も多いので、各部をリフレッシュして本来の調子を取り戻したクルマをユーザーは望んでいる。
今回、取材した964ターボは93年式。他のショップでタービン交換を行ったチューンドカーだったが、調子が悪いためアイコードに持ち込まれたのだという。ユーザーからの要望はやはりノーマルに戻すことだった。そこでエンジン本体をオーバーホールしたうえでコンピューターのリセッティング+純正タービンによって、カタログスペックの360PS仕様に戻されている。ポルシェの場合、空冷の古いモデルであっても部品に困ることはないが、ユーザーと相談した上で社外品の優良パーツを使ってコストダウンを図ることもあるそうだ。
タイプ996/997はオーバー600PSも




その一方、水冷のタイプ996、997ターボは旧モデルではあるがまだまだ現役。現行モデルのターボはノーマルで600PSをオーバーしていることもあり、それに少しでも近づけたいという希望も多いという。ただタイプ997であっても15年以上も前のモデルとなるだけに、各部のリフレッシュは必要。イグニッションコイル、プラグ、燃料ポンプといった消耗パーツをチェックして、走行距離が多いのならばエンジン本体もオーバーホールしてやりたい。そして本来の調子を取り戻した上で、この997ターボのようにコンピューターチューン+ハイフロータービンによってオーバー600PS仕様に仕上げることも可能だ。またパワーアップに伴って、足まわりやブレーキ系にも手を加えた方がいい。911ターボ・チューニングはトータルで考えることが大事だが、アイコードのように911を知り尽くしたショップは、極めて心強い存在となるだろう。
REPORT&PHOTO/芝 修(Osamu SHIBA)
MAGAZINE/GENROQ 2026年10月号
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