呉越同舟で二輪デザインを盛り上げる

「二輪デザイン公開講座」を主催するのは、(公社)自動車技術会のデザイン部門委員会。メーカーのデザイン部門代表者や大学教授などで構成され、企業と教育界の共通課題である次世代人材の育成をテーマに活動している。中高生を対象とする「モビリティデザイン・コンテスト」と、大学1〜2年生向けの「二輪デザイン公開講座」が、その主な活動だ。
「二輪デザイン公開講座」は2013年にスタートし、本田技術研究所、スズキ、カワサキ、ヤマハ発動機、GKダイナミクスの5社が呉越同舟で運営する。第14回目となった今年は8月20〜21日、東京・八王子市の東京造形大学で開催。全国13の大学/専門学校から定員一杯の32名の学生が参加した。
開会式で学生たちの自己紹介を聞くと、半数ほどがバイクに乗っている。逆に、これまでバイクにまったく関心がなかった人も少なくない。3年生になって就職活動が本格化する前に、二輪業界を視野に入れてほしい。この各社共通の思いが、「二輪デザイン公開講座」が今日まで続いている原動力だ。

頭と手を動かす4つの実技講習
講座のプログラムの中核をなすのが実技講習だ。手描きスケッチ、デジタルスケッチ、クレイモデル、CMFデザインの4分野で行われる。それぞれ2時間の授業。各社のデザイナー/モデラーが講師を務め、8名の学生に先生が3〜4人という懇切指導体制で講習が進んでいく。








14年前に二輪デザイン公開講座がスタートした背景には、二輪業界を目指すデザイン学生を増やしたいという各社共通の思いがあった。リクルート活動は各社それぞれに行うものだが、その前提として二輪デザインを盛り上げたいし、その面白さを世の中に広めたい。だから「公開」なのだ。事前に申し込んでおけば、基本的に誰でも見学できる。
見学者の目線で言えば、実技講習よりむしろ、初日夕方の「若手デザイナー座談会」のほうが興味深かった。
若手デザイナーたちの本音トーク
「若手デザイナー座談会」には、実技講習で指導に当たったデザイナーのうち、入社2〜6年目の若手5人が登壇。彼らより少し年長のGKダイナミクスの市瀬更紗さんが司会を務め、それぞれの本音トークを引き出した。以下はその概要だが、デザインという仕事はやっぱり面白そうだよね。

モデラーかデザイナーか?
「もともと家電製品が大好きで、大学はプロダクトデザイン学科を選んだけれど、バイクに乗り始めたらこっちも面白い。二輪のモデラーとしてスズキに入社したのですが、いろいろやってみたかったので、今はスタイリングデザインを担当しています」——徳永優さん(京都精華大卒業/スズキ6年目)。
「大学の彫刻学科に入って、当時はクレイモデラーになりたいと思っていた。公開講座に来てみて、二輪メーカーのインターンにも応募して、デザイナーの方が思い通りのことをできるのではないか? 学科を変えてインダストリアルデザインを専攻しました。意思が強いほうなので、そういう自分にはデザイナーが合うのかもしれない」—–粟野翔太さん(武蔵野美術大学卒業/ヤマハ5年目)。
社風に惹かれて・・
「小さな頃から絵を描いたり、工作したりというのが大好き。そういうことができる環境を求めて、工業高校のデザイン科からデザイン専門学校に進んだ。そこでいろんな企業の方と出会うなかで、ホンダにはよい意味で子どもの心を持った人たちがたくさんいそうだな、と。自分もそうなりたいと思って、 ホンダを目指しました」—–中山温史さん(桑沢デザイン研究所卒業/本田技術研究所4年目)。
「デザイナーになろうと思ったのは高校の終わりぐらい。クリエイティブなことをやれる大学に進んだ。二輪デザイン公開講座に参加して、インターンは四輪も二輪も行った。そのなかで、二輪業界の人の気さくな感じがいいなと思って・・。特別バイク好きとかではないですけどね」—–一色壌さん(東京都立大学・大学院卒業/GKダイナミックス2年目)
若手デザイナーの達成感
「入社3年目なので、担当したプロジェクトが完了したという”ザ・達成感”はまだない。ただ、上司から『これやれ』と言われて『はい、やります』ではなくて、『こういうふうにやりたい』と自我を出せるようになってきた。これもひとつの達成感かな」—–中村耕大さん(長岡造形大学卒業/カワサキ3年目)。
「デザインが完了すると試作車が作られる。そこで初めて自分がデザインしたものを実車に近い状態で見ることができるわけですが、そのとき、ここは大変だったなとか、よく成り立たせたよねとか、それはもう言葉では表現できないぐらいの達成感がある」—-粟野翔太さん。
「僕が達成感を感じるのは、自分のアイデアを誰かに認められたときと、それが実際に世の中に出たとき。アイデア段階では複数のデザイナーが100枚以上のスケッチを描くので、そのなかで自分のスケッチが選ばれるとすごく嬉しい。最終的にそれが世に出たら、エゴサするのも楽しくて・・。たまに傷つくこともありますけどね」—-中山温史さん。
ファインアート系の覚悟
「入学したのが彫刻学科で、ファインアート系の進路を自分なりに考えていたのは良かったと思う。ファインアートで生きていけるのか? 自分は絶対に無理だと思って腹が決まったわけですが、アートの世界に触れていたからこそ覚悟ができた。社会人になって辛いときに踏ん張れるのは、覚悟があるからだと実感しています」—-粟野翔太さん。
学生のうちにやっておくこと
「身近な友達をどんどん煽ってほしい。自分の周囲にいる人たちのモチベーションを高めていかないと、自分もレベルアップできないと思います」—–中山温史さん。
「いろいろ挑戦して失敗してほしい。効率的に学びたい気持ちもわかるけれど、失敗を積み重ねてこそ効率が見えてくる。学生のうちに失敗を経験しておくと、(就職してから)だいぶ違うと思います」—–粟野翔太さん。
「大学がいかに恵まれた環境だったかに、卒業してから気づくんです。教授にいくらでも質問できるし、工作室があって工具が使い放題。学割だってある。私は大学の交換留学システムを利用して留学したのですが、普通に留学するよりかなりお得だった。大学を上手に使い倒してほしいですね」—–一色壌さん。

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