2030年以降の二輪車の新しいあり方を提案する「EV OUTLIER Concept」
レッド・ドットは1955年に設立された賞で、主催はドイツ・エッセンを拠点とするノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンター。ドイツの「iFデザイン賞」、アメリカの「IDEA賞」と並んで、世界3大デザイン賞のひとつとして知られている。

EV OUTLIER Conceptは、2025年10月に開催されたジャパンモビリティショー2025で世界初公開されたコンセプトモデルだ。既存モデルの延長線上ではなく、2030年以降の二輪車の新しいあり方を提案する位置づけで、車名のOUTLIERには「枠にとらわれない存在」という意味が込められている。デザインの基盤にあるのは、ホンダ電動二輪車共通のデザインテーマ「Precision of Intrinsic Design(研ぎ澄まされた本質的なデザイン)」だ。

このモデルの特徴は、前後両輪に採用されたインホイールモーターにある。動力源をホイール内へ移せば、車体の中央からエンジンという最大の塊が消える。二輪車のスタイリングはこれまで、エンジンをどう見せ、どう囲うかを軸に組み立てられてきた。その軸が失われたとき、何を中心に据えるのか。EV OUTLIER Conceptが示したのは、この問いへのひとつの回答である。
デザイナーが選んだのは、ライダーの位置からレイアウトを始めるという手順だった。ヒップポイントを下げ、アイポイントを極限まで低くする。同社の二輪車の中でも際立って低いシート高は、動力源を車体から切り離したからこそ成立するものだ。重量物であるバッテリーは運動性能を確保するためロール軸上に配置され、傾斜したバッテリーからリヤのスイングアームへと抜ける軸が、そのまま車体の骨格として外から見えている。

プロポーションも興味深い。車両全体を一様に低くしてしまうと、かえってシートの低さは目立たなくなる。そこで、あえてフロントまわりにボリュームをもたせ、乗車位置の低さを相対的に浮かび上がらせた。低さそのものではなく、低さの見え方をデザインしている、というわけだ。

サーフェスの処理も、二輪車の定石からずれている。機能部品や骨格が露出することを前提としてきた二輪車のデザインに対し、EV OUTLIER Conceptは滑らかな面で車体を包む。ただし完全に隠すのではなく、スモーククリアのボディを通して内部のメカニカルな要素を透かして見せる。覆うことで軽やかさを、透かすことで機構の存在感を受けもたせる構成であり、ホンダはこれを「滑空するような軽やかなイメージ」と表現している。

シートはバケットタイプで、バックレストがモーター駆動の加速を受け止める。左右に大きく張り出した形状は、低い着座位置ゆえの側面衝突からライダーを守る役割ももつ。メーターは広い視界を確保するため薄型かつワイドなレイアウトとし、ミラーはカメラ式。カメラはテールランプの左右付近に収められている。
なお、EV OUTLIER Conceptのデザインに関しては、Car Styling WEBで詳細に解説しているので、そちらもぜひご覧いただきたい。
ブランドムービー「What Is a Motorcycle?|Electric Motorcycles」
もうひとつの受賞作「What Is a Motorcycle?|Electric Motorcycles」は、二輪電動事業のブランドプロミス「Expected Life. Unexpected Discoveries」を出発点としたムービーだ。「思うがままの暮らし」と「思いがけない発見」のある世界を人々と共創するという提供価値を掲げ、電動モビリティだからこそ生み出せる価値や、人と電動二輪車が社会と調和しながら共生する未来を描いたという。車両とムービーがそれぞれ別の部門で同時に受賞したことは、プロダクトとコミュニケーションを一体のものとして組み立てた成果と見ることもできそうだ。
本田技術研究所 常務取締役 デザインセンター担当の南 俊叙氏は「大変光栄に思います」としたうえで、「今回の受賞は、将来のニーズを見据え、新たな価値を先んじて形にしようとする私たちの取り組みを評価いただいたものと受け止めています」と語った。






