連載
クルマ名付け学MASERATI GHIBLI
ギブリとは?3世代で変わった姿

「マセラティ ギブリ」と聞いて思い浮かべるクルマは、世代によって異なるかもしれない。1960年代の低く伸びやかなクーペ、1990年代のコンパクトな高性能クーペ、そして2010年代に登場した4ドアセダン。車の姿は大きく変わったが、いずれも同じ名前を受け継いでいる。
車名の由来は、サハラ砂漠から吹く熱い風



イタリア語の「ギブリ(Ghibli)」は、サハラ砂漠からリビアに吹く高温で乾燥した風の名前だ。地中海周辺で「シロッコ」と総称される風の、リビアでの呼び名である。マセラティは、ギブリを大量の砂を運ぶ力強い風と紹介している。その風の勢いを初代モデルの速さに重ね、技術やスタイリングが持つ「熱さ」にもふさわしい名前としてギブリを選んだとされている。
風の名前をクルマに与えるのは、マセラティの伝統でもある。その始まりは1963年に登場した「ミストラル」だ。フランスのプロバンス地方など、地中海沿岸に吹く乾いた冷たい風の名前を車名に採用した。その後、「ギブリ」「ボーラ」「カムシン」と続き、近年のSUV「レヴァンテ」「グレカーレ」にも、その伝統が受け継がれている。
初代ギブリはジウジアーロが描いたクーペ

初代ギブリが発表されたのは、1966年のトリノ・モーターショー。当時、カロッツェリア・ギアに在籍していたジョルジェット・ジウジアーロがデザインを手がけた。長く低いボンネットに、リトラクタブル式ヘッドライトを備えた鋭いフロントの伸びやかな姿が印象的な名車だ。
販売は翌1967年に始まった。初代には330PSを発生する4.7リッターV8エンジンが搭載され、後にオープンモデルの「スパイダー」や、排気量を4.9リッターに拡大した「ギブリ SS」も登場。1972年まで生産された。
2代目はクーペ、3代目はセダンに

初代の生産終了から20年後の1992年、「ギブリ」の名が復活する。こちらは「ビトゥルボ」のプラットフォームをベースに、2.0リッター(輸出用は2.8リッター)V6ツインターボエンジンを搭載した2ドアクーペ。デザインはマルチェッロ・ガンディーニが担当した。初代とは成り立ちも造形も異なるが、高性能なクーペに歴史ある車名を再び与えたのである。
3代目のギブリは、2013年に4ドアのスポーツセダンとして登場した。乗員や荷物を載せる実用性を備えつつ、マセラティらしい走りを追求するモデルへと、その役割も変わった。それでも、初代から受け継がれた車名は残った。
スタジオジブリも由来は同じ

アニメーション制作会社「スタジオジブリ」の名前も、同じ「Ghibli」に由来する。「日本のアニメーション界に熱風を起こそう」という思いを込めて、サハラ砂漠に吹く熱い風の名前を採用したとされる。同社の公式サイトには、イタリア語では「ジブリ」より「ギブリ」に近い発音であることも説明されている。
つまり、マセラティの「ギブリ」とスタジオ「ジブリ」は、日本語での呼び方は違っても、同じ風の名を由来とする。一方はクルマの速さと力強さを、もう一方は新しい作品を生み出す意気込みを、その熱風に託したのである。

