ホンダの主力軽自動車N-BOXに、初のEV(電気自動車)が加わるようだ。ホンダは2026年5月に発表した事業方針のなかで、2028年に『N-BOX EV』を日本市場へ投入する計画を明らかにした。正式な市販車名やスペックなどは未発表だが、これまでのN-VAN e:、N-ONE e:に続き、『N-BOX e:』という名称が採用される可能性もある。

ホンダ N-BOX

N-BOXは、国内の軽自動車市場で圧倒的な存在感を持つモデルだ。2026年上半期(1~6月)には10万2419台を販売し、登録車を含む国内新車販売台数で首位を獲得。さらに同年度上半期(4~9月)も10万1564台を販売しており、販売の勢いは衰えていない。こうした人気モデルのEV化は、今後の軽自動車市場にとって大きな転換点となる可能性がある。

ホンダ N-BOX EV 予想CG

N-BOXは2011年12月に初代が登場。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトによる広い室内空間と、両側スライドドアを備えた使い勝手のよさで支持を集めてきた。現行型は2023年10月に発売された3代目で、標準モデルのほかN-BOX CUSTOM、N-BOX JOYの派生車を展開する。

2026年7月にはマイナーモデルチェンジを実施し、CUSTOMのフロントマスクを変更したほか、一部グレードに9インチナビゲーションやETC2.0を標準装備。JOYには特別仕様車“BLACK STYLE”を追加するなど、商品力を高めている。

ホンダはすでに軽EVのラインアップを段階的に拡充している。2024年10月には軽商用EVのN-VAN e:、2025年9月には軽乗用EVのN-ONE e:を発売した。N-BOX EVは、これらに続く3車種目の軽EVとなる見込みだ。

なかでも、N-BOX EVの性能を考えるうえで参考になるのがN-ONE e:である。

N-ONE e:は、小型化した電動パワートレインと薄型バッテリーを組み合わせ、WLTCモードで295kmの一充電走行距離を実現。普通充電では約4.5時間、急速充電では約30分という充電性能も確保している。

さらに、最大1500Wの外部給電機能やV2Hにも対応。日常の買い物や通勤だけでなく、アウトドアや災害時の電源としても活用できる。

N-BOX EVにも、こうした電動化技術が生かされる可能性は高い。ただし、N-ONE e:とN-BOXでは車体の形状や用途が大きく異なるため、同じバッテリーや電動ユニットを採用するかどうかは明らかになっていない。

最大の課題となるのが、N-BOXの魅力である広い室内空間をEVでも維持できるかという点だ。

N-BOXは背の高いスーパーハイトワゴンで、後席の居住性や荷室の使い勝手が重視される。床下に大容量バッテリーを搭載する場合、室内高やフロア形状、シートの配置などへの影響を抑える必要がある。

ホンダはN-VAN e:の開発で、電動アクスルの小型化や高電圧部品の集中配置によって、EV化しながら広い荷室空間を確保した実績を持つ。N-BOX EVでも、こうした技術を応用し、ガソリン車に近い居住性と使い勝手を実現できるかが注目される。

航続距離についても気になるところだ。

N-ONE e:が295kmを実現していることから、N-BOX EVでも300km前後がひとつの目安になると考えられる。ただし、背の高いN-BOXは空気抵抗が大きくなりやすく、車両重量やバッテリー容量によっても航続距離は変わる。

ファミリーカーとして利用される機会が多いだけに、日常の送迎や買い物に加え、休日の外出にも対応できる航続性能が求められるだろう。現時点でホンダは目標航続距離を公表しておらず、300kmという数値はあくまで既存モデルから推測したものだ。

エクステリアについても、ガソリン車との差別化が図られる可能性がある。

今回、スクープ班が製作した予想CGでは、現行N-BOXの基本的なシルエットを継承しながら、EV専用のフロントマスクを採用した。

大きな開口部を抑えたフロントパネルには、N-ONE e:にも通じるシンプルなデザインを取り入れ、充電リッドを配置。さらに専用エンブレムや空力性能を意識したホイールを組み合わせ、ガソリン車とは異なる表情に仕上げている。

ただし、現時点で市販型のデザインは明らかになっておらず、今回のCGは既存の軽EVに採用されたデザイン要素を参考に制作した予想イメージとなる。

そして、もうひとつ注目したいのが2028年という投入時期だ。

現行3代目N-BOXは2023年10月に登場しており、2028年には発売から約5年が経過する。ホンダはN-BOX EVについて、現行型をベースに開発するのか、それとも次世代モデルと同時に投入するのかを明らかにしていない。

仮に現行型へEVを追加する場合、既存のボディ構造を生かしながらバッテリーや電動ユニットを搭載することになる。一方、次期型と同時に登場するのであれば、開発段階からEVを考慮した車体設計を採用できる可能性がある。

2028年というタイミングは、N-BOXの次期型開発を考えるうえでも注目したい時期といえる。

価格も普及を左右する重要な要素だ。

現在のN-ONE e:は269万9400円から、N-VAN e:は269万9400円からという価格設定になっている。N-BOX EVについても、バッテリー容量や装備内容によっては、ガソリン車より大幅に高い価格になる可能性がある。

N-BOXは幅広いユーザーに選ばれる量販モデルだけに、EV化による価格上昇をどこまで抑えられるかが販売面での課題となることだろう。国や自治体の補助金を利用した場合の実質負担額も、購入を検討するユーザーにとって重要になるはずだ。

ホンダは2026年5月の事業方針で、世界的なEV戦略を見直す一方、日本では軽自動車を中心にEVラインアップを拡充する方針を示した。

その中心的な役割を担うことになるのが、2028年投入予定のN-BOX EVだ。

繰り返すが、現時点ではパワートレインやバッテリー容量、価格などの詳細は公表されていない。だが、今後の議論は航続距離と室内空間の両立に加え、現行型への追加となるのか、次期型と同時に登場するのかが焦点となることだろう。