今回発表したのは、路面に連続して埋め込まれた送電ユニット(GA)と、車両側の受電ユニット(VA)の間で、物理的な接触なしに電力を送る「磁界結合方式」のワイヤレス充電技術。ホンダが高出力密度のGA/VAユニットを開発し、大成建設が高応答の直流(DC)電源システムを、大成ロテックが道路への強固な埋設施工技術をそれぞれ持ち寄ることで、DC給電タイプの走行中給電システムを構築している。乗用車だけでなく、極めて大電力が必要な「大型商用車(トラック型BEVなど)」への適用を見据え、走行中でありながら最大「150kW」という超高出力での非接触給電をターゲットにしているところが注目点だ。

道路に埋めたGAに電気(交流電流)を流すと磁界(磁力)が発生し、その上を通る車両のVAが磁界を受け取って電気(誘導電流)に戻すというのが磁界結合方式の仕組み。GAで発生する磁界とVAのコイルが同じ周波数でぴったり響き合うよう調整しておくと、音叉の片方を鳴らすともう一方も鳴りだすのと同じ「共振(共鳴)」が電気回路上で起こり、この共振を活用することで、路面と車体のように距離があっても走行で位置がずれても、効率よく電力を伝送できるというわけだ。「電流→磁界→電流」とエネルギーの形を変えながら電線でつながずに電力を届けているわけで、電気そのものが飛んでいるわけではないのがポイントである。

コイルを構成する導線についても工夫が凝らされている。走行中無線給電に用いられる85kHz前後の高い周波数で交流電流を流すと、電流の密度が銅線などの導体の中心にいくほど小さくなる「表皮効果」が生じる。周波数が高ければ高いほどその効果は顕著になる傾向にあり、高周波の交流電流では導体内部が有効に使われにくくなり、太い1本の銅線では交流抵抗が増えてしまう。これの解決のために“より線”構造のリッツ線という導線を用いるのだが、導体全体が太くなり、コイルの小型化や取り回しの面で不利になる。そこで、ホンダは帯状の導線である「条線」に着目。厚さ1mm以下で広い断面積を確保する帯幅の銅条線で、リッツ線同等程度の性能を引き出した。

実用化の壁となるのが「漏えい電磁界の抑制」と「道路に埋設されたGAの耐久性・施工性」である。単なるコンセプト展示ではなく、100万輪(49kN換算輪数)の載荷走行試験による長期耐久性の評価、走行中給電性能の実験、漏えい電磁界対策などを進め、インフラ側の泥臭いエンジニアリングをゼネコンと共同で確立していく。
まずは、2026年末より大成建設グループ次世代技術実証センター/田村「T-FIELD/TAMURA」に試験走行路を構築し、実車を用いた実験などを進め、GAユニットの給電性能と道路への埋設構造物としての安全性の両立を目指す。その後、大型商用車向けを視野に入れた最大150kWの高出力での性能検証や、高速走行時の信頼性検証など、実社会での運用を見据えた技術開発を推進していく。また、今後2027年度以降に高速道路での実証実験を実施する予定だという。
