水素は燃やす?発電する?

『CEATEC2026/ジャパンモビリティショービズウィーズ2026』

水素をゼロエミッション車のパワーソースとする研究は古くからなされており、現在では化学反応により電力でEVとして駆動する(水素)燃料電池車と、そもそも爆発力のある水素をガソリンの代わりに燃やす水素エンジン車が、実用化に向けて各社が開発を進めているところだ。

『ジャパンモビリティショービズウィーク2026』

特に昨今はガソリンエンジンの技術や設備が流用できる水素エンジンの開発が進んでおり、今回の『ジャパンモビリティショービズウィーク2026』でも、新時代のパワーソースを複数ジャンルで研究・開発する「マルチパスウェイ」のひとつとして展示された。

『ジャパンモビリティショービズウィーク2026』自工会合同展示

水素をどうやって搭載するのか?

なかでもダイハツがコンセプトモデルを展示した水素エンジンは、アンモニアを水素のキャリアとして利用するもの。アンモニア(NH3)はそもそも窒素(N2)と水素(H2)の化合物で、ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」はアンモニアから水素を生成し、残ったアンモニアと混ぜて燃やすことで少ない水素比率で安定したエネルギーを得ることを目指している。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」展示

また、燃焼後にはやはりNOXが残ることになるが、触媒方式で後処理が可能。もちろん、アンモニアを混ぜているとはいえ、燃やしているのは水素なので二酸化炭素排出量はガソリンエンジンと比べて極めて少なくなる。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」コンセプト。展示物のサイズは全長700mm×全幅800mm×全高1350mm、重量が約60kgで、アンモニアから水素を生成するシステムを追加しても、既存ガソリンエンジンからさほど大型化・重量化はしていない。

動力性能はガソリンエンジン車並を担保しつつ、航続距離はガソリンエンジン車の半分程度。それでも、アンモニア方式ではない水素エンジン車の倍程度は走れるという。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」コンセプト。エンジン上部にアンモニアから水素を生成するシステムを載せている。2本のプラグはアンモニアから水素を生成するためのプラズマリアクターのもの。

ダイハツのアンモニア/水素混焼エンジンは液化アンモニアを使用しているため、エンジンも含むアンモニアと直接接触がある部分については耐性のある素材への置換がなされているが、基本的なエンジン構造は既存のガソリンエンジンと違いが無く、アンモニアから水素を生成するシステムもコンパクトにまとめられている。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」コンセプト。展示品は660ccの軽自動車用エンジンだが、1.0Lクラスのエンジンでも研究・開発されている。

この既存エンジンと構造を共有できる点が水素エンジンの大きなメリットであり、連綿とガソリンエンジン技術を積み重ねたきた自動車メーカーの有利な点でもある。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」コンセプト。基本設計はKF型660cc直列3気筒DOHCターボエンジンで、IHI製タービンが装着されていた。

どちらにせよ課題はインフラ

水素は気体としても液体としても扱いが難しいだけに、車両への搭載や貯蔵がひとつのネックになっており、インフラ整備(水素ステーションの普及)も大きな課題となっている。一方、アンモニアも新たにインフラを構築する課題は同じだ。とはいえ、やはり危険物ではあるものの、液体アンモニア自体はすでに農業肥料などで広く普及している点は水素より有利かもしれない。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」コンセプト。現状、アンモニアから生成される水素は30%程度。この比率をさらに高めるのが今後の課題のひとつとなる。

ちなみに、現在はウクライナ戦争や中東情勢の影響によりガソリン並に高騰しているが、液体アンモニアの価格は元々かなり安い。そういう意味でもアンモニアを燃料とすることは、車両運用コスト的にも優れていると言えるだろう。

ダイハツの「アンモニア/水素混焼エンジン」コンセプト。アンモニアの燃料費の安さには期待したいが、タンクや流路、接触部の対腐食処理(素材置換やコーティング)、水素生成システムなどのコスト増は車両価格に跳ね返るのは間違いない。インフラも含め普及のハードルはまだまだ高い、

ダイハツはアンモニア/水素混焼エンジンの実用化を2030年台と見据えて研究・開発を進めている。水素エンジン自体はマルチパスウェイのなかでも電動化と並ぶ期待の技術。インフラ整備が大きなハードルであることは間違いないが、水素エンジンの可能性のひとつとしてアンモニアがどこまで利用できるのか、今後の進展に期待したい。