記録的豪雨で冠水車両続出
編集担当の自身も「千葉豪雨」における被災者のひとり。8月13日に発生した「千葉豪雨」では、所有車両の1台が完全水没、もう1台が床上浸水という被害に遭っている。しかし、クルマが水没した以外には家族や自宅共に無傷だったことは不幸中の幸いといえるだろう。
そんな千葉豪雨は、まさに想定外の連続と言える状況であった。線状降水帯が数時間に渡って停滞し、24時間の降雨量は例年8月1ヶ月分の3倍以上を記録。中でも自宅がある中央区では1時間に115㎜の猛烈な雨を記録し、観測史上最も激しい雨として1位の記録を塗り替えたほど。これだけの雨が降れば道路の排水システムが追いつかなくなるのは当然。わずか数分の間に幹線道路が湖へと変貌したのだ。
普段から排水に難がある道路なら警戒感を持つ人が多いのだが、今回の千葉豪雨で被害が拡大した理由は、海抜の高いエリアも冠水したこと。通常の雨量なら排水してしまう丘陵地域にある微妙な窪地も冠水しているのだ。普段の雨なら水が溜まることがないような場所のため、それほど深くないと判断してしまったことで侵入し、立ち往生するケースも少なくない。結果として、路上で被災して放置された車両は2500台を超え、駐車場などを含めると1万台もの車両が水に浸かってしまう大惨事となった。

道路冠水時の対処、どうするのが正解?
ここで気になるのは経路が冠水していた場合の対処方法。基本的には冠水道路は走ってはいけないないことが、自動車メーカーからも公式に伝えられている。というのも、クルマには多くの電子部品が組み込まれている。これらが水を被ることでショートする恐れがあるほか、エンジンが水を吸い込んでしまい破損することもある。そのため、目前の道路が冠水しているなら、ハザードを炊いて路肩に寄せて停止することが正解というわけだ。もちろん、前走車が冠水道路に突っ込んで行き、後続車も詰まっている状況では路肩で停止するのは勇気が必要かもしれない。しかし、周囲の圧力に負けて冠水道路に侵入した結果、愛車が水没する危険性を考えたら、怪しい場合は停止する判断を守ってもらいたい。
もちろん冠水といっても水深によっては問題が起こらない場合もある。例えばタイヤの下側が隠れる10cm程度なら走行する人も多い。しかし、この水深でも勢いよく侵入すると水飛沫が上がってボンネット内の電子部品に水がかかってしまうこともある。そのため、万が一冠水道路に侵入しなければならない場合は、水飛沫を上げないようにゆっくり一定速度をキープして走り切ることが基本となっている。なお、道路脇にある縁石の高さは15cmが標準(高規格道路などでは20cmもあり)のため、水深を計る目安として覚えておけば役立つはずだ。

大規模自然災害では「諦める」勇気も必要
冠水路には侵入しないことが基本ながら、やはり異常なまでの豪雨の中では少しでも早く自宅に帰り着きたいと考えてしまうもの。実際に今回の千葉豪雨では近所の友人から、職場からの帰り道で渋滞にハマって抜け出せないというメッセージが多くあった。幹線道路の多くが冠水し、その周辺では被災車両が路上を塞いでしまっている状況では、動かなくなるほどの渋滞が発生するのは当然とも言える。そんな中でも多くのドライバーが自宅まで帰り着きたいと考えることで、道路は完全にパンク状態になってしまっているのだ。
そのため、友人へ送ったアドバイスは、帰宅は諦めて近隣の高台にある温泉施設に避難すること。クルマの安全を確保しつつ自身もリラックスできる提案は、未曾有の災害時であってもかなり有効。「諦める」という選択肢が帰宅しなければならない強迫観念と、微動だにしない渋滞のストレスを緩和することで冷静さを取り戻すことができたという。
しかし、自宅に小さい子供を抱える友人の場合は帰宅を諦めることが難しく、やはり自宅に辿り着くことを最優先と考えてしまっていた。そんな時に陥ってしまうのが冠水道路への侵入。前述の通り10cm程度なら走行も可能なのだが、それ以上になると電子パーツのショートやエンジンが水を吸ってしまいエンストすることもある。こうなると命も危険にさらされてしまうため、クルマを諦めることも重要。そもそも冠水によってエンストしたら車両の復帰は難しく、そのまま廃車となってしまうことが多い。そのため、いち早くクルマから脱出して身の安全を確保することが必須となるのだ。
その際にあると便利なのが脱出用ハンマー。軽い力で窓ガラスを粉砕できるアイテムなら、女性でも簡単に脱出経路を確保することができる。万が一に備えて常備しておくことは、豪雨災害に対する基本的な所作と言えるだろう。

愛車が冠水した! その復帰手順とは
もちろん、豪雨災害は道路上だけで起こるわけではない。むしろ、自宅での被害が大きい場合もある。前述のように今回の千葉豪雨では路上で被災した車両は2500台ほど。全被災車両の1/4程度と考えるとそのほとんどが駐車場で冠水した計算になる。自身も掘り込みタイプの機械式駐車場が冠水し、その中段に駐車していたクルマが水没している。こういったケースは意外に多く、特に同タイプの駐車場を採用するマンションで被害が拡大していたようだ。
ちなみに、掘り込みタイプの機械式駐車場では、豪雨対策として内部に排水ポンプが備わっている。通常の雨や従来のゲリラ豪雨程度ならこの排水ポンプによって溜まった水が排出されるのだが、今回の豪雨では排水ポンプの容量を遥かに超えた水量が流れ込んでしまったという。そのため、わずか5分程度で25mプール半分ほどの駐車スペースが満水になってしまったのは想定外。管理人から連絡を受け、急いで駐車場に向かったところですでに手遅れの状態だったのだ。
また、機械式駐車場だけでなく、近隣にある平置きの駐車場も膝丈くらいの冠水被害を受けてしまっていた。こちらに置かれた車両は車内のフロアに水が溜まった程度で済んだのだが、ほとんどのオーナーが冠水後にエンジンをかけたことでクルマにダメージを与えていた。やはり、水に浸かってしまったことでクルマが壊れてしまったのではないかと不安を感じ、試しにエンジンをかけてみたという声が多いのが実情。実際にエンジンをかけたところでメーター内のコーションランプが次々と点灯。その後はエンジンがかからないだけでなく、キーレスなどの電装パーツも反応しなくなってしまったという。
その原因はやはり床上浸水であることは間違いない。というのも、近年の車両の多くはフロアスペースにハーネスやコンピュータを設置されている。これらの電子パーツが水を被ってしまい、エンジンをスタートしたことで通電。基盤やセンサーがショートすることで、各部の機能を喪失したというわけだ。
そのため、フロアまで水が溜まってしまった車両では、キーレスではなく物理キーでドアロックを解除。その後にバッテリーのマイナス端子を外し電気が通らないようにすることが処置の第一。その後に室内を乾燥させるのだが、シートやフロアカーペットまで取り外して徹底的に水分を取り除く必要がある。ここまでしても完璧に復帰できるとは言い切れず、時間をおいてエラーが発生することもある。結果的には大規模災害時には、床上浸水でもディーラーで一律廃車と判定されることも少なくはないのだ。
なお、自然災害で被災した場合、公的な補償などは一切ない。車両保険をかけていれば保険金が降りるため、被災証明を取得して保険請求するのが一般的な事後処理となるが、車両保険に加入していなければ廃車手続きを行ない、自費で代替車両を入手するしかない。この機会に保険を見直してみることで、被害を最小限にとどめることもできるというわけだ。
