廃止寸前の生産設備を救った特別開発チーム、その舞台裏に迫る

スバルが、スポーツセダン「WRX」の新たなMT搭載モデルを2026年11月に発表する見通しだ。注目は、先代「WRX STI」に採用されていた高耐久6速MT「TY85型」の復活である。さらに、開発映像には厳重なカモフラージュを施した謎のテスト車両も登場。スバルのスポーツモデル戦略に新たな動きが見えてきた。

スバル WRX STI

10月22日に公開されたスバルの公式ティザーサイトでは、「WRXは走り続ける。」というメッセージとともに、MTモデルの開発過程を紹介する約15分のドキュメンタリー映像が公開された。

スバル マニュアルトランスミッション

現行WRXの日本仕様は、CVTを採用する「WRX S4」を中心に展開されてきた。2026年にはSTIが手がけた600台限定の「WRX STI Sport♯」が登場し、6速MTの採用が大きな話題となった。しかし、同モデルは抽選販売だったため、購入できるユーザーは限られていた。

これに対し、今回開発が進められているのは、通常のカタログモデルとして販売されるMT仕様だ。最大の特徴は、搭載するトランスミッションにある。

限定車のWRX STI Sport♯や海外向け現行WRXでは「TY75型」の6速MTが採用されているが、新たなモデルでは先代WRX STIに搭載されていた「TY85型」を復活させるという。

TY85型は、高出力・大トルクに対応する高耐久トランスミッションとして知られ、スバルの高性能スポーツモデルを象徴する存在だった。一時は生産設備の廃止も検討されていたが、開発チームの調査によって関連企業の工場で生産を継続できることが判明。これをきっかけに、2025年初頭から少人数の特別開発チームが編成され、量産化に向けた取り組みが本格化した。開発にはモータースポーツで培われた手法も導入され、約1年という短期間でプロジェクトが進められたという。

新型WRXでは、トランスミッションだけでなく、エンジン制御にも手が加えられる。搭載される2.4L 水平対向4気筒ターボエンジンには、レース活動から得られた知見を反映した専用制御プログラムを採用。アクセル操作に対して、自然吸気エンジンのようなダイレクトなレスポンスを実現することを目指している。現行WRX S4が持つ高いボディ剛性と組み合わせることで、従来とは異なるドライビングフィールを追求する狙いだ。

スバル WRX プロトタイプ

一方、公式映像には、カモフラージュを施したテスト車両も登場している。ボンネットにはWRXを連想させる大型エアインテークが確認できるものの、フロントバンパーやグリル周辺は厳重に覆われており、細部のデザインは明らかになっていない。この車両が11月発表予定のWRX MTモデルなのか、あるいは別の開発車両なのかは不明だ。

現時点では大幅なデザイン変更を裏付ける情報はないが、正式発表ではフロントマスクや足まわりを含め、既存のWRX S4からどこまで変更されるのかが注目される。

さらに、スバルは今回のWRXを含め、2027年までに3種類のMT搭載スポーツモデルを投入する計画を示している。そのひとつが、スポーツクーペ「BRZ」をベースとした新たなコンプリートカーだ。

2025年に発表された「BRZ STI Sport TYPE RA」をベースに、より軽快で意のままに操れる走りを追求するモデルとして開発が進められている。

もうひとつは、5ドアハッチバックの新型スポーツモデルである。こちらは、ジャパンモビリティショー2025で公開された「Performance-B STI concept」の市販化を目指すモデルとされ、WRXやBRZとは異なる個性を持つスポーツカーとして注目されている。

スバル WRX STI

提携するNikita Chuicko氏が制作した予想CGでは、WRXを思わせるフロントマスクに、大型リアウイングやワイドフェンダーを組み合わせた、迫力あるハッチバックスタイルが描かれている。

今回のTY85型復活は、単にMTの選択肢を増やすだけではない。高出力エンジンに対応するトランスミッションを再び量産することで、今後の高性能スポーツモデルにも活用できる技術的基盤を確保する意味がある。

国内向けWRXの新規受注が終了するなか、通常販売のMTモデルを新たに投入するという判断も注目される。まずは11月、復活するWRXの正式な車名や価格、そしてTY85型6速MTがどのような走りを実現するのか。その全貌が明らかになることを期待したい。