Vストローム250 ABS 1000kmガチ試乗3/3 ライポジや燃費や積載性など、11要素を細かくチェック‼

Vストローム250は、GSR250/GSX250Rと数多くの部品を共有している。もっともこのバイクに乗って、その事実をマイナス要素と感じるライダーはいないだろうし、そもそもVストローム250は他機種と基本設計を共有しているからこそ、ライバル勢よりフレンドリーな価格設定が実現できたのだ。
REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

スズキ・Vストローム250 ABS……61万3800円

基本的なデザインは650/1050と似ているものの、マフラーの跳ね上がり角度が控え目で、ヘッドライトが丸型の250は、何となく兄貴分より親しみやすい印象。第1回目でも記したように、現在のスズキはトップ/サイドケースとステーが3割引で購入できる、ツーリングサポートキャンペーンを実施中(2021年9月30日まで)。

ライディングポジション ★★★★☆

上半身がビシッと直立し、両手を伸ばすと自然にハンドルグリップが握れるライディングポジションは、昔ながらのロードバイクと言いたくなる雰囲気。ただし身長182cmの僕にとっては、下半身がちょっとタイト。ロングツーリングの後半では膝と足首に微妙な痛みを感じたので、スズキには純正アクセサリーとしてハイシートを設定して欲しいところ。もちろんハイシートを装着すると、足つき性は悪くなるのだが、現状が超良好という事実を考えれば(身長が160cm以上なら、不安を感じることはない模様)、座面高がノーマル+20~30mmのハイシートを望んでいるライダーは少なくないと思う。

サイドケースの左右への張り出し方は絶妙。ハンドル&バックミラーが通ればOKという感じで、混雑した市街地をスイスイ走って行けた。なお現在の250ccアドベンチャーツアラーでセンタースタンドを標準装備するのは、Vストローム250とヴェルシス-X250ツアラーのみ。

タンデムライディング ★★★★★

第1回目で述べたように、Vストローム250は車体後半の重量増加で操安性が露骨に悪化する。具体的な段数は乗り手の体格によりけりだが、今回はリアのプリロードを2段階強くしたら、自然なフィーリングが回復。以下はタンデムライダーを務めた、富樫カメラマンの感想。「乗り心地はかなり快適。身体が安定しているし、周囲の景色もよく見えるし、グラブバーはすごく握りやすい。これだったら、タンデムシートに座る奥さんとか彼女も文句は言わないんじゃないかな。欲を言うなら、シート座面はもう少し柔らかく、タンデムステップはもう少し大きいほうがいいけど、今どきの250ccでタンデムがここまで快適なバイクは、なかなかないと思うよ」

取り回し ★★★☆☆

ミドル以上のアドベンチャーツアラーよりは楽だが、エンジンが単気筒で装備重量が150kg台のホンダCRF250ラリーやKTM250アドベンチャーと比較すると、189kgのVストローム250はやっぱりそれなりに重い。ちなみに3つのケースを装備した際の車重は、205kgをわずかにオーバー。また、ライバル勢の多くが40度以上のハンドル切れ角を公称するのに対して、Vストローム250はやや少なめでオンロードバイク的な36度。

ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

ハンドルは大アップと言うべき形状。ハンドルクランプの上にブレースバーを追加すれば、さまざまなガジェットが装着できる。液晶メーターはGSX250Rと共通だが、違和感は皆無で、視認性は非常に良好。シフトアップのタイミングを知らせるエンジンRPMインジケーターは、任意で設定することが可能だ。メーター左下には12VDC電源ソケットが設置されている。

左右スイッチ/レバー ★★★★☆

スイッチボックスはオーソドックスな構成で、コレといった特徴はナシ。グリップラバーはGSX-Rシリーズと同じデザインで、純正アクセサリーとしてグリップヒーターが存在。バーエンドウェイトはGSX250Rとよく似た形状だが、ナックルガード用スリットが入った専用品。

レバーのアジャスト機構は、5段階のブレーキ側のみ。だからだろうか、アフター市場ではVストローム250用として、細かい位置調整ができるビレットタイプのレバーが数多く販売されている。なお近年のスズキ車で定番になりつつある、イージースタートシステムは不採用。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

ガソリンタンク容量は、ヴェルシスX-250と並んでクラストップとなる17L。並列2気筒らしいスリムさは希薄だが、その点に文句を言う人はほとんどいないだろう。ラジエターシュラウドは、高速走行中に下半身に当たる風を適度に抑えてくれる。シートの座り心地はなかなか良好だったものの、個人的には座面高が+20~30mmだったら、尻に体重が集中しづらくなって、さらに快適なツーリングが楽しめそうな気がする。タンデムシート下の左右に備わるサイドケース用アタッチメントは標準装備で、荷掛けフックとして使用することが可能。なおリアキャリア上に備わる黒い部品はトップケース用のステーは、こちらは標準装備ではない。

ステップ位置はGSR250とほぼ同様のようだが(兄弟車にしてスポーツモデルのGSX250Rより前方)、プレートやペダル類は専用設計。なお第2回目で述べたように、エンジンが粘り強いVストローム250は、ツーリング中のギアチェンジの回数が少なくて済むものの、シフトアップ&ダウンをしたときのタッチはシュコッと堅実かつ確実で、僕としてはかなりの好感触だった。

積載性 ★★★★★

ノーマル状態でも積載能力が抜群のVストローム250は、合計容量が63Lの3つのケースを装着することで、ほとんど無敵状態になる。しかも3つのケースの造りは質実剛健で、純正アクセサリーで時として感じる安っぽさは微塵もない。ただし非常に残念なことに、いずれのケースもフルフェイスヘルメットの収納は難しい。サイドケースは現状の容量でいいとしても、トップケースに関しては、もう少し大きくてもよかったかもしれない。

ブレーキ ★★★☆☆

GSX250Rと共通のブレーキは、ペーダルタイプのディスクがF:φ290mm/R:φ240mmで、キャリパーはF:片押し式2ピストン/R:片押し式1ピストン。2チャンネル式ABSはボッシュ製を採用する。見た目は決して豪華ではないが、実際のライディング中の制動力やタッチに不満を感じることはなかった。

サスペンション ★★★☆☆

フロントフォークはφ37mm正立式で、リアショックはリンクを持たない直押し式。車体後半の重量増加で操安性が悪化する車両だけに、リアショックのプリロードアジャスターが、シート下のアクセスしやすい位置に設置されているのは嬉しい。なお前後ショックの動きに関して、当初の僕はもう少しシットリ安定して欲しいと思っていたのだが、ロングランの後半は、ノーマルの柔らかいフィーリングが理にかなっていると思えた。

車載工具 ★★★★☆

近年のバイクの基準で考えるなら、車載工具の点数は平均よりやや多い。中でも、スパークプラグレンチは貴重な装備だろう。リアショックのプリロード調整で使うフックレンチは、専用設計だけあって扱いやすかった。

燃費 ★★★★☆

Vストローム250の燃費をインターネットで検索すると、30km/L前後は当たり前で、ロングツーリング派の中には35km/L以上と言う人もいるのだが(その気になれば、無給油で500kmを走破できるらしい)、僕の使い方が悪かったようで、今回の数値はまったく奮わず……。とはいえ、トータル燃費は1097.8÷43.71=25.1km/L、ガソリンタンク容量は17Lだから、警告灯を気にしなければ、無給油で400kmを走れなくはない?

面発光のテールランプはLEDだが、他の灯火類は昔ながらのフィラメント球。僕自身はその構成に不満はないけれど、Vストローム250オーナーの中には、アフターマーケット製パーツですべてをLED化する人が大勢いる模様。


主要諸元 

車名:Vストローム250 ABS
型式:2BK-DS11A
全長×全幅×全高:2150mm×880mm×1295mm
軸間距離:1425mm
最低地上高:160mm
シート高:800mm
キャスター/トレール:25°10′/100mm
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/OHC 2バルブ
総排気量:248cc
内径×行程:53.5mm×55.2mm
圧縮比:11.5
最高出力:18kW(24PS)/8000rpm
最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ
 1速:2.416
 2速:1.529
 3速:1.181
 4速:1.043
 5速:0.909
 6速:0.807
1・2次減速比:3.238・3.357
フレーム形式:セミダブルクレードル
懸架方式前:テレスコピック正立式φ37mm
懸架方式後:スイングアーム・モノショック
タイヤサイズ前後:110/80-17 140/70-17
ホイールサイズ前後:3.00×17 4.00×17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:189kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:17L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:39.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス2・サブクラス2-2:32.0km/L(1名乗車時)

キーワードで検索する

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…