1000km燃費テスト|カワサキKLX230のリアルな使い勝手をじっくり検証3/3

さまざまな場面での乗り味を紹介した第1/2回目に続いて、第3回目で行うのは細部の解説。基本的にKLX230は、すべての面でオフロードを重視した構成になっているけれど、今回は街乗り&ツーリングライダーの目線で、操作系を含めたライディングポジション、取り回し、積載性、足まわりなどの評価をしてみたい。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

※2020年5月6日に掲載した記事を再編集したものです。
価格や諸元、カラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
カワサキ・KLX230

カワサキKLX230……495,000円

カワサキ・KLX230
全面新設計にして、エンジン+シャシーの他機種への転用が難しそうなのに、KLX230の価格は49万5000円。今どきの250ccクラスの基準で考えるなら、この設定はかなり良心的だ。ボディカラーはライムグリーンに加えて、エボニー:黒が存在。なお部品点数が少ないにも関わらず、足まわりにちょっと豪華な装備を導入した、クローズドコース専用のRは51万7000円。

ライディングポジション ★★★★☆

カワサキ・KLX230
カワサキ・KLX230

オフロードでの操縦性を重視したライディングポジションは、街乗りやツーリングでも十分に美点が感じられる。ハンドルは自然に手を伸ばしたところに設置されているし、着座位置は状況に応じて自由に選択できるし、膝や足首の曲がりは緩やか。個人的には★×5を付けたいものの、高くて硬くて幅が狭いシートは、賛否両論がありそうな気がするので、とりあえず★×4とした。

タンデムライディング ★☆☆☆☆

カワサキ・KLX230
モノは試しという感じでやってみたけれど、緊急時以外のタンデムは避けたほうがいいと思う。車体姿勢が尻下がりのクルーザー風になるため、曲がらない⁉と感じるのは、軽量車ではよくあることだが、KLX230は曲がらないどころか、直線を走っているだけでも違和感があった。

取り回し ★★★★★

カワサキ・KLX230
取り回しはとにかく楽チン。もちろん、250cc以下のトレール車はそう感じるのが普通だが、軸間距離が1380mmしかないため、KLX230の押し引きは、かつてのカワサキが販売していたスーパーシェルパやKLX250よりイージーな印象。マフラーにはヒートガードが装着されているので、狭いところの駐車もあまり気を使わない。

ハンドル/メーターまわり ★★★☆☆

カワサキ・KLX230
カワサキ・KLX230
コクピットは近年のトレール車の定番と言うべき雰囲気。トップブリッジにラバーを介してマウントされる、ブリッジ付きのハンドルはφ22.2mmのスチール製で、メーターはモノクロ液晶。バックミラーの左右幅は、ツーリングではもっと広くしたいと感じたものの、混雑した市街地では絶妙と思えた。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

カワサキ・KLX230
カワサキ・KLX230
カワサキ・KLX230
グリップラバーは当然、ダイレクトなフィーリングが得られるオフロード仕様。スイッチの操作性は至って普通。
カワサキ・KLX230
カワサキは昔から、ブレーキ/クラッチレバーの位置調整機構に熱心なメーカーだが、トレール車にはほとんど導入していない。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★

カワサキ・KLX230
カワサキ・KLX230
カワサキ・KLX230
乗り手の下半身と車体のフィット感はすこぶる良好。座面がフラットなシートは前後左右に動きやすいし、ガソリンタンク&サイドカバーに乗り手の体重移動を阻害する凹凸は皆無。ステップは脱着式のラバーを装備しない完全なオフロード仕様だ。左側サイドカバーの後方にはヘルメットホルダーが備わる。

積載性 ★★★☆☆

カワサキ・KLX230
★×3は純正オプションのリアキャリア:1万7380円を装着しての評価で、ノーマル状態なら★×1。フックが一切ないKLX230は、ノーマル状態では荷物の積みようがないのである。
カワサキ・KLX230
写真で使用しているのはモトフィズのWデッキシートバッグで、リアキャリアに備わる片側2個ずつのフックを利用して、しっかり固定できた。なおリアキャリア中央にユニットが収まる、ETC2.0車載器キット:4万5980円も純正オプション。

ブレーキ ★★★★☆

カワサキ・KLX230
ブレーキのロックを未然に防ぐABSは、悪路ではかえって制動距離が伸びる?と言われることがある。
カワサキ・KLX230
でもカワサキがKLX230用としてBOSCHと共同開発した、オフロード専用ABSの利き方は絶妙で、不愉快な介入は一切ナシ。悪路でも自信を持って速度を落とすことができたし、リアブレーキを使ってテールを流すことも可能だった。

サスペンション ★★★★☆

カワサキ・KLX230
φ37mmの正立式フォークとリザーバータンクなしのリンク式リアショックは、パッと見ではコストダウンを意識した雰囲気と思えるけれど……、峠道やオフロードでは必要にして十分な性能を発揮。
カワサキ・KLX230
前後ともダンパーの利き方はなかなか上質で、フロントは剛性不足を感じないこと、リアは全域で感じた滑らかな動きが印象的だった。純正タイヤはIRC GP-21/22。

車載工具 ★★★☆☆

カワサキ・KLX230
バッテリー下に収まる車載工具は、今どきの250ccクラスでは平均的な内容。奇妙な形をした上段中央のフックレンチは、リアショックのプリロード調整時に使用する。その右はエクステンションバーで、左は22mmのメガネレンチ。下段は、14/17mmスパナ、12/14mmスパナ、ドライバー、プラグレンチ、プライヤー。

燃費 ★★★★☆

カワサキ・KLX230
燃費も今どきの250ccクラスとしては平均的。撮影を兼ねて出かけたツーリングでは、市街地と同等の数値になってしまったが、その理由はゴー&ストップ&Uターンが多かったうえに、結構飛ばしていたから①を基準とする航続可能距離は260kmだが、KLX230の燃料残量警告灯はかなり早めに点灯が始まるので、現実の路上で200km以上走るのは、かなりの勇気が必要だと思う。

レーダーチャートでキャラクターを分析

カワサキ・KLX230
評価項目は、上3つがスポーツ性能で、他5つがツーリング性能。セロー250やCRF250Lだったら、グラフの形が丸っこくなりそうな気がするが、KLX230はご覧の通り、なかなかイビツな形になってしまった。もちろん、イビツが悪いわけではない。

主要諸元

型式:2BK-LX230A
全長×全幅×全高:2,105mm×835mm×1,165mm
軸間距離 :1,380mm
最低地上高:265mm
シート高:885mm
キャスター/トレール:27.5°/ 116mm
エンジン種類/弁方式:空冷4ストローク単気筒/SOHC 2バルブ
総排気量 :232cm³
内径×行程/圧縮比:67.0mm×66.0mm/ 9.4:1
最高出力 :14kW(19PS)/7,600rpm
最大トルク:19N・m(1.9kgf・m)/6,100rpm
始動方式 :セルフスターター
点火方式 :バッテリ&コイル(トランジスタ点火)
潤滑方式 :ウェットサンプ
エンジンオイル容量:1.3 L
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常噛6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ :
 1速 3.000 (39/13)
 2速 2.066 (31/15)
 3速 1.555 (28/18)
 4速 1.260 (29/23)
 5速 1.040 (26/25)
 6速 0.851 (23/27)
一次減速比/二次減速比:2.870(89/31) / 3.214(45/14)
フレーム形式:セミダブルクレードル
懸架方式 :
 前 テレスコピック(インナーチューブ径 37mm)
 後 スイングアーム(ニューユニトラック)
ホイールトラベル :
 前 220mm
 後 223mm
タイヤサイズ:
 前 2.75-21 45P
 後 4.10-18 59P
ホイールサイズ:
 前 21×1.60
 後 18×1.85
ブレーキ形式 :
 前 シングルディスク 265mm (外径)
 後 シングルディスク 220mm (外径)
ステアリングアングル:45°/ 45° (左/右)
車両重量:134kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:7.4 L
乗車定員:2名
燃料消費率:(km/L)※1
 38.0km/L(国土交通省届出値:60km/h・定地燃費値、2名乗車時)※2
 33.4㎞/L(WMTCモード値 クラス2-1、1名乗車時)※3
最小回転半径:2.2m
カラー・メーカー希望小売価格:
ライムグリーン、エボニー
495,000円(本体価格450,000円、消費税45,000円)
生産国:インドネシア

ライター:中村友彦

カワサキ・KLX230
今から四半世紀以上前に購入したセロー225を皮切りにして、カワサキKDX200やKDX220SR、ホンダSL230、CRF250R、モンテッサ・コタ200、ガスガスTXT2000など、これまでに数多くのオフロード系バイクを所有してきた、2輪雑誌業界23年目のフリーランス。とはいえオフロードにおける腕前は、人様に自慢できるようなレベルではまったくない。

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…