125ccクラスに物足りなさを感じる人にはコレ!ヤマハ・XSR155試乗記

「XSR」と言えば、九つにカテゴリー分けされたヤマハのラインナップ中、「スポーツヘリテージ」に属すブランド。いずれも丸形のヘッドランプを採用したオーソドックスなスタイリングを特徴とし、国内市場には700と900の2機種がリリースされている。今回は同シリーズの末弟と言えるXSR 155に試乗した。インドネシアで製造された輸入モデルである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 サイクルロードイトー http://www.critoh.com

ヤマハ・XSR155…..…459,000円(消費税込み)

サイクルロードイトー指扇店参考乗り出し価格……540,000円
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155

マットシルバープレミアム

ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155

カラーバリエーション(参考・本国仕様)

マットグリーンオーセンティック
マットブラックエレガンス
WGP 60周年記念カラー

 本国のWebサイトに登場するプロモーションビデオでは、冒頭にXS650E(XS-1) を登場させるシーンが挿入されていた。50年以上前のデビュー当時を知る筆者にとっては、ちょっと懐かしい。
 ヤマハのスポーツヘリテージを表現する上で、同社初の4サイクルエンジン搭載車であるXS-1を起用した点に、何とも歴史の重みが感じられたのである。
 本国ラインナップのカテゴリー分けとして、XSR 155はネイキッドに属しているが、これまでに無かった「スポーツヘリテージ」という括りを主張する第一弾の新開発モデルとしてリリースされていた。
 ヤマハ(日本)のカテゴリー分けに使われている「スポーツヘリテ-ジ」に属すモデルは、それぞれにネオレトロな雰囲気を醸しだしている点が共通している。
 デザイン手法としては、最新のLED式ながらも丸形のヘッドランプ&同ハウスの採用が共通項。XSR 155にはシングルメーターとテールランプにもシンプルな丸形デザインが採用されている。
 少し異彩を放っているのは、大きなブロックパターンと太いグルーブを持つデュアルパーパスタイヤを標準装備。
 冒頭に記したプロモーション映像の終盤にはカスタムを施したマシンにノビータイヤ(ブロックパターンのオフロード用)へ換装してダートトラックを走らせるシーンまで挿入されていたのである。
 日本の一般的な市場センスやニーズからは、少しイメージしにくいかもしれないが、XSR 155には少しだけある種スクランブラー的な要素を併せもっている。同シリーズの末弟として、なかなか個性的なキャラクターを備えていると言えそうである。

 デルタボックスフレームに搭載されたエンジンの総排気量は154cc。ボア・ストロークはほぼスクエア、僅かにロングストロークな58×58.7mmの水冷単気筒。4バルブに加えてVVA機構を採用したSOHCヘッドを持つ。
 このエンジンは国内にリリースされているトリシティ155やNMAX155、マジェスティS、そして最新のX FORCEと基本的に共通。もちろんクラッチとミッション型式は別物だ。
 一方インドネシア本国でラインナップされているMT-15、R15、WR155R、VIXIONにも搭載。湿式多板のアシストスリッパークラッチ&マニュアル6速ミッション付き各エンジンとはほぼ同じである。
 特徴的なVVA機構は、別モデルで既報の通り2015年登場のNMAXから始まっているが、スクーターのみならず、既に多くの機種で活用されている。
 左サイドカムチェーンで駆動される1本のカムシャフトには左から順に排気バルブ用、吸気バルブ用(高回転)、同バルブ用(中低速)3個のカムが並び、それぞれローラーロッカーアームを介してバルブを押す仕組み。
 通常中央位置のロッカーアーム(高回転用)は遊んでいるが、右側に位置する電動ソレノイドの働きで横方向にピンが押し出されると吸気用ロッカーアームと締結されて、中央のカムで駆動される仕組みである。
 結果として、中低速域から高速域まで幅広い範囲で高トルクを誇る出力特性を発揮。フリクションロスの低減化策も徹底された上、燃焼室は11.6対1という高圧縮比を得て最高出力は14.2kW/10,000rpm、最大トルクは14.7Nm/8,500rpm を発揮する。
 
 エンジンはデルタボックスフレームにリジッドマウント。ダウンチューブは持たず、基本的にはスッキリとレイアウトされている。ただしシリンダーヘッド周辺の冷却系やフレーム脇の電装系他アンダーカウルの装備等、各種補記類の配置が目立つ。
 ブラックのテレスコピック式フロントフォークは倒立式。リヤのスイングアームサスペンションにはボトムリンク式モノショックを採用。
 10.4L容量のガソリンタンクとブラウンのタック付きダブルシート、そしてサイドカバーを持つフォルムは、いかにもネオレトロなデザインに仕上げられている。
 サイズ的には国内仕様のMT25よりひとまわりコンパクト。全長は83mm短くホイールベースは50mm短い。車重は33kg軽い134kg である。

どこか大人びた乗り味が快適。

 マットシルバーのタンクにブラウンのダブルシート。それ以外の多くの部分はブラックアウトされた試乗車を目の当たりにすると、ネオレトロな雰囲気以前に、どこか大人びた上品な香りを覚える。
 見ために大きな車格は、仮にそれが250ccのバイクだと言われたとしても、素直に信じてしまえるほどのボリューム。シートに股がると、少し踵が浮いてしまう足付き性も相まって、なかなか立派だと思えたのが第一印象である。
 さすがにDOHCの2気筒エンジンを搭載するMT-25よりは全長やホイールベースがコンパクト。逆にXSR 155は全幅が804mmとワイドで、全高も少し高い。さらに134kgという車重の軽さが効いて、取り回しが扱いやすくとても親しみやすい。
 それでいて、自然と上体を起こして乗れる目線の高いライディングポジションは、堂々と落ち着いていて、155らしくない。むしろ250ccクラスに匹敵する様な雰囲気がある。
 比較対象が古くて恐縮だが、サイズ的には80年代に人気のあったSRX250と同等。ホイールベースや車重はほぼ同レベル。但しスマートで少し低く身構えられるライトウイエトスポーツだったSRXとはキャラクターが異なりXSRはシックな雰囲気が印象的なのである。
 シングルの水冷エンジンもトルクの太さと粘り強い出力特性が印象的。リフト量の大きな高速用カムへの切り替わりも違和感なく、レッドゾーンの11,000rpmあたりまで、ストレスなく自然な伸び上がりを発揮する。    
 低めの排気音のせいか、意外な豪快さも感じられ、仮に125のパワーフィールでは絶対に期待しようもないゆとりのある力強さがあなどれない魅力である。
 吹き上がり速度は決してシャープではないが、どの回転域でも落ち着きを伴う回転フィーリングと頼り甲斐のあるスロットルレスポンスを発揮。ストリートスポーツとしては、実に程良い扱いやすさが好印象。落ち着きのある乗り味とのバランスも良い。
 丸形メーター表示の外周には13,000rpmスケールの回転計がありレッドゾーンは11,000rpmから。ただし3ブロックの積み重ね毎に1,000rpmを示す大雑把な表示。
 どうせなら回転計を削除して、よりシンプルな表示デザインを追求して欲しいと思えたのも正直な感想である。
いつもの様にローギヤでエンジンを5,000rpm回した時のスピードは20km/h。6速トップギヤで50km/h走行時のエンジン回転数はメーター読みで3,660rpm。丁度4,000rpmで53km/hだったことから算出すると、100km/h クルージング時のエンジン回転数は約7,500rpmである。
 ちなみに約7,700rpmだったスズキGSX-R 150と比較すると、大差はないものの、総合減速比はやや高め。傾向としてXSR 155はトルクに余裕のあるエンジンであることがわかるだろう。

 操縦性は至って素直で、小回りも扱いやすく、狭い場所でのU ターンも自由自在に扱える点が魅力的。                   
 少しサイズが太めに感じられるタイヤのグリップ力には安心感があり、峠の切り返しでも扱いは素直。
 全体的に落ち着きのある乗り味は、高速クルージングでも発揮され、前方視界が広く軽快に扱えるグッドハンドリングと共に、ロングツーリングも楽に許容してくれそう。
 ビギナーライダーにも素直にお薦めできるが、ベテランライダーのダウンサイジング用モデルとしても相応しい。そんな大人びた乗り心地が印象的であった。

足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)

ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155
ヤマハ・XSR155

シート高は810mm。ご覧の通り、両足の踵は少し地面から浮いてしまうが、足付き性に難は感じられなかった。大きく立派な車体だが、支えたり、押し引きする扱いも楽。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…