エンジン共通で価格差わずか1万6500円

【JOG125とアクシスZ】似て非なるヤマハの2台を比べてみた。

コンパクトな車体と低シート高、そして25万5200円という安さをセールスポイントに、11月28日にリリースされるジョグ125。この価格帯の原付二種スクーターを狙っている人にとって、おそらく気になるのが1万6500円高でラインナップされているアクシスZとの違いだろう。そこで、さっそくクローズドスペースでこの2台の同時比較試乗を実施。それぞれの長所&短所についてチェックした。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

JOG125は25万5200円、アクシスZは27万1700円

2020年11月より生産国の台湾で販売されていたJOG125がいよいよ日本へ上陸した。軽量コンパクトかつコスパに優れたスタンダードな原付二種スクーターという位置付けだ。
同じく台湾で生産されている原付二種スクーターで、2022年3月にマイナーチェンジを実施。平成32年排ガス規制対応のほか、SMG(スマートモータージェネレーター)やUBS(前後連動ブレーキ)の新採用、ヘッドライトの光量アップ、カラー変更などを行っている。

フロントブレーキ、トランク容量、ヘッドライト光量に差あり

JOG125(手前)のフロントブレーキはドラム、アクシスZ(奥)はディスクだ。両車ともリヤブレーキはドラムであり、左レバーで前後が連動するUBS(ユニファイド・ブレーキ・システム)を採用する。なお、ホイール径は両車とも10インチだが、前後タイヤサイズはJOG125が90/90-10、アクシスZが100/90-10で、後者の方がわずかに外径が大きく、それを補正するためか両車で変速比が異なる。
JOG125:シート下にあるトランクの容量は約21.3ℓで、最大積載量は5kg。ヘルメットを逆さまに入れるタイプで、シートヒンジの左右にヘルメットホルダーが設けられる。
アクシスZ:トランクの容量はヤマハの125ccスクーターの中でトップの約37.5ℓで、サイズによってはヘルメットが2個収納可能だ。同じくヘルメットホルダーを二つ用意する。
JOG125:クリアレンズ+マルチリフレクターのヘッドライト。ハロゲン球はHS1(35.0W/35.0W)だ。
アクシスZ:2022年のマイナーチェンジで光量をアップしている。H4のハロゲン球は60.0W/55.0Wに。
JOG125:指針式の速度計と燃料計、積算計のみというシンプルな構成。燃料タンク容量は約4.0ℓだ。
アクシスZ:表示内容はジョグ125と共通で、速度計は140km/hフルスケール。タンク容量は約5.5ℓだ。

パワーユニットは共通だが微振動の伝わり方に違いあり

同じパワーユニットを搭載する2台の原付二種スクーター、JOG125とアクシスZを乗り比べる機会を得た。エンジンは124cc空冷SOHC2バルブ単気筒“ブルーコア”で、最高出力8.3psや最大トルク9.8Nmまで両車共通だ。厳密には変速比がわずかに異なるが、これはタイヤの外径差を補正して動力性能を同等にするのが狙いと思われる。

まずはそのエンジンから。両車ともSMGを採用しているため、始動は非常にスムーズかつ静かであり、その後に始まるアイドリングの音量も抑えられている。スロットルを少し開けるとすぐに遠心クラッチがつながり、スルスルとジェントルに発進する。加速力こそ同排気量の水冷エンジン勢ほどパワフルではないが、車体の軽さも手伝って交通の流れに乗るには十分以上であろうと感じた。

そうした基本的な動力性能や印象は両車に共通するのだが、意外と差を感じたのは体に伝わる微振動だ。JOG125の方が明らかにエンジンからのバイブレーションが強く感じられるのだが、これは足着き性を良くするためにシートのウレタンを薄くしたのが原因ではないかと思われる。ただ、それでも微振動自体のボリュームとしては不快に思うほどではなく、退勤後の帰り道で仕事の疲労を増幅するほどではない。


旋回力に長けるJOG125に対し、アクシスZは安定性に優れる

続いてハンドリングについて。どちらもホイール径は前後10インチだが、JOG125は幅が1サイズ細く、その結果としてタイヤ外径も小さいのだ。それ以外の違いとしては、JOG125はアクシスZよりも車重が5kg軽く、ホイールベースが70mm短く、そしてキャスター角がわずかに寝ている。

そうした細かな違いの積み重ねが、両車のハンドリングの差に現れている。JOG125は原付一種並みに倒し込みや切り返しが軽快で、浅いバンク角でもしっかりと向きを変えてくれる。1980年代のスクーターレースシーンを席巻したJOGの名を受け継ぐだけに、当時を知る人なら思わずニヤリとするはずだ。これに対してアクシスZは、深いバンク角に至るまでの手応えが一定で、タイヤの接地感も高く、ニュートラルに旋回する。もちろん、重くて大きな水冷スクーター勢よりは断然軽快だが、タイヤサイズやホイールベースの差がこんなにもハンドリングに影響を与えるのかと驚かされた。

さて、注目のブレーキ性能について。JOG125は、国内メーカーの原付二種スクーターとしては久しぶりにドラムブレーキをフロントにも採用している。同じ原付二種、ホンダのスーパーカブ110やクロスカブ110も、2021年までは前後ともドラムだったので驚きはなく、性能的にも不足はないだろうと思ってはいたが、見事にその予想は当たっていた。

右レバーを強く引くとワイヤーの伸びが感じられるものの、発生する制動力自体はディスクブレーキのアクシスZと大差はない。そして、前後が連動する左レバーでの制動力は十分以上で、コントロール性も含めて両車は同等レベルのブレーキ性能を有すると言っていいだろう。

JOG125とアクシスZの価格差は1万6500円。トランクの大きさやヘッドライトの明るさ、燃料タンクの容量、そして足着き性など、使うシーンや乗る人の体格によって優先項目は変わるので、何を重視するかで自然と選ぶべき車種が見えてくるだろう。裏を返せば、そうした細かなニーズの違いを把握し、JOG125の投入を決めたヤマハの判断は正しかったのかもしれない。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

JOG125:シート高は現行の国産原付2種スクーターの中では最も低い735mmで、ゆえに足着き性は優秀だ。ライディングポジションは原付一種並みにコンパクトに感じられる。
アクシスZ:シート高はJOG125より35mm高いとはいえ、それでも足着き性は良好な部類に入る。座面の前後長が666mmと長く、着座位置の自由度が高いのもメリットと言えよう。

JOG125 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BJ-SEJ5J/E33VE
全長/全幅/全高 1,740mm/675mm/1,090mm
シート高 735mm
軸間距離 1,205mm
最低地上高 110mm
車両重量 95kg
燃料消費率 国土交通省届出値 
定地燃費値 57.7km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 51.9km/L(クラス1)1名乗車時
原動機種類 空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 124cm3
内径×行程 52.4mm×57.9mm
圧縮比 10.2:1
最高出力 6.1kW(8.3ps)/7,000rpm
最大トルク 9.8N・m(1.00kgf・m)/5,000rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 0.84L
燃料タンク容量 4.0L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、4.0Ah(10HR)/YTX5L-BS
1次減速比/2次減速比 1.000/7.500 (50/16×36/15)
クラッチ形式 乾式、遠心、シュー
変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比 2.281~0.717:無段変速
フレーム形式 アンダーボーン
キャスター/トレール 27°00′/81mm
タイヤサイズ(前/後) 90/90-10 50J(チューブレス)/90/90-10 50J(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ/機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ(12V、35/35W×1)
乗車定員 2名

アクシスZ 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BJ-SEJ6J/E33VE
全長/全幅/全高 1,790mm/685mm/1,145mm
シート高 770mm
軸間距離 1,275mm
最低地上高 125mm
車両重量 100kg
燃料消費率 国土交通省届出値 
定地燃費値 58.0km/L(60km/h)2名乗車時
WMTCモード値 51.9km/L(クラス1)1名乗車時
原動機種類 空冷・4ストローク・SOHC・2バルブ
気筒数配列 単気筒
総排気量 124cm3
内径×行程 52.4mm×57.9mm
圧縮比 10.2:1
最高出力 6.1kW(8.3ps)/7,000rpm
最大トルク 9.8N・m(1.00kgf・m)/5,000rpm
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 0.84L
燃料タンク容量 5.5L(無鉛レギュラーガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V、4.0Ah(10HR)/YTX5L-BS
1次減速比/2次減速比 1.000/7.500 (50/16×36/15)
クラッチ形式 乾式、遠心、シュー
変速装置/変速方式 Vベルト式無段変速/オートマチック
変速比 2.219~0.749:無段変速
フレーム形式 アンダーボーン
キャスター/トレール 26°30′/80mm
タイヤサイズ(前/後) 100/90-10 56J(チューブレス)/100/90-10 56J(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式シングルディスクブレーキ/機械式リーディングトレーリングドラムブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ ハロゲンバルブ(12V、60/55W×1)
乗車定員 2名

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…