ベネリの原付二種、125Sを一言で言い表すなら「小粋なイタリアン」。車格が絶妙! エンジンも伸びやか!

ベネリがリリースする125Sは前後17インチホイールを装着したフルサイズ・ネイキッドモデルだ。海外で需要が多く、近年では国内でも人気が高まってきた原付二種クラスだが、その激戦区に投入されたストファイ・イメージのマシンに試乗した!
REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●佐藤モルツ(SATO Malt’s)

ベネリ・125S…41万8,000円(消費税込み)

スポーティなルックスに試乗への期待感が高まる!

最近のスポーツネイキッドのトレンドでもある、異型ヘッドライトを備えたストリートファイタールックのベネリ125S。前後17インチホイールを装備したフルサイズ・125スポーツで、同社が発売しているスポーツミニ・TNT125とは異なるジャンルのマシン。パワーユニットも別物で、水冷+6速ミッションでパワー&トルクも上回っている。

足回りを見ると倒立フォークにペタルディスクローター、個性的なデザインのアルミ製キャストホイール、リヤはリンク式リヤショックなど本格的な装備。

低く構えたヘッドライトから筋肉質な盛り上がりを見せるガソリンタンクを通り跳ね上がった短いテールカウルまでの、まるでターゲットに襲いかかる猛獣のようなフォルムを見ていると、走りに対する期待感が増してくる。

前後17インチのフルサイズとはいえコンパクトなパワーユニットを搭載したツインスパーフレームは実にスリム。気軽にまたがって軽量な車体を無理なく起こすことができる。着座位置が低いだけじゃなく足を開く角度も少ないので足つき性はかなりいい。小柄なライダーにとってもありがたい作り。バーハンドルは低めにセットされ、やや上から抑え込むようなフォームになる。

テスター身長:165cm/体重70kg。片足はもちろん、両足を出してもほぼかかとまで接地する。車体も軽いので、起こしたり支えるのにはなんの気構えもいらない。

市街地をキビキビと駆け抜ける動力性能!

セルボタンを押すと単気筒エンジンが目覚める。レスポンスは良好。排気音からもパワフルさを感じる。

クラッチをつなぐと軽快な単気筒サウンドとともにスタート。125ccとしてはなかなか力強い印象を受ける。低回転域からしっかりとトルクが出るエンジン特性で、中回転域からの伸びも良い。信号などでのストップ&ゴーを繰り返すストリートで多用する回転域で扱いやすいフィーリングなので、軽量な車体をキビキビと元気に加速させることができる。

ツインスパーフレームと倒立サスペンションによってフロントの剛性感は高く、強くブレーキをかけてもヨレることなくスムーズに減速。タッチはよく、握り込みと減速率の差もなく怖さを感じることはない。リヤブレーキとのバランスもよく交通の流れに合わせるのも容易だ。

サスペンションの減衰もしっかりと効いていて、路面の凹凸のショックを柔らかく吸収。ブレーキング時のノーズダイブも自然で、狙ったところで的確にスピード調整できるイメージだ。

【左】倒立フロントフォークにアキシャルタイプの2ポットキャリパーを装備。ペタルタイプのディスクローターとの組み合わせで必要十分なストッピングパワーを生み出す。【右】リヤブレーキのディスクローターもペタルタイプ。キャリパーは片押し2ポットでスイングアームには小型のリヤフェンダーが装着されている。

軽快な挙動でコーナーリングもスポーティ!

車体が軽量なこともあってハンドリングは軽快。「行きたい」と思った瞬間にスッとフロントから向きをかえていく。といってもフラフラと軽すぎるわけではなく、一度バンク角が決まったらそれをキープしながら旋回。立ち上がりでアクセルを開けると、単気筒サウンドに押し出されるように狙ったラインを通って立ち上がっていく。

また切り返しなどでもハンドルやステップに入力すると素直に反応し、自然な挙動を示す。見た目のアグレッシブさとは裏腹に、扱いやすいキャラクターであることが感じられた。

都会をスマートに駆け抜けるスポーツ・ワンツーファイブ!

戦闘的なルックスをしているベネリ125Sだが、乗ってみると想像以上に従順なキャラクターであることがわかった。そもそも125ccクラスは幅広いユーザーに向けたエントリークラスという一面もある。扱いやすさというのは切っても切れない条件であろう。

それを踏まえ、魅力的なスタイルとフレンドリーな特性を融合させたベネリの手腕はかなり長けているといえよう。これはなかなか侮れないバイクだぞ。そう感じるのに十分なフィーリングだった。

ベネリは1911年にイタリアで生まれたブランド。しかし幾度も経営の危機に陥り、80年代後半には他メーカーに吸収合併され一時はブランドが途絶えた。だが2005年に中国に本拠地を置くQ.J.グループに組み込まれ2016年から新生ベネリとして活動している。そしてその技術力は年々向上してきていて、仕上がりが美しくなり、動力性能や耐久性も向上してきた。ベネリ125Sも価格とクオリティのバランスはかなり高いといえる。このスタイルに惹かれたのなら、一度現車をジックリと見てみることをお勧めしたい。

ディテール解説

シャープなデザインのヘッドライトにはLEDデイライトが装備され個性的な顔つきに。夕暮れになってもベネリ125Sだということを主張する

バーハンドルはそれほど広くなく、ポジションはコンパクトに収まる。全体にブラックで統一され精悍なイメージだ。

メーターはフルデジタルタイプ。シンプルかつ見やすいレイアウトで必要な情報がすぐに読み取れる。

ブレーキレバーの距離を調整できる機能を装備。これは手が小さいライダーにはありがたい。

6本スポークのデザインが独特の17インチアルミホイールを採用。フロントにはコンビブレーキを備えている。

水冷エンジンは低回転域からトルクが生まれ、中回転域の伸びも良い特性。アンダーカウルがスタイリッシュ。

シリンダーが前傾しているエンジンには3スパークプラグシステムが採用されていて、優れた燃焼効率を実現している。

異型断面のサイレンサーは後端がアップしていてスポーティさに磨きをかけている。

ライダー側が盛り上がった形状のガソリンタンクは下部が絞り込まれているので、下半身のフィット感は良い。

スポーツバイクらしく段差がある2ピースタイプのシートを採用。タンデムシートのスポンジも肉厚だ。

テールランプもウインカーもLED。シンプルでありながら視認性は高い。リヤショックはリンクを介してスイングアームに接続されている。

SPECIFICATION

車名(型式) 125S(U32)
全長×全幅×全高 2030mm×780mm×1070mm
軸間距離 1345mm
最低地上高 170mm
シート高 810mm
車両整備重量 147kg
エンジン種類 水冷4ストローク単気筒
弁方式 SOHC4バルブ
総排気量 125cc
内径×行程/圧縮比 Φ54.0×54.5/11.6:1
最高出力 9.4kw/9500rpm
最大トルク 10.0Nm/8500rpm
トランスミッション形式 常時噛合6速リターン
クラッチ形式 湿式多板
フレーム形式 ツインスパーフレーム
懸架方式(前) 倒立テレスコピック
懸架方式(後) スイングアーム
ホイールトラベル(前) 110mm
ホイールトラベル(後) 60mm
タイヤサイズ(前) 100/80-17
タイヤサイズ(後) 130/70-17
ブレーキ形式/径(前) 油圧デイスク/260mm
ブレーキ形式/径(後) 油圧デイスク/220mm
燃料タンク容量 10L
燃費(WMTCモード) 45.5km/L
乗車定員 2名

キーワードで検索する

著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…