市街地は重いぞ! でも高速道路は超超イイ感じ! 装備重量296kg、ヤマハ・FJR1300AS試乗

日本での人気はいまひとつ盛り上がらないものの、欧米では確固たる地位を確立し、これまでに10万台以上のセールスを記録したFJR1300。デビューから約20年が経過した今、孤高の存在としてスポーツツアラー界に君臨し続ける、このモデルの魅力をじっくり考えてみたい。
※試乗車は2019年モデルのマットシルバー

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO&EDIT●佐藤恭央(SATO Yasuo)

※2020年12月25日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
ヤマハ・FJR1300AS

ヤマハFJR1300AS ……1,870,000円

FJR1300A・・・1,540,000円

ヤマハ・FJR1300AS
ヤマハ・FJR1300AS
ヤマハ・FJR1300AS
ヤマハ・FJR1300AS
ヤマハ・FJR1300AS
ヤマハ・FJR1300AS
ヤマハ・FJR1300AS

ハイテク装備は十分! 熟成を遂げつつある一台

 1984~1997年に販売されたFJ1100/1200の後継車として、2001年にデビューしたFJR1300は、いろいろな意味で異例のモデルだった。まず当時の日本車では、スポーツアラー/スポーツGTと呼ばれる車両を、ゼロから新規開発することが異例だったし、同時代のリッタースーパースポーツに匹敵する143.4psの最高出力も、2000年代初頭の2輪業界の基準では異例。そして初代から現行モデルに至るまで、並列4気筒エンジン+アルミ製ダイヤモンドフレームの基本構成が変わっていないことも、近年の常識で考えれば異例と言っていいだろう。

ヤマハ・FJR1300AS

 約20年に及んだ生産期間の中で、FJR1300は数限りない改良を行ったものの、大雑把に分類するなら、2016年から発売が始まった現行モデルは第4世代になる。
 もっとも第4世代の主な特徴は、ミッションの5→6速化、灯火類のフルLED化、バンク角に応じて照射方向が変わるコーナリングランプの採用(上級仕様のASのみ)などで、クラッチ操作が不要となるYCC-Sを導入した第2世代(2006~2012年)や、ライドバイワイヤやライディングモード、トラコン、電子調整式サス(ASのみ)など、イッキにハイテク化を図った第3世代(2013~2015年)ほどのインパクトはない。もっともその事実は、すでにFJR1300が熟成の極みに達していることの証明なのだろう。

ヤマハ・FJR1300AS

アグレッシブなルックスとは裏腹に、意外に従順?

ヤマハ・FJR1300AS

 こんなに重くて大きかったっけ……。それが、数年ぶりに対面したFJR1300ASで、市街地を走り始めた僕の第一印象だ。装備重量296kg、軸間距離1545mmという数値を考えれば、そう感じるのは当然かもしれない。でもこのバイクは、さらに巨体なクルーザーやアドベンチャーツアラーより、手強そうなのである。
 おそらくその印象の原因は、クルーザーほど車高が低くなく、アドベンチャーツアラーほどハンドルが高くないことだが、もちろん車高を下げて大アップハンドルを採用したら、FJRではなくなってしまう。何だか微妙なひっかかりを抱えたまま、今回の試乗はスタートすることになった。

ヤマハ・FJR1300AS

 もっとも、高速道路に乗り入れて10分ほど経過した段階で、微妙なひっかかりはどこかに消え失せ、そうそうそう!……という気分に僕はなっていた。改めて言うのも気が引ける話だが、このバイクは高速巡航が素晴らしく快適なのだ。
 もちろん、今どきの大排気量クルーザーやアドベンチャーツアラーでは、快適な高速巡航はごく普通になっているけれど、並列4気筒では珍しい2軸バランサーを採用したエンジンのジェントルなフィーリング、空気を切り裂きながら矢のように突き進んでいく直進安定性は、やっぱりFJRならでは。逆に言うならこのバイクで高速道路を走っても、特に気分は高揚しないのだが、そういう特性だからこそ、心身の疲労をほとんど感じることなく、長距離を淡々と走り続けられるのだろう。

実はコントロールしやすいジェントルマン!

 そして次に向かったワインディングロードで、僕はまたしても、そうそうそう……とつぶやきながら、ニンマリすることとなった。さまざまなカーブが続く道をFJRで走って、何とも嬉しくなったのは、コーナリング中の安定&安心感だ。具体的な話をするなら、まずコーナー進入時のフロントの舵角の付き方とバンクの仕方は、早すぎず遅すぎずの絶妙な設定で、その気になれば任意の角度で止めることも容易。
 

ヤマハ・FJR1300AS

もちろん旋回中の車体に不安な気配は一切ないし、適度な車高の高さが功を奏しているようで、向き替えは至ってスムーズ。しかも立ち上がりでアクセルを開ければ、狙ったラインにきちんと乗りながら、滑らかにして豪快な加速が堪能できるのだ。

 ただしYZF-RシリーズやMTシリーズ、あるいは、トレーサー900やテネレ700など、近年のヤマハ車に慣れ親しんだライダーの中には、刺激が少ないFJRのハンドリングに、物足りなさを感じる人がいるかもしれない。とはいえ僕自身は、他のモデルとは一線を画する穏やかで優しいFJRの乗り味に、ヤマハの懐の深さを感じた。

さぁ旅に出ようか! 長距離走行で威力を発揮!

 さて、基本的な素性の話がメインになってしまったが、第3世代から追加されたライディングモードやトラコン、ASの特徴であるYCC-Sや電子調整式サスなども、現代のFJRを語るうえでは欠かせない要素で、いずれもロングツーリングでは有効な武器になる。そのあたりを認識した僕は、前述したように、FJRが熟成の極みに達していることを実感したのだが、一方で車体の重さと大きさを考えると、このバイクの本当の魅力は、年に数回以上のペースで、1000km以上の長旅に出かける人じゃないと、理解できないのかもしれない……感じたのだった。

著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…