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激戦を繰り広げた2021年シーズン、第4戦を振り返る
GENROQ Web 読者の皆様、こんにちは!レーシングドライバーの三浦愛です。
6月19日(土)~20日(日)に開催されました、全日本スーパーフォーミュラ選手権第4戦の舞台はスポーツランドSUGO(3.704km)。梅雨らしい雨でスタートした予選から青空の下行われたドライコンディション53周の決勝レースは、今回もたくさんの手に汗握るバトルとドラマが生まれました。
多くのレースファンの心を打ったベテラン関口雄飛選手の意地と技
SUGOに潜むと言われる“魔物”の仕業でしょうか、断続的に降り続く雨に翻弄され赤旗続出となった予選。幸い大きなクラッシュは無かったものの、各所でスピンやコースアウトを繰返しながら限界ギリギリ100分の1秒を削り取るドライバーたち。Q1敗退となってしまったドライバーでさえも神技レベルのテクニックを持ち合わせるこの全日本スーパーフォーミュラ選手権で頂点に立つことが至難の業であることは既にご存知いただいているかと思います。
第3戦までは勢いある若手ルーキーの活躍が目立っていた今シーズンですが、第4戦は、涼しい顔をしながらメラメラと熱い闘志を燃やすベテラン勢の技が光るレースとなりました。その代表とも言えるのが、3年ぶりにポールポジションを獲得した#19 carenex TEAM IMPUL 関口雄飛選手です。2番手の#6 DOCOMO DANDELION RACING 牧野任祐選手とのタイム差は僅か100分の4秒足らず・・・。
それは鳥肌もので、彼の苦労や想いを垣間見たとき何か込み上げてくるものさえありました。一般公開された関口選手のオンボード映像を見ても、洗練されたドライビングにプラスして1000分の1秒でも削り取ってやろうという気持ちが大いに伝わってくるものでした。決して勢いやタイミングではない関口選手の意地と技を見た予選。3番手には#39 JMS P.MU CERMO・INGING 阪口晴南選手が続きました。
会場全体が安堵感に包まれた“天才肌”福住仁嶺選手の悲願の初優勝
予選とは打って変わって、晴天に恵まれドライコンディションとなった決勝レース。蒸し暑くドライバーにとっては体力的にもかなりハードな戦いだったのではないでしょうか。そんな中、ポールポジションから好スタートを決め後続をじわじわと引き離しにかかる関口選手の背中を追い続けたのが5番手スタートの#5 DOCOMO DANDELION RACING 福住仁嶺選手です。
抜けないSUGOで上手くスタートを決め、オーバーテイクシステムを巧みに使いバトル中には若干の接触もありましたが絶妙なマシンコントロールでレース序盤に2位浮上。関口選手がタイヤ交換のため先にピットインした後、トップに立った福住選手はクリーンエアー(空気の流れが良い状態)でオーバーテイクシステムも活用しながらタイムを削り、クルーたちの素早いピット作業にも救われ関口選手の前でコースに戻ることができたのです。
その後も危なげない走りで見事、悲願の初優勝を飾った福住仁嶺選手。普段はあまり感情を表に出さない彼が久々に大きな大きなガッツポーズを見せてくれました。勝てる実力を持ちながらフル参戦3年目でようやく手にした勝利を皆が祝福するとともに、会場はどこかホッとしたような雰囲気に包まれました。
2位には7番手スタートからジャンプアップを見せた#64 TCS NAKAJIMA RACING 大湯都史樹選手、3位に関口雄飛選手、4位にはこちらも13番手からジャンプアップの#50 B-Max Racing Team 松下信治選手、5位に福住選手のチームメイトで暫く療養が続いていたにも関わらず復帰初戦で予選2番手タイムを叩き出した牧野任祐選手、6位にはレース後半ものすごい勢いで牧野選手に襲いかかりファステストラップをマークした#16 TEAM MUGEN 野尻智紀選手というオーダーとなりました。
全チームが脅威さえ感じるポイントリーダー野尻智紀選手の強さとは
今季、開幕から2連勝を飾り、第3戦 8位、第4戦 6位と確実にポイントを稼ぎランキング2位に大差をつけポイントリーダーを走る野尻智紀選手。実は、筆者と同じ平成元年生まれでとても小柄な体格にもかかわらず、F1に次いで速いと言われるスーパーフォーミュラでこれだけ力強い走りができる秘訣は何なのか!? と、筆者の率直な疑問をぶつけてみたところ・・・。
「SFはパワステがあるからハンドルは重くないし、スピードやGに対しては慣れも大きいですよ。僕はビビりだし、胃腸も強くなくて、カートでヨーロッパへ渡っていた頃は体力でも負けていました。ここ最近は、なるべく体力を消費しないよう脱力しながらも繊細で瞬発的な反応が必要な時には力を入れて、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう意識しながら走っています」
トレーニングとしては、目や身体をほぐしながらボールを使った動きで反応速度を上げたり、体全体のバランスを取ることを大切にしているそうです。今では日本のトップドライバーとなった野尻選手も並外れた才能を持ちながらトップ選手の影に名を潜めた時期も短くはなかった苦労人。だからこそ、“勝ち”に対する貪欲さも人一倍でその努力が今、実ろうとしているのかもしれません。
タイトル争いでは一歩リードしている野尻選手。全7戦の2021シーズンもいよいよ折り返し地点を過ぎ残り3戦、目が離せません。
REPORT/三浦 愛(Ai MIURA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
【プロフィール】
三浦 愛
12歳よりレーシングカートで数多の勝利を重ね、FIAソーラーカーレースでの優勝も経験。2001年のSL名阪 最終戦 FP3-Fクラスでの優勝を皮切りに、Rotax Maxなどでの参戦を経て2011年にはスーパーFJのシートを獲得し、フォーミュラチャレンジ・ジャパン、全日本F3選手権などでも優勝を果たしている。
【レーススケジュール】
第5戦:8月28日(土)~29日(日) ツインリンクもてぎ
第6戦:10月2日(土)~3日(日) 岡山国際サーキット
第7戦:10月30日(土)~31日(日) 鈴鹿サーキット
【関連リンク】
・全日本スーパーフォーミュラ選手権 公式サイト
https://superformula.net/sf2/