2021年 全日本スーパーフォーミュラ選手権 第5戦レポート

全日本SF選手権振り返り! 第5戦は酷暑を制した野尻選手がポール・トゥ・ウィン 【2021年 第5戦】

2021 全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦
2021 全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦のレースシーン。
8月28日、29日に開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦。残暑厳しいツインリンクもてぎは、熱対策がレースの行方を大きく左右する。今回はレースレポートに加え、現役トップドライバーによるツインリンクもてぎの走り方を現役女性レーシングドライバーの三浦 愛選手が訊く。

激戦を繰り広げた2021年シーズン、第5戦を振り返る

2021 全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦
2021 全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦のレースシーン。路面温度は40度を超え、各チームとも熱対策が大きな課題になった。

GENROQ Web 読者の皆様、こんにちは!レーシングドライバーの三浦 愛です。

8月28日(土)~29日(日)、ツインリンクもてぎ(4.801km)で行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第5戦は路面温度40度超え。何とももてぎらしい残暑の厳しいレースとなりました。

レースは、今大会でも圧倒的な速さを見せた#16 TEAM MUGEN野尻智紀選手とホンダ優勢の中トヨタ勢として大奮闘する#19関口雄飛選手、#20平川 亮選手が所属するcerenex TEAM IMPULの強さが光りました。

ツインリンクもてぎは言わずと知れたストップ&ゴーのサーキット。ツーリングカーほどではないかもしれませんが、フォーミュラカーのブレーキにも大きな負担がかかるため今大会では特別に開口部が大きいダクトでブレーキパーツを冷却することが許されました。とは言え、スーパーフォーミュラで使用されているカーボンブレーキは冷やせばいいってもんじゃない。ブレーキに限らず、熱対策として各チームの細かなノウハウが目に付く大会となりました。

ドライバーにとって「ツインリンクもてぎ」はどんなサーキット?

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2021 全日本スーパーフォーミュラ選手権・第5戦でレポーターを務める三浦 愛選手。ちなみにツインリンクもてぎは得意なサーキットだとか。

皆さん、ツインリンクもてぎが苦手と言うドライバーが多いのはご存知でしょうか? 私はどちらかと言えば得意なほうですが、アップダウンが少なくストップ&ゴーの単調なコースレイアウトは正直つまらない(笑)似たような形状のコーナーが続くため、マシンのセットアップが決まってリズムを掴めればピカイチに速いのですが、決まらない時はほぼ全てのコーナーでタイムを失ってしまうので悪循環になり、どんどんハマっていくという負の連鎖を誘発しやすいサーキットなのです。そんなツインリンクもてぎの“得意なコーナー”“苦手なコーナー”をもてぎの地元選手にお聞きしてみました。

#16 TEAM MUGEN 野尻智紀選手(茨城県出身)

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#16 TEAM MUGEN 野尻智紀選手にインタビューする筆者。ツインリンクもてぎの走り方も訊いてみた。「もてぎは苦手」と言いつつも、圧倒的な強さを見せた。

「全部嫌いです(笑)強いて言えば“S字”が得意な部類に入るかもしれませんが・・・。S字でも1つ目は苦手で2つ目が好きです。もてぎは、止める・曲げる・トラクションのどれかに必ず不満を持つことになるので難しいです。(過去の成績的にも)もてぎは苦手なので今大会はお休みです(笑)。もてぎの地元ドライバーといえば山本選手でしょ!」

#12 ThreeBond Drago CORSE 塚越広大選手(栃木県出身)

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ツインリンクもてぎのは仕方についてインタビューに答えてくれた#12 ThreeBond Drago CORSE 塚越広大選手。その日の調子は3コーナーの走り方で確認することが多いという。

「南ゲートを入ってすぐの上り坂からのカーブが好きです(笑)。ココの走りで決まれば今日はイケてると気分が上がります(笑)というのは冗談ですが、僕は3コーナーの良し悪しで調子を確認することが多いです。4コーナーをアクセル全開でいけるかどうかで判断することもあります。苦手なコーナーは、1~2コーナーです。ブレーキングも重要だし、車速を殺し過ぎずちょうど良いところを掴みにくいコーナーだと思います。もてぎの地元ドライバーは僕より山本選手でしょ!」

お二人が仰るとおり、山本選手がもてぎ地元代表なのは百も承知なのですが、今回はお声掛けできませんでした・・・。取材にお答えていただいた野尻選手、塚越選手の意見は私も同じドライバーとしてわかる気がします。是非、プロドライバーの感覚もご参考にレース観戦やサーキット走行を楽しんでみて下さいね。

予選方式が変更され純粋な速さで競う

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ここまでポイントトップの好成績を上げている野尻選手は、予選でコースレコードを更新するなど好調さをキープ。

19台が出走した今大会は、まず予選方式が変更されました。スーパーフォーミュラの予選はQ1-Q2-Q3とノックアウト方式が採用されており、以前からQ1は2グループに分かれて行っていましたが、今大会は同時に走る台数を減らすためQ2でも2グループに分かれての計測となりました。これによりコース上は常に10台以下での予選アタックとなり、空力命とも言えるスーパーフォーミュラにとってはクリアラップを取りやすく公平で純粋な速さを競えるようになったのではないでしょうか。

そんな初の試みがなされる中、予選で速さを見せていたのはポイントリーダーの野尻智紀選手。もう誰も彼を止められないと思わせるほど圧巻の速さと強さでQ1、Q2でトップタイム、Q3ではコースレコードを更新してのポールポジションを獲得しました。

2番手には、前大会で涙のポールポジションを獲得し好調さを見せている関口雄飛選手。3番手には、ヨーロッパ仕込みのレース運びで私たちを魅了しレースを重ねる毎にレベルアップしている#51 B-Max Racing Team 松下信治選手が続きました。以下、#37 宮田莉朋選手、#64 大湯都史樹選手、#20 平川 亮選手というオーダーとなりましたが、宮田莉朋選手は予選後のエンジン交換により10グリッド降格のペナルティで後方からの追い上げが期待されました。

野尻智紀選手が初タイトル獲得に王手!ランキング争いにも注目!

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#51 B-Max Racing Team 松下信治選手は#20 cerenex TEAM IMPUL 平川 亮選手と熱戦を繰り広げ、見事表彰台をゲットした。

35周(最大レース時間1時間10分)で行われた決勝レースは、ポールポジションからスタートを決め野尻選手がホールショットを奪います。2番手スタートの関口選手はオーバーテイクシステムを駆使し野尻選手のインを伺うも前に出ることはできず、ファステストラップを連発する野尻選手にじわりじわりと離されてしまう展開に。そして、後方8番手争いの#5 福住仁嶺選手、#3 山下健太選手、#12 塚越広大選手、#14 大嶋和也選手がV字コーナーで接触しリタイアを余儀なくされてしまうという波乱のオープニングラップとなりました。

セーフティカーが導入され4周目にレース再開、10周目以降にピットインが可能となったタイミングで多くのチームがタイヤ交換の準備を始め、2番手を走行していた関口選手を筆頭に続々とピットイン。上位陣の順位変動は無かったものの、最後までコース上に留まり続けた平川選手がタイヤの摩耗を感じさせないペースで野尻選手との見えない差をつめてゆきレースを盛り上げてくれましたが、やはり限界がありました。タイヤ交換を終えコースに戻った平川選手は、3番手の松下選手に襲いかかり手に汗握るバトルを繰り広げてくれたものの、ここは松下選手のテクニックが光りました。

順位は変わらず、圧倒的な強さで今季3勝目を挙げた野尻智紀選手が初タイトル獲得に王手をかけ、2位に入った関口選手はベテランの貫禄で着実にポイントを重ねました。そして3位を死守した松下信治選手は1台体制ながらも大健闘、嬉しい表彰台獲得となりました。4位には平川 亮選手、5位に阪口晴南選手、6位に大湯都史樹選手が続き、残り2大会でランキング争いも面白くなってきました。今季は異例のツインリンクもてぎ二連戦ということで、サーキットは同じでも気温・路面温度が下がったところで次戦は誰が台風の目となり野尻選手を止めるのか、お楽しみに!

REPORT/三浦 愛(Ai MIURA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【プロフィール】
三浦 愛
12歳よりレーシングカートで数多の勝利を重ね、FIAソーラーカーレースでの優勝も経験。2001年のSL名阪 最終戦 FP3-Fクラスでの優勝を皮切りに、Rotax Maxなどでの参戦を経て2011年にはスーパーFJのシートを獲得し、フォーミュラチャレンジ・ジャパン、全日本F3選手権などでも優勝を果たしている。

【レーススケジュール】
第6戦:10月2日(土)~3日(日) 岡山国際サーキット
第7戦:10月30日(土)~31日(日) 鈴鹿サーキット

【関連リンク】
・全日本スーパーフォーミュラ選手権 公式サイト
https://superformula.net/sf2/

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