目次
Porsche 911 GT3 RS
×
Michelin Pilot Sport S 5
低温コンディションでの走行に対応

ポルシェがフランスのミシュランと共同で、「ポルシェ 911 GT3 RS(タイプ992)」専用のサーキットにおけるウエット用タイヤ「パイロット スポーツ S 5(Michelin Pilot Sport S 5)」を発表した。サーキット走行に特化しながらも、公道での走行にも対応する。
すべてのコンポーネントに正確な構成と適切なチューニングが求められるポルシェ製スポーツカー。路面との唯一の接点であるタイヤは、なかでも極めて重要なファクターだ。そのため、ポルシェは数十年にわたり、厳選されたパートナーと協力し、使用目的に合わせたタイヤを開発してきた。
ポルシェのGTビークル担当ディレクター、アンドレアス・プロイニンガーは、新型タイヤの開発について次のように説明を加えた。
「今回、気温の低い春から秋にかけても、サーキットでより多くの時間を過ごしたいというパフォーマンス重視のお客様の要望にお応えすることになりました。ウエットコンディションや低い路面温度に対応する今回の新型タイヤは、911 GT3 RSの年間使用日数を大幅に延ばすことになるでしょう」
「パイロット スポーツ S 5」は、911 GT3 RSのフロント用の275/35ZR20、リヤ用の335/30ZR21をリリース。このタイヤは、ニュルブルクリンクのマイスパートに拠点を置くポルシェGTモデルのパフォーマンススペシャリスト、マンタイ・レーシングが独占販売する。
イェルク・ベルクマイスターも開発テストに参加

現在、ポルシェは911 GT3 RS専用にドライ用ハイグリップタイヤ「パイロット スポーツ カップ 2 R(Pilot Sport Cup 2 R)」をはじめとした4種類のミシュラン製タイヤをラインナップしている。今回導入された「パイロット スポーツ S 5」は、高次元のスペックを持つウエット用タイヤとして開発された。
「パイロット スポーツ S 5」の開発は、2022年からフランスのラドゥーにあるミシュラン・ディベロップメント・センターにおいてスタート。ポルシェのブランドアンバサダーを務めるイェルク・ベルクマイスターも、ワークスドライバーとしての長年の経験を活かし、タイヤのパフォーマンス調整に協力している。
ウエットのテストトラックで10秒もタイムが向上

開発目標に挙げられたのは、アクアプレーニングが起こりやすい環境下でのパフォーマンスの最適化である。ウエットコンディション用に設計されたトレッドパターンは、4本の深さ7.4mmセンターグルーブが特徴だ。この深く刻まれたトレッドにより、高速走行時に大量の水を排出できるようになった。
ミシュランのタイヤにおいて開発を担当したマチュー・グレコは、「このタイヤであれば、車両の安定性を向上させ、タイヤが路面との接触を失い始める閾値(アクアプレーニング速度)を引き上げることができるでしょう」と説明する。
コンパウンドに高比率のシリカを配合することで、濡れた路面でのグリップが向上。タイヤがより早く作動温度に達することで、5℃から15℃という極めて低い路面温度でも最適なパフォーマンスを発揮する。この結果、15~30℃の路面温度に対応する従来のドライ用タイヤでは、達成できなかったレベルのグリップと精度を実現することになった。
「パイロット スポーツ S 5」は、特に雨などの厳しい気象条件によって路面温度が低下したサーキットで、高レベルのパフォーマンスを発揮。ミシュラン・ディベロップメント・センター内にある、ウェットコンディション用3bisサーキット(全長2.8km)において、ミシュランのテストドライバーが911 GT3 RSで記録したラップタイムは、「パイロット スポーツ カップ 2 R」装着時より10秒以上も速かったという。