V12スーパースポーツカー「ランボルギーニ アヴェンタドール」とはいかなるクルマだったのか?

ランボルギーニの先代V12フラッグシップ「ランボルギーニ アヴェンタドール」を解説|燃費や維持費、新車・中古車価格

ランボルギーニ最後のピュアV12 NAエンジン搭載モデルとなったアヴェンタドール(写真は最強仕様の「ウルティマエ」)。
ランボルギーニ最後のピュアV12 NAエンジン搭載モデルとなったアヴェンタドール(写真は最強仕様の「ウルティマエ」)。
「ランボルギーニ アヴェンタドール」は、スーパースポーツカーの代表といえる存在だ。6.5リッターV型12気筒自然吸気エンジンをミッドに搭載し、700PSを超えるパワーを4輪で伝達するAWD超高性能スポーツカーである。「ムルシエラゴ」の後を継いで2011年に登場し、およそ10年にわたってランボルギーニのフラッグシップモデルとしての責を担ってきた。2021年に最終モデル「ウルティマエ」を発売し、2022年に幕を閉じたその足跡をまとめよう。

目次

Lamborghini Aventador

ランボルギーニ アヴェンタドールとは

カウンタックの血筋を受け継ぐモデルとして、2011年に登場したアヴェンタドール。
カウンタックの血筋を受け継ぐモデルとして2011年に登場したアヴェンタドール。

V12をミッドに搭載するランボルギーニのフラッグシップスーパースポーツカー「アヴェンタドール」は、スーパーカーの代表格「カウンタック」の血筋を受け継ぐモデルだ。1974年に誕生したカウンタックは1990年まで約16年にわたって生産され、その後「ディアブロ」(1991〜2001年)、「ムルシエラゴ」(2001〜2010年)に引き継がれた。その地位を2011年に継承したのがアヴェンタドールである。ちなみに多くのランボルギーニ車がそうであるように、アヴェンタドールもまた闘牛の名前に由来する。

デビュー当時としては画期的なカーボンシャシーを同社で初めて採用し、AWDは先代のムルシエラゴよりも高度な電子制御システムを搭載した。2016年にマイナーチェンジを受けた後期型となる「アヴェンタドール S」からは、後輪操舵を採用するなどして高い運動性能を実現した。アヴェンタドール S以降は、環境対応のためにアイドリングストップや気筒休止システムなどを装備したことからも、スーパースポーツカーとしてエポックメイキングな1台と言えるだろう。

2022年に生産が終わり、ランボルギーニ ブランドにおけるフラッグシップの座は翌年に登場した「レヴエルト」に引き継がれた。

ランボルギーニ アヴェンタドールの外観・内装

スーパースポーツの代表格であるランボルギーニ アヴェンタドールの外観と内装を紹介しよう。ひと目でわかるアイコニックな外観とその内装もまたエキゾチックな仕立てとなっている。

外観:アグレッシブさと美しさが機能をもつ独自の世界

ランボルギーニの大きな魅力のひとつは、アグレッシブでありながら美しさも感じさせる巧みなデザインだ。さらにランボルギーニのデザイン哲学である「形態は機能に従う(Form Follows Function)」に則り、デザインがエアロダイナミクスなどパフォーマンスにおいても何らかの意味をもっている。これがランボルギーニの矜恃である。

ドアの開閉方法も、外観の特徴を際立たせる重要な要素となる。鋏のように開くことから“シザーズドア” と呼ばれる独特の構造は、駐車場でもスーパーカーとしての圧倒的な存在感を演出する。同時に、長く分厚いドアを横に開けるよりも、やや外側に向かって上方に開くことで乗降性を高める機能上のメリットもある。

内装:最新テクノロジーをいち早く採用

コクピットと呼ぶに相応しいドライバーオリエンテッドなインテリアを持つ。恐ろしく幅広のセンタートンネルにスイッチ類がレイアウトされる。現在の水準からすると数の多さが目立つが、航空機のコクピットを思わせるような演出はドライバーの気持ちを掻き立てるだろう。

ドアやシートなどにカーボンファイバー素材を多用し、軽量化とデザイン性を両立している。また、センターディスプレイに加え、インストルメントパネルにTFT液晶ディスプレイをいち早く採用したことも特筆すべき点だ。

ランボルギーニ アヴェンタドールのサイズ

ランボルギーニ アヴェンタドールは、サイズ面でも “まさにスーパーカー”。ワイド・アンド・ローのボディプロポーションと、ドライバーを包み込むような室内はランボルギーニらしさの象徴だ。

ボディサイズ:ランボルギーニの伝統とも言えるワイド・アンド・ロー

全長4780mm、全幅2030mmという非常にワイドなプロポーション(「LP 700-4」)に加え、わずか1136mmという全高がランボルギーニ アヴェンタドールの独特なディメンションを生み出している。2011年3月に登場以来およそ12年にわたるモデルライフの中で様々なバリエーションが生み出されたが、全高と2700mmのホイールベースは基本的に変わっていない(モデル末期の「SVJ」や「LP 780-4 ウルティマエ」などは全幅2098)。

室内スペース:“広々とした”キャビンに最先端技術とイタリア職人の技を融合

スーパーカーが居住性を犠牲にしたというのは過去の話になりつつある。ランボルギーニ アヴェンタドールでは、居住性向上のためキャビン空間が先代のムルシエラゴよりも拡大されている。主にルーフ形状を最適化することによって、空力効率を犠牲にすることなく車室内のスペースが広げられている。「LP 700-4」のワールドプレミアの際に「上質な素材とイタリアならではのクラフツマンシップに、最先端のテクノロジーと充実した装備を融合した広々としたインテリア」とランボルギーニが表現している。

ランボルギーニ アヴェンタドールの走行性能・燃費性能

ランボルギーニ アヴェンタドールの走行性能は、毎年のように投入されたニューバージョンで進化を続けた。当初は700PSだった新開発のV型12気筒エンジンは、最終的に780PSに達した。一方で電動アシストがつかない自然吸気エンジンでは燃費性能の向上には限界があったようだ。

走行性能:700PSで登場し、10年を経て780PSにパワーアップ

アヴェンタドールには、新開発の6498cc V12エンジンが搭載された。2011年にデビューしたLP 700-4では、モデル名からもわかるように最高出力700PS(515kW)を発生した(最大トルク690Nm/5500rpm)。毎年のようにバリエーションが追加され出力もアップし、2021年に合計600台限定で登場したLP 780-4 ULTIMAE(ウルティマエ)と同ロードスターでは、最高出力が780PSまで引き上げられた。

燃費性能:マルチシリンダーの大排気量NAでは燃費改善は頭打ち

LP 700-4の燃費性能は17.2L/100kmとされており、リッター当たりに直すと約5.8kmになる。2015年3月に発表された「LP 750-4 スーパーヴェローチェ」は、750PSにパワーアップしながらも16.0L/100 km(6.3L/km)と燃費向上に成功している。2016年のマイナーチェンジを受けた「S」ではアイドリングストップと気筒休止システムが採用されたが、燃費は16.9L/100 km(約5.9km/L)とわずかに低下している。2018年に登場した「SVJ」では最高出力770PSと大幅なパワーアップが図られたため、燃費は19.6L/100km(約5.1km/L)となった。

ランボルギーニ アヴェンタドールの新車時価格・維持費

最終モデル「アヴェンタドール LP 780-4 ウルティマエ」(クーペ)は350台の限定生産。
最終モデル「アヴェンタドール LP 780-4 ウルティマエ」(クーペ)は350台の限定生産。

ランボルギーニ アヴェンタドールの新車時の価格は、初期モデルが約4000万円から。最終仕様のLP 780-4 ウルティマエのロードスターはほぼ6000万円だったが、世界で250台(クーペは350台)の限定モデルだったこともあって即完売になった。

新車価格:約6000万円の最終仕様は即完売

2011年のランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4発売時、日本でのメーカー希望小売価格(消費税込)は約4100万円であった。2015年に登場のLP 750-4 スーパーヴェローチェはクーペが4795万5883円、ロードスターが5238万9883円と、パワーアップと軽量化によって価格が大幅に引き上げられた。2021年に合計600台が生産された最後のモデルであるLP 780-4 ウルティマエは、それぞれ5454万3088円、5986万4236円という高価格だったが日本への割り当ては即完売した。

維持費:アヴェンタドールは年間およそ150万円は必要か

6.5リッターV12エンジンを搭載するランボルギーニ アヴェンタドールの場合、排気量に応じて課税される自動車税が最高税率となり年間10万円を超える。12気筒エンジンにはエンジンオイルも13L(アヴェンタドールSの場合)必要となる。任意保険やメンテナンスに必要なパーツ代、作業量なども高価なため、あくまで概算だが年間の維持費として150万円程度は必要と考えられる。またリアタイヤは335/25という特殊なサイズで、ネット通販でも1本10万円は超えるようだ。以下、概算をまとめた。

ランボルギーニ アヴェンタドール モデル解説

ランボルギーニ アヴェンタドールは、V12気筒エンジンを搭載するフラッグシップモデルとして2011年3月に登場。2016年のマイナーチェンジを経て、2018年にはSVJへと進化した。2022年9月、ウルティマエの生産が終了し、10年以上にわたる歴史の幕を閉じた。

ランボルギーニ アヴェンタドール SVJ

SVJはアヴェンタドール最強のモデル(当時)として2018年8月に発表され、900台が限定生産された。“SV” はイタリア語の “Super Veloce” = Super Fastを意味し、 “J” は “Jota(イオタ)” からとったものだ。パワーアップと軽量化が施され、パワーウェイトレシオは1.98kg/PSに達し、0→100km/h加速2.8秒を誇る。空力性能にも磨きが掛けられ、スーパーヴェローチェ比でダウンフォースを40%増加させながらドラッグは1%減少している。1周20.6kmのニュルブルクリンク ノルドシュライフェで6分44秒97を記録し、量産車による当時のラップレコードを更新するなど、その名に恥じない「超高速」バージョンだ。

ランボルギーニ アヴェンタドール SVJ ロードスター

2019年3月にスイスで行われたジュネーブモーターショーで発表された800台限定生産モデル。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のルーフトップは、キャビン内のレバー操作で簡単に取り外すことができる。6.5リッターV12自然吸気エンジンのサウンドを堪能できるよう、リヤウインドウをコクピット内のスイッチ操作で下げることができる。オープン化に伴って重量は50kg増えており、その結果0→100km/h加速もクーペの2.8秒からロードスターでは2.9秒となっている。ランボルギーニのフラッグシップモデル、それもラグジュアリーなオープンモデルらしく、発表時の価格は5700万円(消費税別)を超えた。

ランボルギーニ アヴェンタドール LP 780-4 ウルティマエ(クーペ)

ウルティマエはアヴェンタドールの集大成と言える。SVJで最高出力770PSに達したV型12気筒自然吸気エンジンから、さらに10PSを絞り出してシリーズ最強の780PSを誇る。最終モデルとなった “Ultimae(=究極)”は、2021年7月にグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでお披露目された。アヴェンタドールからフラッグシップの座を引き継いだレヴエルトは3基のモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドシステムを採用しているため、純粋なV12自然吸気エンジンのランボルギーニとしてはアヴェンタドールが最後のモデルと言える。クーペボディは、およそ5500万円で350台が限定販売された。

ランボルギーニ アヴェンタドール LP 780-4 ウルティマエ ロードスター

アヴェンタドールのロードスターは、カーボンファイバー製のルーフトップが取外しできる構造を採っている。オープンエアを楽しむ代償として、ウルティマエではクーペの乾燥重量が1550kgなのに対しロードスターが1600kgと50kg増えている。0-100km/h加速も+0.1秒の2.9秒となっているが、ロードスターを選ぶユーザーにとって不満はないだろう。価格もほぼ6000万円と”スーパー”だが、限定250台は即完売となった。クーペ、ロードスターともに、エアロダイナミクスと冷却性能を追求した専用バンパーや大型のディフューザーを組み込んだ軽量リヤバンパーなどが採用されている。基本構造体は他のアヴェンタドールと同様にCFRP製のモノコックだが、カーボンパーツを多く使用して軽量化を図っている。

ランボルギーニ アヴェンタドールの新車・中古車価格

2011年登場の初期モデルLP 700-4の中古車は3,500万円前後から見つかりそうだ(写真は2016年にマイナーチェンジを受けた「S」)。
2011年登場の初期モデルLP 700-4の中古車は3,500万円前後から見つかりそうだ(写真は2016年にマイナーチェンジを受けた「S」)。

ランボルギーニの中でもフラッグシップの12気筒エンジン搭載モデルだけあって、アヴェンタドールの新車価格は2011年の初期モデルでも5,000万円を超えていた。中古車の場合も、ウルティマエやSVJは年式が新しいことに加えて台数が限られるため、新車時よりも高値がついているケースが多いようだ。初期モデルのLP 700-4(2011年~2012年式)であれば、3,500万円前後から見つかる。

ランボルギーニ アヴェンタドールについて多い質問

アヴェンタドールのパワートレインはターボも電動アシストも追加されることなく、最後まで "ピュア" なV12 NAエンジンを貫いた。
アヴェンタドールのパワートレインはターボも電動アシストも追加されることなく、最後まで “ピュア” なV12 NAエンジンを貫いた。

以下では、ランボルギーニ アヴェンタドールについて多い質問・疑問に回答する。

Q. アヴェンタドールは、なぜターボ化されなかったのか?

ランボルギーニは、加速フィーリングやサウンドなどの面で未だに自然吸気エンジンが最高のものと考えられる。特にバンク角60度のV型12気筒は、等間隔爆発によってもたらされるバランスの良さが完璧なエンジンだという。ターボチャージャーはエンジン本来の自然な音を阻害するとしてSUVのウルス以外では採用していない。アヴェンタドールの後継モデルであるレヴエルトでは、自然吸気V型12気筒エンジンを維持しながらハイブリッド化によって環境規制への対応を行っている。

Q. 後継モデルのレヴエルトとの大きな違いは?

アヴェンタドールが最後まで純粋な自然吸気エンジンにこだわったのに対し、2023年に登場したレヴエルトはプラグインハイブリッド化された。V12エンジンにモーター(3基)を組み合わせるという、新しい時代のスーパーカーへと進化した。新開発の6.5リッターV12自然吸気エンジンは、高回転化が図られており、最高出力825PS(607kW)/9250rpm、最大トルク725Nm/6750rpmを発生し、モーターを含めたシステム出力は1029PS(746kW)となっている。これに対してアヴェンタドール LP 780-4 ウルティマエのエンジンは780PS(574kW)/8500rpm、720Nm/6750rpmである。

Q. なぜDCTを採用しなかったのか?

アヴェンタドールは「インディペンデント・シフティング・ロッド」(ISR)というシングルクラッチ式の7速自動変速機(RMT)を採用。これは、軽量化と同時にシフトショックを敢えて演出することでスーパーカーらしさを重視したからと考えられる。F1のトランスミッション技術から派生した「シングルクラッチ+電子制御油圧アクチュエーター+複数のシフトロッド」という構造で、主に軽量コンパクトな設計が可能というメリットがある。。

ランボルギーニ アヴェンタドールの購入方法

新車での販売は終了しており、正規ディーラーや専門業者から中古車を購入することになる。
新車での販売は終了しており、正規ディーラーや専門業者から中古車を購入することになる。

ランボルギーニ アヴェンタドールは2022年9月に生産が終了しており、新車での購入はできない。東京、横浜、大阪、神戸にはランボルギーニ正規代理店が運営するショールームがある。他店舗の所有も含め、中古車の在庫状況を問い合わせるのがお勧めだ。また、輸入車を専門とする中古車専業店での扱いもあるため、インターネット等で検索するのもいいだろう。

ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒のレヴエルトとアヴェンタドールSVJを比較。

ほぼ十年に一度のランボルギーニフラッグシップ交代劇「アヴェンタドール」と「レヴエルト」を比較試乗

ランボルギーニミッドシップ縦置き12気筒の系譜はレヴエルトに引き継がれた。パワートレインはPHVという大きな進化を遂げたが、それは走りにどのような影響をもたらしたのか。アヴェンタドールSVJとの比較を通して明らかにしていこう。(GENROQ 2024年10月号より転載・再構成)

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著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…