大容量バッテリーを組み合わせた「メルセデスAMG E 53 ハイブリッド4マティック+」に試乗

モーターと直6のマリアージュに脱帽「メルセデスAMG E 53 ハイブリッド 4マティック+」が魅力的すぎる理由

Eクラスのトップモデルに君臨するメルセデスAMG E53 4マティック+のセダンとワゴンに試乗。その実力をリポートしよう。
Eクラスのトップモデルに君臨するメルセデスAMG E53 4マティック+のセダンとワゴンに試乗。その実力をリポートしよう。
メルセデスの中核セダン「Eクラス」にトップグレードが追加された。3.0リッター直6ターボにモーターを組み合わせることでシステムアウトプット585PS/750Nmを実現。大容量バッテリーを搭載したことで一充電走行距離、約100kmを実現しているのも魅力だ。今回はセダンとステーションワゴンを用意し「E 53 ハイブリッド」の魅力に迫ってみた。(GENROQ 2025年4月号より転載・再構成)

Mercedes-AMG
E 53 Hybrid 4Matic+
E 53 Hybrid 4Matic+ Stationwagon

抜け目のないセダンの仕上がり

セダンのE53ハイブリッド4マティック+。大容量バッテリーを搭載することで一充電あたり100kmの走行距離を実現した。
セダンのE53ハイブリッド4マティック+。大容量バッテリーを搭載することで一充電あたり100kmの走行距離を実現した。

新型Eクラス初のAMGバージョンは、一部でウワサされていた「E 63」ではなく「E 53」として登場した。近年のAMGは、エントリーモデルともいえる43や53がISG=マイルドハイブリッドで、最強の63がプラグインハイブリッド(PHV)という棲み分けを原則としている感があった。しかし、今回は53ながらPHVとなる。加えて、より強力なE 63の新型が今後あるのか定かでないことも、スクープ記事での車名が63と53で混乱した理由だろう。

というわけで、この新型E 53 ハイブリッド 4マティック+は、AMGのPHVではあるが、先に発売されたC 63やS 63のように「Eパフォーマンス」を名乗らない。Eパフォーマンスはリヤにデフやモーター、2速ATなどを一体化した専用ユニットを置くが、E 53 ハイブリッドでは、モーターをエンジンと9速ATの間にサンドイッチする。このレイアウトは、メルセデスでは通常のFR系PHVに使われるもので、E350eなどとも共通する。

アクティブなライフスタイルには断然ステーションワゴン

スタイリッシュなワゴンのE53ハイブリッド 4マティック+ステーションワゴン。
スタイリッシュなワゴンのE53ハイブリッド 4マティック+ステーションワゴン。アクティブなライフスタイルに向いている。

新型E 53 ハイブリッドのエンジンは先代E 53にも搭載されていた3.0リッター直列6気筒ターボで、最高出力を14‌PS高めた449PS(最大トルクは560Nm)としたうえで、163PS/480Nmのモーターを組み合わせる。システム最高出力/最大トルクは通常585PS/750Nmだが、サーキット用の「レーススタート」を作動させると、出力が612PSまで引き上げられる。この612PSなる数値は、奇しくも(いや、たぶん意図的に)V8ツインターボを積んでいた先代E 63 Sと同じだ。

こうして新型E 53 ハイブリッドのセダンとステーションワゴンを同時に並べると、近い将来にさらに上級のAMGが出るかはともかく、「これがトップオブEクラスです」といわれても納得できるだけのオーラは漂う。そのオーラの源泉は左右で10mmずつ幅広となったフロントフェンダーだ。これは最近のAMGではお約束のディテールになりつつあるが、なかでもEクラスのフロントオーバーフェンダー姿は、あの500Eを彷彿とさせて、筆者のような中高年には胸アツというほかない。

612PSのシステム最高出力を、油圧多板クラッチを使った4WDと20インチのパイロットスポーツ4Sで路面に伝えるE 53 ハイブリッドは、セダンだと0-100km/hを3.8秒で駆けぬける。同じ612PSの先代E 63 Sは3.4秒だが、2.4t台というウエイトを考えればしかたないか。いずれにしても、すこぶるつきの駿足なのは違いない。

第3世代に進化したMBUXの使い勝手は最高

新型E 53 ハイブリッドは、21.2kWhのリチウム電池を積んでおり、満充電ならWLTCモードで100km前後のEV走行が可能という。電池が底をついたり、負荷が高まったり、あるいはスポーツモード以上にすると、エンジンがかかる……のだが、ある意味で、この瞬間がE 53 ハイブリッドのハイライトのひとつかもしれない。モーターに直4やV8のエンジン振動が加わると、良くも悪くも異物感があるが、完全バランスの直6エンジンは、モーター回転と溶け合って、まるで一体化したかのように滑らかに回るのだ。

ドライブセレクトを過激なモードに移行させると、エンジン音や変速スピードは高まるのだが、荒々しさとは無縁のまま。そんな究極の洗練を味わわせてくれる新型E 53 ハイブリッドは、まさに新世代のAMGかもしれない。それにしても、直6エンジンとモーターの親和性の高さにはあらためて驚かされる。

電子制御エアサスとアダプティブダンパー、そして最大2.5度まで切れるリヤアクスルステアリングを組み合わせたシャシーも洗練の極みだ。ダンピングが柔らかくなるコンフォートモードはまろやかな肌ざわりで、最も硬質なスポーツプラスにしても、ワインディングでちょっとカツを入れればしなやかそのものだ。

……とはいえ、ただ快適な旦那セダンになっていないのがAMG。ワイド化されたトレッドの恩恵もあってか、ステアリングの利きは正確かつ強力そのもの。さらに逆位相と同位相を使い分けるリヤアクスルステアリングで、タイトなつづら折れは軽快に、高速コーナーはピタリと路面に張りつく。正直いって、612PS程度(?)で、このシャシーの盤石性を揺るがすのは簡単ではない。

必要にして十分な荷室スペース

セダンとステーションワゴンでは、確かにセダンのほうが動きは少しシャープで、リヤの抑えも効いている感はある。しかし、それはあくまで僅差。ボディ形式の差を考えると、逆にワゴンの優秀性に感心するくらいだが、これはフロア下にリチウムイオン電池を搭載することで、ボディ後半の剛性が通常よりかなり高いからかもしれない。そのかわり、セダンもワゴンも荷室フロアがだいぶ高くなっているが、使い勝手の些細な犠牲より走りを優先する態度は、AMGとしてはまったく正しい。

AMGに、ある種のアンバランスが生み出す昔ながらの迫力や獰猛さ、あるいは激辛味を求めるなら、この新型E 53 ハイブリッドはちょっと物足りないかもしれない。しかし、このどこまでもストレスフリーの速さは新感覚にして、技術的にもかなりすごいと思う。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2025年4月号

SPECIFICATIONS

メルセデスAMG E53ハイブリッド4マティック+

ボディサイズ:全長4970 全幅1900 全高1475mm
ホイールベース:2960mm
車両重量:2430kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2996cc
最高出力:330kW(449PS)/5800-6100rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/2200-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40R20 後295/35R20
車両本体価格:1698万円

メルセデスAMG E53ハイブリッド4マティック+ステーションワゴン

ボディサイズ:全長4970 全幅1900 全高1490mm
ホイールベース:2960mm
車両重量:2470kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2996cc
最高出力:330kW(449PS)/5800-6100rpm
最大トルク:560Nm(57.1kgm)/2200-5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40R20 後295/35R20
車両本体価格:1726万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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