富士スピードウェイで「ランドローバー レンジローバースポーツ SV」に試乗した

サーキット満喫系SUV「ランドローバー レンジローバースポーツ SV」に富士スピードウェイで試乗【動画】

富士スピードウェイのショートコースで「ランドローバー レンジローバースポーツ SV」に試乗。
富士スピードウェイのショートコースで「ランドローバー レンジローバースポーツ SV」に試乗。
「ランドローバー レンジローバー」ファミリーの中でスポーツ性をより一層高めた「レンジローバースポーツ」。その中でも特別なモデルを意味する「SV」を冠する「レンジローバースポーツ SV」の実力を確かめた。試乗会場はなんと富士スピードウェイである。

Range Rover Sport

ラインナップの頂点に位置するグレード

ピットレーンに並ぶ「レンジローバースポーツ SV」。前の車両は比較試乗用の「レンジローバースポーツ D300」だ。
ピットレーンに並ぶ「レンジローバースポーツ SV」。前の車両は比較試乗用の「レンジローバースポーツ D300」だ。

4WD専業メーカーのランドローバーには3つのサブブランドとして「レンジローバー」「ディフェンダー」「ディスカバリー」が用意される。それぞれにラグジュアリー、オフローダー、ファミリーカーと明確な役割が与えられ、そのラグジュアリーラインかつ主力たるレンジローバーに4モデルがラインナップされる。その中でもっとも高い動力性能が与えられ、スポーツ性能を高めたモデルがレンジローバースポーツである。

2022年5月にワールドプレミアされた3代目レンジローバースポーツは、現行型レンジローバーと同じく縦置きエンジン用のプラットフォーム「MLA-Flex」を採用。パワートレインは、BMW製の4.4リッターV型8気筒ツインターボ、3.0リッター直列6気筒ツインターボのガソリン2機種に、3.0リッター直列6気筒ツインターボディーゼル1機種の3機種のエンジンが用意され、トランスミッションは全車8速ATが組み合わせられる。

そんなレンジローバースポーツラインナップの頂点に位置するグレードが、今回試乗した「レンジローバースポーツ SV」である。そしてその試乗会場は富士スピードウェイのショートコースであった。SUVの試乗会がサーキットで行われることは異例と言えるが裏を返せばそれだけの性能を持っているとも言える。

スーパースポーツカーをも凌駕する性能

レンジローバースポーツSVは全長4970mm(標準車比+10mm、以下同)、全幅2005mm、全高1815mm(-5mm)、ホイールベースはなんと3000mm(+5mm)という堂々たるボディを持っている。ホイールベース3mは、ひと昔前ならショーファーが運転するサルーンの数値だったと承知しているが、それだけ大柄なSUVということである。なお全高は日本の諸元表では表記上5mmだが、本国の1mm単位の諸元では10mm低くなるそうだ。

SVは前述の4.4リッターV8ツインターボに8速ATを組み合わせるトップグレードで、48Vマイルドハイブリッドによる車体制御が新型の技術的トピックとなっている。ピットにスタンバイされたグレーの個体からは、すでにただならぬオーラが漂っている。レンジローバー史上最強となる最高出力635PSを誇り、最大トルクは750Nmに達する。0-100km/h加速はスーパースポーツカーをも凌駕する3.8秒(軽量化オプション選択時)だという。

だが、標準のレンジローバースポーツとの外観上の違いは慎ましやかだ。フロントバンパー左右の開口部、フロントフェンダーの装飾、エキゾーストパイプが丸型4本出しとなっていることぐらいなので、見る人が見なければわからないというのは、羊の皮を被った狼が好きな好事家にはエモいと映るのではなかろうか。これも見る人が見ないとわからない23インチのカーボンセラミック製ホイールを装着。これだけで4輪36kg軽量化され、さらにカーボンセラミック製ブレーキシステムで34kg、その他トータルで76kg車両重要を削減できたという。それでも車重が2570kgあるのは、電動化の波に押されてマイルドハイブリッド化されていることもあるだろう。

なお今回試乗したのは、レンジローバースポーツSVの中でも限定車である「レンジローバースポーツ SV エディション2」だ。“2”という車名からもわかるようにエディション1の後継車である。エディション1は、2023年のSVデビュー時にランドローバーの指名を受けた顧客のみが注文する権利を得られる特別限定車だったが、このエディション2も2025年モデル限定グレードとして導入された希少車だ。

テールが流れるSVモード

ピットロードに並ぶSVに乗り込む。ゲーミングチェアで有名なSUBPAC社と共同開発したボディ&ソウルシートが、強烈な存在感を主張するが、室内も標準仕様と大きな違いはない。全体にブラックセラミックフィニッシュ仕上げとしたほかは、ステアリングのホーンパッド下にSVの性能をフルに発揮するドライビングモード「SVモード」が備わるくらいだろうか。ドライビングモードは「SV」「ダイナミック」「コンフォート」「コンフィグ」「オート」「オフロード」の5種類となっているが、今回はサーキットなので試すのはSVとダイナミックとした。

装着されるタイヤはミシュラン・パイロットスポーツオールシーズン4で、SUVが標準装着するのは初めてだそうだ。サイズはレンジローバー史上初となる前後異なるミックスサイズでフロント285/40R23、リヤ305/35R23となっている。この辺りもやる気が滲み出ている。

ピットロードを下って、まずはダイナミックモードでコースイン。7250rpmまで回るV8ツインターボエンジンは、サウンドが一段と獰猛さを増して、2.5tの車重を確かに軽やかに舞わせてくれる。これでも十分にスポーティなSUVとして驚くべき走行性能を示してくれるのだが、さらに驚いたのはSVモードに入れてからだ。

ダイナミックモードの上に位置するSVモードでは、15mm車高が下がり、ステアリング、トランスミッション、スロットルレスポンス、エキゾーストノート、サスペンションなどの各種セッティングがスポーツ走行に最適化される。メインストレートが下りのショートコースは、最初のコーナーで下りながらS字カーブを左右に切り返す。ここでSVは驚くほどテールが流れるのを許容してくれる。テールの振り出しはホイールベースが3mなこともあり、トンボが止まりそうなくらいに穏やか。その運転感覚は熟れたスポーツカーのようだ。

驚異的なコーナリング性能の理由

最初のコーナーは下りながらS字カーブを左右に切り返す。ここでSVは驚くほどテールが流れるのを許容してくれる。
最初のコーナーは下りながらS字カーブを左右に切り返す。ここでSVは驚くほどテールが流れるのを許容してくれる。

数年前までSUVのような重心の高いクルマは、前輪をあまり利かせないようにして横Gを高めないような工夫をしていた。これは横転の危険を排除するためだと聞いたことがあるが、このレンジローバースポーツSVは、SUVとしては十分すぎるほどにリヤを振り回して走れる。ステアリング操作に対するフロントの反応はスポーツカーのようだ。もちろんこれは戦闘態勢とも言えるSVモードの話で、ダイナミックモードにしてスタビリティコントロールシステムのVSCがオンの時は、しっかりとブレーキ制御が働き、テールが流れるようなことはないので心配無用だ。

一方で自動車メーカーとしての良心を感じる場面もある。VSCにはオンとオフの間にトラックモードがあるが、面白がって大きくリヤを振り出そうとすると、お仕置きモードのようにしばらくVSCが解除できなくなる。こういった制御が入って初めて2.5tのSUVを運転しているということを思い出させてくれる。

この驚異的なコーナリング性能は、シャシー性能を統合制御するインテグレーテッドシャシーコントロール(ICC)をはじめ、48Vシステムで駆動するロール制御システム、後輪操舵、トルクベクタリング、アクティブディファレンシャルといった先進の制御デバイスや、SV専用のリヤサブフレームサスペンションリンクや6Dダイナミックエアサスペンションが採用されたことが大きい。ロール方向はこれまでにも他社で実績があるが、ピッチ方向は初の実用化だという。

もちろん全車にエアサスペンションが標準装備で、今回のエアサスには「スイッチャブルボリュームエアスプリング」と呼ぶ新しい空気ばねを採用している。エアバッグ内の圧力を変化させることで、より広い範囲での適切な制御を可能としているという。

特別なSUVを実感

SVによるサーキット走行直後に3.0リッター直6ディーゼルの「D300」に比較試乗できたが、その挙動はまったく異なっていた。タイヤがピレリ・スコーピオンMSということでM+S志向が強くなっていることもあるが、フロントのグリップやVSCの制御は、やはり過大な横Gが出ないようになっていて、従来のSUVの考え方の域を出ていなかった。その比較を通じて、このSVがどれだけ特別なSUVなのか実感できた。こんなSUVにお目にかかったことはない。なおD300はオフロードでも試乗できたので、別記事でその印象をお伝えしたい。こちらはSUV本来の悪路走破性が超一流であることを確認済みだ。

最新レンジローバースポーツ SVは、ランドローバーの特殊車両部門たるスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)チームの手になる、驚くべきスポーツ走行の才能を持っていることが体感できた。一方でSUVのパフォーマンスは果たしてどこまで高められるのか、空恐ろしくなった試乗会でもあった。

PHOTO/市健治(Kenji ICHI)

ランドローバー・レンジローバー・スポーツSの走行を映像でチェック!

SPECIFICATIONS

ランドローバー・レンジローバー・スポーツSVエディション2 P635

ボディサイズ:全長4970×全幅2025×全高1815mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2590kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:467kW(635PS)/6000〜7000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800〜5855rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ:前285/40R23 後305/35R23
0→100km/h加速:3.8秒
最高速度:290km/h
車両本体価格:2474万円

「レンジローバースポーツ SV EDITION TWO」に用意された4種類のキュレーション、「ブルーネブラ」。

レンジローバースポーツの限定仕様第2弾「SV EDITION TWO」が登場「23インチカーボンホイールも」

ジャガー・ランドローバーは、ハイパフォーマンスSUVの限定仕様車「レンジローバスポーツ SV EDITION TWO」を発表した。レンジローバースポーツ SVの発表時に導入された「EDITION ONE」に続き、専用内外装を採用。特別色とインテリアを組み合わせた4種類の専用キュレーションをラインナップする。

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…