グランドツアラーの最高峰「ベントレー コンチネンタルGT」とはいかなるクルマなのか?

ラグジュアリーグランドツアラーの最高峰「ベントレー コンチネンタルGT」を解説|燃費や維持費、新車・中古車価格

ラグジュアリーとスポーツを最高レベルで融合した英国グランドツアラーの代表「ベントレー コンチネンタルGT」。
ラグジュアリーとスポーツを最高レベルで融合した英国グランドツアラーの代表「ベントレー コンチネンタルGT」。
「ベントレー コンチネンタルGT」は、ラグジュアリーとスポーティを兼ね備えた“ベントレーらしいモデル”といえる。GTカーの代表格であると同時に、最も販売台数が多いモデルとしてベントレーブランドの中心的存在だ。現行モデルでは6.0リッターW12エンジンを廃止し、新たに4.0リッターV8ツインターボにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットを搭載する。2024年に誕生した第4世代を中心に、ラグジュアリーGTの最高峰コンチネンタルGTを紹介しよう。

ベントレー コンチネンタルGTとは

ベントレーの近代化を象徴するモデルとして、2003年に初代が登場した「ベントレー コンチネンタルGT」は、英国を代表するラグジュアリー・グランドツアラーである。1998年にフォルクスワーゲングループの傘下に入ると、その技術をもとに6.0リッターW型12気筒ツインターボエンジンと4WDシステムを搭載し、圧倒的な高性能と極上の快適性を両立するGTカーとして誕生した。

第4世代となる現行型ではユニークなW型エンジンが廃止され、4.0リッターV8ツインターボエンジンにモーターを組み合わせた、プラグインハイブリッドパワートレインを採用している。システム合計で782PS/1000Nmを発揮する「ウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド」と、680PS/930Nmの「ハイパフォーマンス・ハイブリッド」と呼ばれる2つの仕様がある。ちなみに、W12の標準仕様は635PS/900Nm、同エンジンの上位グレード「スピード」向けエンジンは659PS/900Nmというパフォーマンスだった。

オープンカータイプのコンチネンタルGTC

コンチネンタルGTには、初代から「GTC」と呼ばれる電動開閉式のソフトトップを備えたオープンモデルが用意されている。グランドツアラーとしての快適性やラグジュアリー感を保ちながらも、オープンエアドライビングを堪能することができる。利便性も犠牲にすることなく、大人2人分の荷物を積めるトランクスペースを確保している。ソフトトップは約19秒で開閉可能とされており、突然の天候変化にも慌てることなく対応できる。また、走行中でも50km/hまでは作動する。

ベントレー コンチネンタルGTの外観・内装

最上級のラグジュアリーとハイパフォーマンスを両立したベントレー コンチネンタルGTの外観と内装を紹介しよう。現行モデルのエクステリアデザインは伝統と革新を融合し、ベントレーらしい存在感を放っている。内装はクラフトマンシップ溢れる緻密なしつらえで、長距離ドライブを優雅かつ力強くこなすのにふさわしい空間を演出している。

外観:伝統と革新、力強さと洗練を高次元で融合

ベントレー コンチネンタルGTは英国式のラグジュアリーGTを体現するデザインといえる。外観は、長いボンネットと後方に配置したキャビンによって、伝統的なグランドツアラーの理想形である流麗さを表現している。その一方で、後輪駆動的なバランスを強調することで、堂々としたスタンスを醸し出している。力強く張り出したホイールアーチとともに、圧倒的な存在感も放っている。リアエンドでは、楕円形のテールライトとデュアルエキゾーストが端正に並び、優雅さと躍動感を表現している。

最新モデルで最も特徴的なのはフロントエンドだろう。初代から続いていた4灯式ヘッドライトが、2灯式に変更された。これは、2020年に登場した少量生産モデルの「バカラル」や2022年の「バトゥール」同様、ベントレーの新しいデザイン哲学に基づいている。楕円形のシングルヘッドライトは、大型ネコ科動物が獲物を狙うときの眼差しから着想を得たという。

内装:すべてに“本物の良さ”を感じさせる

ベントレー コンチネンタルGTの内装は手作業で製作される。シー ト、ドアの内張り、シフトレバー、ステアリングホイールなどを覆うレザーは、熟練の職人が手縫いを行う。モダンなエッセンスを採り入れた立体感のあるダイヤモンド形状のキルティングパターンが、各モデルの性格に合わせてシートやドアなどに採用されている。そのほか、高品質なメタルとウッドを組み合わせることで、「見るもの、触れるものすべてに本物の良さを感じさせる」というベントレーの世界観を実現している。

ベントレー コンチネンタルGTのサイズ

ベントレー コンチネンタルGTは、サイズ面でもトップクラス。2m近いワイドなボディプロポーションが、2ドアクーペのスポーティかつ流麗な美しさと、堂々とした佇まいを両立させている。

ボディサイズ:スポーティと重厚感を両立

全長4895mm、全幅1966mm、全高1397mmという非常に堂々としたサイズ。最大級のボディ全幅とロングノーズ・ショートデッキのスポーティで美しいグランドツアラーらしいスタイルによって、威厳のある重厚感を見事に両立している。ベントレー コンチネンタルGTの最新モデルでは、後輪操舵を採用しているため取り回し性は高い。

室内スペース:実用可能な2+2レイアウト

ベントレー コンチネンタルGTの室内は2+2レイアウトを採用している。前席はワイドな全幅による余裕のスペースで、長時間の乗車でも快適で疲れにくい設計となっている。後席はクーペスタイルを重視しているためにタイトにはなるが、大人2人が乗車できる居住性を確保している。

ベントレー コンチネンタルGTの走行性能・燃費性能

現行もでるは4.0L V8にプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットを搭載。
現行モデルは4.0L V8にプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットを搭載。

ベントレー コンチネンタルGTには、新開発のパワーユニットが搭載されている。エンジンのダウンサイジングと電動アシストシステムの追加によって、走行性能と燃費性能の向上を両立している。

走行性能:ハイブリッドパワーユニットと高度なシャシーシステム

ベントレー コンチネンタルGTのパワーユニットは、ハイパフォーマンス・ハイブリッドとウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド、2つの仕様が用意される。前者が680PS/930Nm、後者は同787PS/1000Nmのシステム合計出力を誇る。シャシーにも先端技術が投入され、新開発のツインバルブダンパー、電子制御LSDによるトルクベクタリング、アクティブ制御のアンチロールバーなどによって高次元のハンドリングを提供している。

燃費性能:80kmまでEV走行が可能

ベントレー コンチネンタルGTのプラグインハイブリッドシステムに組み込まれているモーターは、190PS/450Nmを発揮する。モーターのみで走行する「EVドライブ」は最高速度140km/hに達する。フル充電でのEV航続距離は80kmで、当然、その間はガソリンを消費しない。走行モードは、燃費向上とCO2排出量削減のための「ハイブリッド」、バッテリー残量をキープする「ホールド」、エンジンでバッテリーを充電する「チャージ」およびパフォーマンスを最大限に引き出す「スポーツホールド」が選択できる。

ベントレー コンチネンタルGT購入価格・維持費

PHEVとして電動走行も可能な新世代のコンチネンタルGT。
PHEVとして電動走行も可能な新世代のコンチネンタルGT。

現行モデルのベントレー コンチネンタルGTには4つの仕様が用意されている。最もベーシックなグレードが約3400万円から、最上級仕様は車両価格が税込みで4200万円近い。維持費はあくまで概算だが、年間100万円程度は用意しておくのが良いだろう。

購入価格:3000万円ばから約4200万円まで

ベントレー コンチネンタルGTの新車税込価格はベーシックモデルで3367万円。専用チューニングを施した48V電子制御式アンチロールシステムなど装備したパフォーマンス志向の「スピード」の場合、購入価格は3930万3000円となる。ラグジュアリーなクロームのグリルを装着し内装の快適性を重視した「アズール」が4040万円、最高級の仕立てとカスタマイズを提供する最高峰の「マリナー」が4164万4000円というラインナップだ。

維持費:コンチネンタルGTには年間100万円?

ベントレー コンチネンタルGTの場合、エンジンの排気量に応じて課税される自動車税と車体重量によって決まる重量税を合わせて年間9万円弱。任意保険やメンテナンスに必要なパーツ代、作業料金などは、オーナーの年齢や運転歴、クルマの使われ方など様々な要素で変わる。それらを含めると、年間の維持費として150万円は必要だろう。特に、2m近い全幅のため、都心では駐車場の確保に苦労するだろう。以下、あくまで目安ではあるが概算をまとめた。

ベントレー コンチネンタルGT モデル解説

現行のベントレー コンチネンタルGTは2024年に登場した第4世代。先代のビッグマイナーチェンジと捉えられることもあるが、全体の7割近いコンポーネンツが新設計されており、ベントレーは公式にフルモデルチェンジとしている。その4代目は、4つの仕様が用意されている。

ベントレー コンチネンタルGT

最もスタンダードな仕様は、アズールと同様に控えめなスペックのハイパフォーマンス・ハイブリッドを搭載する。ブラックのフロントグリルとグロスブラックのフロントスプリッターが力強い印象的な表情を演出している。その一方で、ベントレーが「ハーモニークリスタル」と呼ぶ、煌めきを放つヘッドライトはエレガントな佇まいが美しい。インテリアには、匠の技が注ぎ込まれたアイテムと最新テクノロジーが満載されている。また、オーナーの好みに応じたパーソナライゼーションの選択肢が豊富に用意されている。

ベントレー コンチネンタルGT スピード

ベントレーが伝統的にハイパフォーマンス仕様に与えるのが「スピード」の称号。マリナー同様に、高性能仕様のウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッドを搭載。この新設計のパワートレインに対して、「これほどのパワーは初めて」とベントレー自身が評している。

「マトリクストグリル」やエアインテークのフレーム、エキゾーストフィニッシャーなどはダークティントで仕上げられている。テールライトにもスモーク効果のあるレンズが装着され、凛とした雰囲気を醸し出している。そのほか、22インチホイールやボディカラー同色のパーツなどが装備された大胆なルックスからは威厳が漂う。

ドアの内張には3Dダイヤモンド形状のキルティングが華やかを演出する。スピード専用として、ルーフやピラー、シフトレバー、ステアリングホイールにはスエード調の起毛素材「ダイナミカ」が使用される。

ベントレー コンチネンタルGT アズール

「アズール」(Azure)は快適性を重視した仕様で、パワートレインも出力を抑えたハイパフォーマンス・ハイブリッドを搭載する。エクステリアでは、クローム仕上げの新しい「バーチカルベーングリル」を採用。存在感がありながらも優美な印象を与えている。

「1つ上の快適性」を提供するというアズールでは、「ハーモニー ダイヤモンド キルト」が施されたシートがラグジュアリーな雰囲気を醸し出す。15色からシングルまたはデュアルトーンが選択でき、好みの空間を演出して快適なドライブが楽しめる。ウォールナットのウッドパネルと、スイッチ類などが鏡面仕上げになる「ブライト クローム スペシフィケーション」のコンビネーションは、上品なコントラストを楽しめるだろう。

ベントレー コンチネンタルGT マリナー

コンチネンタルGT マリナー(Mulliner)は、「ラグジュアリーグランドツアラーの最高峰」と位置付けられる。パワーユニットは高性能スペックのウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド。400Vの新しい電気アーキテクチャーやアクティブアンチロールバー、後輪操舵システムなど走行性能と快適性を高める新技術も導入されている。

フロントグリルには、クロームに輝くダイヤモンド形状が浮き出しているようなデザインが施されている。ヘッドライト内部の立体的な格子構造からもマリナー独特の緻密で柔らかな輝きが発せられ、グリルの華やかさと併せてきらびやかな印象を醸し出す。インテリアもマリナー専用の3色で組み合わされるナッパレザーで包まれており、繊細な新しいパターンのキルティングや刺繍、ステッチなどで装飾される。美しい仕上げのウッドパネルも選択肢が多く、英国GTのラグジュアリーを堪能できる仕様がマリナーだ。

ベントレー コンチネンタルGTの新車・中古車価格

先代モデルの3代目も今のところ新車で購入できるようだ。
先代モデルの3代目も今のところ新車で購入できるようだ。

ベントレーの最量販車種であるベントレー コンチネンタルGTは、初代から3代目モデルが中古車市場に比較的多く流通している。中古車では最上級仕様のマリナーに初期モデルの数が多く、年式や世代にこだわらなければ価格もこなれているようだ。なお、2017年に登場した先代モデルは現在のところ併売されており、新車で購入できる。

ベントレー コンチネンタルGTについて多い質問

超高級グランドツアラーとはいえ、買い取り相場は一部のスーパーカー並みとはいかないようだ。
超高級グランドツアラーとはいえ、買い取り相場は一部のスーパーカー並みとはいかないようだ。

以下では、ベントレー コンチネンタルGTについて多い質問・疑問に回答する。

Q. 売却する場合の買い取り相場は?

リセールバリューは悪くないが、非常に良いとも言い切れないのが現実的な評価。強いブランド力に加え、コンチネンタルGTはベントレーの最量販車種として需要が高い。また、中古車市場にもラグジュアリーなグランドツアラーを求める層は一定数存在するため、中古車のニーズも高いといえる。しかしながら、フェラーリなどのようなコレクションアイテムとしての位置づけは希薄なため、高級車に共通する新車からの価格低下は大きい傾向がある。特にW12エンジン搭載モデルは維持費や環境規制対応などの面で、中古車としての需要が低下することも考えられる。

Q. 故障は多くないのか?

故障は少ないほうではない。高いレベルの快適さと走行性能を実現するため、ベントレーは複雑なメカニズムを採用している。部品点数も多く、不具合が連鎖的に発生して修理コストがかさむこともある。エンジンやトランスミッションは比較的丈夫なようだが、エアサスペンションや冷却系のトラブルのほか、電動シートやパワーウィンドウ、インフォテインメントシステムなど電装品のエラーなどが多いようだ。

Q. 「スピード」仕様の特徴は?

ベントレーがスポーツ仕様に与える名称で、ベントレーらしいラグジュアリー感を残しながらもサーキットレベルのパフォーマンスも味わえるモデル。現行のベントレー コンチネンタルGTでは高出力のウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド・パワートレインを搭載するだけでなく、シャシーやサスペンション、後輪操舵、トルクベクタリングなどもスポーツ寄りの制御が施されている。走行モードもレスポンスの鋭い専用プログラムが設定されている。

ベントレー コンチネンタルGTの購入方法

北海道から九州まで、全国に9か所のショールームがある。
北海道から九州まで、全国に9か所のショールームがある。

ベントレー コンチネンタルGTはベントレーモーターズジャパンが取り扱っており、正規販売店で購入できる。ショールームは札幌・東京(芝と世田谷)・横浜・名古屋・大阪・神戸・広島・福岡の全国9ヵ所にある。現在のところ、先代モデルも新車で購入できるほか、認定中古車制度もある。

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著者プロフィール

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーカーマガジン月刊『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつ…