ロシア回避の長時間フライトで見えた欧州との違い。フェラーリ試乗会裏話

コロナ禍、そして戦時下にフェラーリ 296 GTBを試乗するため欧州へ

サーキット走行のために用意されたフェラーリ296GTB
サーキット走行のために用意されたフェラーリ 296 GTB! このチャンスを逃すわけにはいかない。2年半振りの海外試乗会、顛末記。
コロナ禍で海外渡航が事実上禁止され、現地で試乗する機会がなくなって久しい。だが、昨年後半から徐々に厳格な規制が緩和され、ホテル隔離や自宅待機も徐々に短期になってきた。そこへ舞い込んだフェラーリ 296 GTBの試乗会。場所はスペイン。勇躍乗り込んだGENROQ編集長はそこで何を見て、感じたのか? 生々しい感想をお伝えする。

2年半ぶりの洋行

霧の中に佇むフェラーリ296GTB
スペインで開催されるフェラーリ 296 GTBの国際試乗会に出席。国外への移動はどのような制限があったのか報告したい。

コロナが蔓延して以降、すっかり海外が縁遠くなってしまいました。私も以前は年に何度か海外取材に行っていたのですが、コロナ後は完全に国内に留まる日々。しかし、ついにこの春ほぼ2年半ぶりに海外に行くことになったのです。

フェラーリ 296 GTBの試乗という心躍る用件ですが、ここではクルマではなくコロナ禍、そして戦時下という状況で欧州に行くとどうなのか? という視点でレポートをしてみたいと思います。

まずはPCR検査から

フェラーリ296GTB試乗会で歓迎してくれたスタッフ
フェラーリ 296 GTB試乗会で歓迎してくれたスタッフたち。

当初の予定は3月7日0時50分にANA便で羽田を出発、フランクフルトを経由してミュンヘンに行き、さらにスペイン・セビリアに7日17時25分到着、という動きでした。2回も乗り継ぎを行うのは、やはり国際便がまだ少ないからです。

さて、スペイン入国に際しては事前にスペイン政府のサイト「Spain Travel Health -SpTH-」に健康状態や接種ワクチンの時期・種類などを入力し、QRコードを発行してもらう必要があるとのこと。いろいろわかりづらい部分もありましたが、自治体から接種証明を取り寄せて入力し、なんとかQRコードを入手しました。さらに出国72時間前のPCR検査も必要らしい、と聞いたので羽田空港での当日検査を予約しました。

さて、あとは当日を待つのみ、と思っていたら2月24日にとんでもないことが起きました。ロシアがウクライナに侵攻したのです。以前から心配されていましたが、まさか本当にやるとは。驚き、怒り、そして間近に迫ったスペイン行きは果たして可能なのか?と様々な思いが頭をよぎりました。何しろ日本からの欧州路線はロシアの上空を飛びますからね。

案の定、開戦から何日か過ぎると日本発欧州路線の欠航が増えてきました。

まさかのルート変更

この時点ではまだ領空飛行禁止令は出ていませんでしたが、さすがに心配です。ロシア上空を避けるのか、別ルートか、または中止か、とヤキモキしていたところ、フェラーリ側からルートを変更する、との連絡がきました。

新たなルートは3月6日の22時30分に成田をエミレーツ便で出発してドバイで乗り換えてバルセロナ、そこからセビリアというルート。なんと全行程約28時間という長旅となりますが、仕方ありません。ルート的にはこちらの方が間違いなく安全ですし。

すぐに羽田のPCR検査予約をキャンセルして成田空港での検査を予約しました。今はPCR検査を受けられる場所はたくさんありますが、空港で検査すると渡航先のフォーマットに合わせた証明書を出してくれるので、空港で受けるのが一番いいようです。

ただし料金は2万5000円とかなり高額。これは経費で落とせるのかな〜と心配になっていたら、同じ取材に参加するメンバーたち(モータージャーナリストや他媒体の編集者)から「72時間以内の陰性証明は必要ないらしい」との情報が入ってきました。それならばPCR検査を受ける必要もなくなるので、またまたキャンセルです。

と、これはスペイン入国時に必要な手続きであって、日本帰国時はまた別な手続きが必要。接触確認アプリの「COCOA」と入国者健康居所確認アプリの「My SOS」は必須とのことなので、とりあえず出国前にインストールをしました。

3月6日の夜、いよいよ成田に向かいます。でもNEXも本数が減っているし、車内もガラガラ。空港もガラガラで開いている店もほとんどありません。チェックインでは「Spain Travel Health -SpTH-」のQRコード取得済みを確認された以外は以前と特に変わったところはありませんでした。空港内の施設がほぼすべて閉鎖されているので時間を潰す場所がないのには困りましたが。

便は定刻通りに成田を離陸。エミレーツは快適度個人的ランキングベスト1の航空会社なのでその点はラッキーでしたが、ドバイまで約11時間、そこからバルセロナまで約7時間と、ほぼ欧州国際線に2回連続で乗るような感じ。さらに4時間のトランジットを挟んでセビリアまで約2時間。いくら乗り物好きといってもさすがに長かった。

ちなみにスペイン入国のコロナ対策は例のQRコードを見せるのみ。持参していったワクチン接種証明も必要なく拍子抜けするほど簡単でした。もちろん入国後の隔離もナシです。

ウィズコロナの進む欧州

セビリアの街は人も多く活気に溢れていました。戦争の影響はほぼ感じられませんでしたが、市庁舎にはウクライナ国旗が挙げられていて、テレビは戦争関連のニュースに多くの時間が割かれていました。街を行く人のマスク装着率は3割くらいですね。入国時にも感じましたが、ヨーロッパは確実にウィズコロナに舵を切っています。もっとも、そうでなければ国際試乗会なんて、できませんけど。

さて、帰国前日にはPCR検査を受けました。これは日本が入国者に72時間以内の陰性証明を義務付けているからです。帰国便は当初はフランクフルト経由だったのですが、ロンドン経由に変更となりました。そしてロンドンから羽田へのJAL便はロシア上空を避けてなんと北極まわりとのこと。まさか懐かしのアンカレッジ経由か、と思ったらそうではなくて北極まわりだけど無給油フライトをするそう。飛行時間およそ16時間ということですが、今の飛行機は燃費がいいからそんなに長時間飛べるんですね。

実はちょっと不安だったPCR検査も(無症状で陽性ということもあるので)無事に陰性となり、セビリアからロンドン、そしてロンドンから羽田へと飛び立ちました。予定飛行時間16時間。1回のフライトでこんなに長く飛ぶのは初めてです。

これだけ長時間のフライトだとパイロットなどスタッフを通常より多く乗せないといけないそうで、ただでさえ航空会社はコロナで大変なのに、余計なコストをかけさせられて本当に迷惑ですね。16時間も飛んだら、燃料代も大幅に増えてしまうでしょう。

さて、機長が頑張ってくれたおかげで(?)実際は15時間弱で羽田に到着。疲れたけれど映画を4本も見られたというところに長時間フライトの意義を無理矢理見出し、飛行機を降りました。いや〜このような有事の海外渡航、無事に帰ってくることができると、やはりホッとします。

唾液の抗原検査

しかし、ここからが大変でした。すでに機内でコロナ関連の書類を書かされていたのですが、羽田についたらまず「My SOS」の登録確認です。さらに機内で記入した書類の確認、陰性証明書の確認などをいちいち移動しながら行います。

さらに唾液による抗原検査までありました。陰性証明を出しているのに抗原検査があるとは思わなかったので、驚きです。ちょっとした衝立のあるスペースで唾液を容器に採取するのですが、そこにレモンと梅干しの写真が貼ってあるのはちょっと笑いましたけど。

他にも入国後の居場所確認など細かな書類確認のために広い空港を歩き回らされ、そのすべてに何十人ものスタッフがいて到着者全員の誘導を行っています。すでに着陸してから1時間以上、いったいいつ終わるのかといいかげん嫌になってきました。

そして最後は抗原検査の結果が出るのを待って、ようやく終了です。この時点で到着から2時間以上が過ぎていました。もちろん入国審査はこれからです。

帰国後の待機は3日間・・・そしてまさかの濃厚接触者に

入国時のコロナ関連手続きがめんどくさいよ、と聞いてはいましたが、正直ここまでとは思いませんでした。大勢のスタッフはご苦労様ですが、はっきり言ってこんなやり方はとても先進国とは思えません。まして日本もほぼオミクロンに置き換わっている今、大量の税金を投入してここまでの対策が必要でしょうか。スペインの現状を体験したばかりだったので、尚更その差を痛感しました。

しかも、ワクチンを2回しか受けていないボクは、この上7日間の自宅待機をしなくてはいけないのです(それなのに何故か帰宅は公共交通機関の使用OK)。ただし、3日目にPCR検査を受けて陰性なら待機解除なので、とりあえず3日間の我慢です。

帰宅翌日から「My SOS」で1日2~3回の居場所確認、1回の健康状態確認(発熱の有無などをチェック)が始まりました。居場所確認はスマホに通知が来て、そのたびにタッチして居場所を報告するというもの。また朝(大体9:00〜10:00くらい)と夕(大体16:00〜18:00くらい)は映像確認依頼が来て、背景と一緒に自分の顔を写さないといけないのです。

すべて自動化されているので、映像は記録されるだけで誰かがいちいち見てはいないようですが、正直うざいです。何度か応答できない時もありましたが、特に何事も起きませんでした。聞いた話では、かなりの回数を無視すると、家まで確認が来るらしいですが・・・。

そして帰国2日目、「あなたは濃厚接触者に認定されました」という衝撃の連絡が! 帰国便でボクの前後2列以内に座っていた誰かが陽性だった、ということらしいです。こうなるとPCR検査の結果如何にかかわらず、強制的に7日間自宅からは出られません。もう最悪です。

座席の状態から考えても濃厚接触はまず考えられないので保健所に電話して確認したのですが、やはり濃厚接触認定は変わらない、とのこと。「いろんなご意見を頂くのですが・・・」と保健所の担当者の方も恐縮していて、なんだかこちらが申し訳なくなってきました。お仕事、おつかれさまです。

コロナ対策に不満

帰国翌日に届いた濃厚接触者であることを知らせる通知。これで待機期間緩和の対象外となってしまいました。
帰国翌日に届いた濃厚接触者であることを知らせる通知。これで待機期間緩和の対象外となってしまいました。

PCR検査も予約していたのですが、意味がなくなったのでキャンセルです。今回の渡欧がらみでPCR検査のキャンセルはもうこれで3回目。まったく、何やってんだか。ともかく、もうあきらめるしかありません。「My SOS」からの居場所確認と健康確認を1日数回こなし、ひたすら7日間を自宅から出ずに過ごします。濃厚接触者の基準、そして入国時にあれだけの手間と時間をかけて確認してさらに自宅待機という処置に納得がいかないので、7日間がやたらと長く感じました。人間って自分で納得できない行動をするのは辛いものなんですね。

健康状態にもまったく異変はないまま長い7日間は過ぎ、ようやく自宅待機が終わりました。出発前は現在の状況で欧州に行くことの不安しかなかったのですが、今は日本のコロナ対策への不満しかありません。いつまでもこんなことをしていたら、日本は停滞してどんどん世界から取り残されてしまいます。このあたりの考えは人それぞれなので、あくまでボク個人の意見ではありますが。

ところで、4月1日に「飛行機の濃厚接触者の定義は同行した家族のみとする」と厚生労働省から発表がありました。ああ、あともう少し早ければ!

REPORT&PHOTO/永田元輔(Gensuke NAGATA)

【関連リンク】
・厚生労働省・入国者健康確認センター
https://www.hco.mhlw.go.jp/

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著者プロフィール

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永田元輔

『GENROQ』編集長。愛車は993型ポルシェ911。