マクラーレンの最強モデル! スピードテールの驚くべき試乗体験

最高出力1050ps、最高速度403km/hのスピードテールを初試乗! マクラーレン史に燦然と輝くハイパーカーの真相

マクラーレン スピードテールの走行シーン
新車当時価格2億6000万円のプライスタッグがつけられたマクラーレン スピードテール。メディア関係者では過去に3名しか試乗が許されなかったハイパーカーを、モータージャーナリスト・大谷達也が日本メディア初試乗!
4.0リッターV8ツインターボとエレクトリックモーターを組み合わせ、トータル1050ps、最高速度403km/hを実現するスピードテールは、マクラーレン史に燦然と輝くハイパーカーだ。希少なモデルゆえ今までメディアの試乗機会はほとんどなかったが、このたび大谷達也が日本人ジャーナリストとして初めてステアリングを握るチャンスを得た。早速その印象を伝えてもらおう。

McLaren Speedtail

異次元の味

マクラーレン・スピードテールはF1ロードカー以来となる3シーターのハイパーカーだ。性能を追求したデザインが特徴的。
マクラーレン スピードテールはF1ロードカー以来となる3シーターのハイパーカーだ。性能を追求したデザインが特徴的。

久しぶりの訪問となるマクラーレン・テクノロジー・センターに到着すると、そこには2台のスピードテールが無造作に置かれていた。

2018年10月に発表されたスピードテールはマクラーレン初のハイパーGTで、250mph(約403km/h)の最高速度を豪語する超ハイパフォーマンスカーでもある。翌年12月にはNASAのケネディ宇宙センターで30回以上にわたり403km/hに到達し、事前に公表したスペックが単なる期待値ではないことを証明してみせた。そして私が試乗するスピードテールは、このとき速度記録を達成したXP2そのものと聞かされていたのだが、その隣には鮮やかなオレンジのグラデーションカラーに彩られたXP5も羽根を休めていたのである。

「量産モデルのスピードテールは、106台すべてが予定どおりに生産され、顧客への納車が完了しています」と、チーフエンジニアのマーカス・ウェイトが私に説明してくれた。「現在、私たちの手元にあるのは先行開発車両の2台だけで、先ごろ全面的なリビルドを終えたばかりです。今日は、この2台にお乗りいただけますが、どちらにしますか?」

ウェイトのあまりに気前のいいオファーに、私は卒倒しかけていた。なにしろ、マクラーレンの公式な招きでスピードテールに試乗したジャーナリストは、これまでにたった3人だけ。しかも、彼らはそれぞれ1台のスピードテールしかステアリングを握ったことがないから、私は「スピードテールを2台試乗した史上初めてのメディア関係者」という名誉を手にすることになる。これ以上、なにを望めというのか?

センターシートの優れた乗降性と内装の設えに驚く

マクラーレンF1以来となる、ドライバーが中央に座るスタイル。両側のシートは固定式となる。
マクラーレンF1以来となる、ドライバーが中央に座るスタイル。両側のシートは固定式となる。

試乗前のコクピットドリルを受けるため、スピードテールのドライバーズシートに腰掛ける。マクラーレン F1譲りの3シート・レイアウトは発表直後のジュネーブ・ショーで体験済みだが、実際に自分が運転するとなるとその感慨も大きく変わってくる。もっとも、左右の助手席をまたぐ格好で乗り込む中央のシートへのアクセスは、ドアがルーフ部分まで大きく開くこともあって意外なほど容易。ひょっとすると一部のミッドシップスポーツカーより無理な姿勢を強いられなくて済むのではないかと思えるほど、あっさりと運転席に辿り着くことができた。

それにしても、このコクピットの明るさはどうだ。フロントウインドウの視界が優れていることは既存のマクラーレンと同様だが、スピードテールはルーフにまで回り込んだサイドウインドウがすべて透明なほか、リヤクォーターウインドウもミッドシップスポーツとは思えないほど大きく、様々な角度から光が差し込んでくる。しかも、ドライバーの左右にはパッセンジャーのためのスペースが用意されているため、キャビンは明るいだけでなく実に広々としている。加えて室内には「これでもか!」とばかりに最上級のレザーとカーボンコンポジットが張られている。その驚くほどゴージャスな佇まいは、既存のスーパースポーツカーとはまったくの別世界といっても過言ではないだろう。

センターステアリング・ロードカーの特殊性

マクラーレンF1以来となる、ドライバーが中央に座るスタイル。両側のシートは固定式となる。
センターステアリングという特殊な乗り味。ドライバーの左右後ろに助手席が配置されるので、左下には同乗者の靴が見える。デジタルミラーを採用する。

説明が終わると、私はひとりコクピットに取り残され、いよいよスピードテールを走らせることになった。メインスイッチは、正面のフロントウインドウ上部に設けられていて、これを押すと757psを発揮する4.0リッターV8ツインターボエンジンはあっけなく目覚めた。その音色は720Sなどでお馴染みのものだが、音量ははるかに小さい。この辺はゴージャスなハイパーGTを意識して設定されたようだ。

生まれて初めてのセンターステアリング・ロードカー。しかも新車時の価格が2億6000万円以上だったと聞けば、緊張するなというのが無理というもの。実際、私も走り始めた当初は心臓が張り裂けそうだったが、ものの30分も走るとすっかりとクルマに馴染んでいた。それは、マクラーレンらしい視界の良さに加えて、車幅感覚を捉えるのが驚くほど容易な点にあったはず。

結局のところ、センターステアリングは左右のボディ端までの距離が比較的短いので、ボディがどの辺まであるかを捉えやすいようだ。また、自分自身を車線の中央におけば、左右に一定のスペースを確保できる点もスピードテールが扱いやすい理由のひとつ。これは、イギリス郊外によくある片側一車線の狭いワインディングロードを走るうえで、特に役立った。実に見やすい位置に設けられたデジタルアウターミラーのモニターが、ボディの一部を映し出しつつ、極めて広い画角をカバーしている点もドライビングを容易にしていた。

快適でしかも扱いやすい。1000kmのロングツーリングも楽々こなせそうだ

システム出力で1070psを生み出すパワーユニットは、低速時にはドライバビリティを優先してトルクを絞っているようで、恐ろしく扱いやすい。ハンドリングにしても、マクラーレンらしくステアリング・インフォメーションが良好なうえにスタビリティも高いので、まったく不安を覚えない。しかも乗り心地は、最高速が400km/hを超えることが信じられないほど快適。ロードノイズも低く抑えられているので、1日1000kmのロングツーリングも楽々こなしてくれるそうだ。

それにしても疑問だったのが、なぜ、このタイミングでスピードテールの試乗が許されたのかという点にある。この質問にウェイトらは口をつぐんだが、おそらくは遠くない将来にアルティメット・シリーズのニューモデルが登場するのではないか。コロナ禍を始めとする数々の危機を乗り越えてきたマクラーレン・オートモーティブの今後に期待したい。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/McLaren AUTOMOTIVE
MAGAZINE/GENROQ 2022年 8月号

SPECIFICATIONS

マクラーレン スピードテール

ボディサイズ:全長5137 全幅- 全高1150mm
ホイールベース:-mm
車両重量:1430kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ+モーター
排気量:3994cc
最高出力:557kW(757ps)/-rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/-rpm
トータル最高出力:787kW(1070ps)/-rpm
トータル最大トルク:1150Nm(117.3kgm)/-rpm
駆動方式:RWD
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前235/35ZR20 後315/30ZR20
最高速度:403km/h
0-300km/h加速:12.8秒

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…