マセラティ MC20の実力をサーキット試乗で明らかにする

新時代マセラティを象徴するミッドシップスーパースポーツ、MC20をモデナで試す

マセラティ MC20の走行シーン
マセラティの最新ミッドシップスーパースポーツ、MC20。その実力を海外サーキットでモータージャーナリスト・大谷達也が探る。
マセラティが久々に放ったミッドシップスーパースポーツ、MC20。その動的資質の素晴らしさは各方面から称賛されているが、今回は舞台をサーキットに移し、極限での走りを検証する。マセラティのレーシング魂はどのような形で現代に蘇ったのか。

Maserati MC20

見事な二面性

久々のミッドシップスーパースポーツ、マセラティMC20。プレチャンバー付き3.0リッターV6ツインターボエンジンという純内燃機関を搭載する。
久々のミッドシップスーパースポーツ、マセラティ MC20。プレチャンバー付き3.0リッターV6ツインターボエンジンという純内燃機関を搭載する。

マセラティが久々に放ったミッドシップスポーツカー“MC20”は、新開発のV6エンジンが目の覚めるようなレスポンスを発揮する一方、シャシーは全般的に快適志向で、試乗コースによってはハンドリングのテンポがややゆるやかに感じられることを日本の公道で確認済み。しかし、MC20の真のポテンシャルを見極めるのであればサーキットを走る必要があることも、また明らかだった。そんなチャンスが思いのほか早く訪れた。MC20チェロのワールドプレミアにあわせて訪れたモデナのサーキットで、MC20クーペへの試乗が許されたのだ。

その名もアウトドローモ・ディ・モデナは全長2kmあまりのコンパクトなコース。しかも、今回はインフィールドのテクニカルセクションをショートカットしたため、実際の走行距離はさらに短かったはず。一方でコーナーは全般的にタイトなものが多く、いわゆる高速コーナーのないコースレイアウトだったことを先にお断りしておこう。

センタートンネル上のドライビングモード切り替えでサーキット向けのコルサを選択。シフトパドルで1速を選んでスロットルペダルを踏み込むと、MC20は弾けるようにしてピットレーンを加速していった。

快適性と優れたハンドリングを両立させた

久々のミッドシップスーパースポーツ、マセラティMC20。プレチャンバー付き3.0リッターV6ツインターボエンジンという純内燃機関を搭載する。
サーキットでも安定した走りを見せたMC20。そのキャラクターの軸足はあくまでグランドツアラーだという。

ピットレーン出口から1コーナー進入までの短いストレート区間で車速は早くも110km/hに到達。0-100km/h加速2.9秒を実現するネットゥーノ・エンジンの痛快なパフォーマンスを再確認する。踏み応えがガッシリとしていてコントロール性の高いブレーキペダルをしっかりと踏み込んでからステアリングを切り込む。そのときの反応は、日本の公道で感じ取ったものとよく似ていて、どちらかといえば穏やかなタイプ。ただし、だからといってサーキット走行で求められる軽快なリズム感が損なわれるかといえば、そんなことはない。むしろ、初めて走るコースであれば、このくらいのレスポンスのほうが落ち着きがあって好ましいともいえるだろう。

低速コーナーからの脱出でスロットルペダルを漸進的に踏み込んだときの反応も同様で、トラクションを確実に路面に伝えながら、安定した姿勢を保って立ち上がっていくため、「テールがいつ暴れ出すか?」という恐怖に身構えながら右足の踏み代をコントロールする必要はまったくない。この辺の印象も、日本の公道で体験したものとよく似ている。

グランドツアラーに求められた性能とは

なぜ、マセラティはMC20にヒリヒリするようなステアリングレスポンスと、リヤタイヤがいまにも滑り出しそうなスリルを与えなかったのか? チーフエンジニアのジャンルカ・ディ・オトは私の質問にこう応えた。

「ミッドシップスポーツカーといえども、マセラティはグランドツアラーです。したがって快適性を無視するわけにはいきません。ただし、その範囲内で優れたハンドリングも実現したと私たちは自負しています」

1日に1000km走っても疲れない快適性と、サーキット走行も満喫できるハンドリング。この2つをMC20は両立させているというディ・オトの主張には私も心から賛同したい。

一方で、ネットゥーノ・エンジンのシャープな吹け上がりはサーキット走行でも実に魅力的だった。3.0リッターV6というエンジンレイアウトでありながら、V8エンジン搭載のスーパースポーツカーに匹敵するパフォーマンスをMC20にもたらしている最大の秘密が、F1由来の副燃焼室方式“MTC(マセラティ・ツインコンバスチョン・テクノロジー)”にあるのはまず間違いないところ。副燃焼室内で混合気に点火し、ここで発生した火焔を燃料インジェクターのごとき小さな穴から主燃焼室へと吹き出して高速燃焼を実現するこのシステムが、最新のF1エンジンに驚異的な高効率とハイパフォーマンスをもたらしていることは広く知られている。

自社開発と自社生産にこだわったエンジン

久々のミッドシップスーパースポーツ、マセラティMC20。プレチャンバー付き3.0リッターV6ツインターボエンジンという純内燃機関を搭載する。
最高出力630ps/最大トルク730Nmのパワースペックは、0-100km/h加速2.88秒、最高速度326km/hのパフォーマンスを実現する。

ちなみに同様の技術はマーレーなども発表しているが、MTCは完全にマセラティ内部で開発されたという。その理由を、V6エンジン・ファミリーの開発を担うアントニオ・エスポシトに説明してもらった。

「これまでマセラティは、高性能エンジンの開発や生産を他ブランドに委ねてきました。しかし、今後は革新的なエンジンを独自開発することにより、自分たちの技術力を誇示するとともにブランド性を高めたい。そんな思いから、ネットゥーノ・エンジンでは自社開発と自社生産にこだわりました」

たしかにMC20、そしてグレカーレと、ここのところのマセラティは自分たちの伝統を重んじながら、性能的にもクォリティ的にも従来の水準を格段にしのぐ製品を造り上げている。次に登場するニューモデルの仕上がりが、実に楽しみだ。

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/MASERATI S.p.A
MAGAZINE/GENROQ 2022年 8月号

SPECIFICATIONS

マセラティ MC20

ボディサイズ:全長4669 全幅1965 全高1221mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1475kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
排気量:3000cc
最高出力:463kW(630ps)/7500rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgm)/3000-5500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前245/35R20 後305/30R20
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:2.88秒
車両本体価格(税込):2664万円

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…