【ランボルギーニ ヒストリー】ランボルギーニの草創期を飾った地味なGT、イスレロ

400 GTの後継車としてデビューした「イスレロ」はなぜ地味だったか?(1968-1969)【ランボルギーニ ヒストリー】

【ランボルギーニ ヒストリー】イスレロ
ランボルギーニの2+2 GT、イスレロ。当時はエンスージアストの支持を得られず不遇となったモデルを解説する。
400 GTで自動車メーカーとしてのスタートをきったランボルギーニは、次いで後継モデルとして「イスレロ」の生産を開始する。居住性を高めるためひとまわり大きくなったボディは400 GTの曲線主体とは正反対の直線調で、インテリアの品質も向上した。近年、再評価がなされ始めたイスレロはどういったモデルだったのか?

Lamborghini Islero

400 GTよりも居住性を高めたイスレロ

ランボルギーニが400 GTの生産を1968年に中止しなければならなかった背景のひとつには、当時ランボルギーニからボディの生産を請け負っていた、カロッツェリア・トゥーリングの解散が大きな理由としてあった。トゥーリングの技術力を高く評価していたフェルッチオ・ランボルギーニは、400 GTの後継車ももちろんトゥーリングにボディ製作を依頼する意思を固めていたというが、残念ながらその計画は実を結ぶことはなかった。

トゥーリングから離れたメンバー達、例えばデザイナーのマリオ・マラッツィなどは、独自に新型車のデザインと製作を委託してほしいとフェルッチオに直談判をしたものの、結局そのプランもフェルッチオに拒まれた。結果、ランボルギーニが選んだのは、ボディデザインからすべてを自社によって行うことで、マラッツィはデザインのサポート的な役割で、新型車のプロジェクトに参加することになった。ちなみにこの新型車とは、後に「イスレロ」とネーミングされる2+2 GTである。

スタイリングの見せ場とは

イスレロのホイールベースは400 GTと共通の2550mm。だが、ボディサイズは全長×全幅×全高で4525×1730×1300mmと、400 GTをひとまわり上回っている。特に変化の幅が激しいのは全幅と全高で、これはGTとしての居住性をさらに高めたいというフェルッチオの意思が強く働いた結果ともいえる。

デザインはエレガントな曲線によって描かれた400 GTとは対照的に直線を基調としたものになった。フロントには丸型4灯式のリトラクタブルヘッドランプが装備され、美しい曲面を伴って沈み込むフロントエンドの造形は、イスレロのスタイリングの中ではひとつの大きな見せ場ともいえる。ボディパネルはスチールで成型されており、ウエストラインの流れもシンプルながら実に流麗だ。

メカニズムは400 GTと同一ながらインテリアは豪華仕立て

インテリアもより豪華なフィニッシュになった。仕様にもよるがウッドパネルをベースにした横長のメーターパネルに整然とレイアウトされるメーターや、同様にウッド製が採用されたステアリングホイール、レザー製のシートやインテリアトリムなど、そのクオリティやデザインは400 GTからさらに魅力的なデザイン、そして品質へと向上していた。

その一方で、メカニズムはそのほとんどが400 GTからのキャリーオーバーだった。搭載されたエンジンは400 GTと同様に320PSの最高出力を発揮する4.0リッターV型12気筒DOHC。これにどちらも自社製となった5速MTとディファレンシャルを組み合わせ、もちろん後輪を駆動する。前後にコイルスプリング付きのダブルウイッシュボーン・サスペンションを装備するのも400 GTと同様だ。

サスペンションのセッティングは、スタビライザーの径を大きくしたほか、細かい部分でも若干の変更点はあるものの、それらはいずれもGTとしての快適性をさらに高めるための策。当時ランボルギーニが発表したイスレロの最高速度は250km/hだった。

高性能版を用意するもセールスは厳しい結果に

だがフェルッチオの意気込みに反して、イスレロのセールスは好調な結果を残すことはできなかった。デビュー年の1968年から1969年にかけて販売されたイスレロは125台。その状況を打破するために登場したのが、高性能版たる「イスレロ S」である。

イスレロ Sは、4.0リッターエンジンはそのままに、圧縮比をイスレロの9.0から10.5にまで高めたことなどにより、350PSの最高出力を発揮させた。前後のフェンダーは控えめなフレアを備えるデザインに変更されたこと、またフロントフェンダー後方には横長のスリットが設けられたことなどが、イスレロ Sを識別するポイントだ。1969年に生産されたイスレロ Sは100台。

これまでランボルギーニのヒストリーの中では、あまり目立つ存在ではなかったイスレロだが、生誕から50年以上を経て、ファンから再評価されるようになった。ランボルギーニの創生期に誕生したGTとして、イスレロは見逃してはならない存在である。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ イスレロ

発表:1968年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:3939cc
圧縮比:9.0
最高出力:235kW(320ps)/6500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1240kg
最高速度:250km/h

ランボルギーニ イスレロ S

発表:1969年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:3939cc
圧縮比:10.5
最高出力:257kW(350ps)/7500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1240kg
最高速度:250km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…