【ランボルギーニ ヒストリー】初の生産モデル350 GTと進化版400 GTの誕生

厳しい現実を乗り越えて理想を追求した「350 GT & 400 GT」(1964-1966)【ランボルギーニ ヒストリー】

ランボルギーニ ヒストリー、350 GT&400 GT
ランボルギーニブランド初の開発車・350 GTV プロトタイプを改良し、ついに生産にこぎつけた350 GT。
自らの名を冠した自動車メーカーを立ち上げるべく、フェルッチオ・ランボルギーニは350 GTV プロトタイプの開発を進める。しかし搭載予定のV12エンジンはフェルッチオの理想通りに仕上がらず、大幅な改良を余儀なくされた。紆余曲折の後、ついにランボルギーニ初の生産モデル、350 GTは1964年にリリースされる。

350 GTVの改善版「350 GT」

ランボルギーニ_350_GT_フロント_スタイル_モノクロ記録写真_01
1964年にデビューしたランボルギーニ 350 GT。プロトタイプである350 GTVを徹底的に改良し、フェルッチオが求めるグランドツーリング性能を実現した。

1963年のトリノ・ショーで、350 GTVとともに自動車メーカーとしてのデビューを飾ったランボルギーニだったが、創始者であるフェルッチオ・ランボルギーニにとって、その記念すべき第一作となった350 GTVは、決して満足できるモデルではなかったようだ。フェルッチオはまだショーが会期中であるにもかかわらずブースを閉鎖。サンタアガタ・ボロネーゼの本社に戻ると、ジャンパオロ・ダラーラやパオロ・スタンツァーニという若き才能に率いられていたエンジニアリングチームに、量産第一号車の開発を指示したのだった。

350 GTVのボディをデザインしたフランコ・スカリオーネ、そしてそれを製作したカロッツェリア・サルジオットに代わり、新たにクーペスタイルのボディを製作したのは、独自の特許技術によって、軽量かつ高剛性なボディを生み出すことで高い評価を得ていたカロッツェリア・トゥーリング。一方フロントに搭載されるV型12気筒エンジンは、ダラーラとスタンツァーニによって、よりマイルドな特性へと改められた。

フェルッチオを満足させた完成度

ランボルギーニ_350_GT_リヤ_スタイル_01
プロトタイプの350 GTVがピーキー過ぎた故に改良した3.5リッターV12エンジンはスペックダウンしたものの、最高速度は250km/hを達成。生産は1964年にスタートした。

これらの改良策を受けて1964年3月に発表されたのが、ランボルギーニにとって初の量産車となった「350 GT」だ。350とはもちろんフロントのV型12気筒エンジンの排気量、3.5リッターを示しており、最高出力は270ps/6500rpmと350 GTVのそれから一気に90psほどダウンしてしまったものの、実用域での扱いやすさは格段に向上。キャブレターは350 GTVのダウンドラフト型からサイドドラフトに、潤滑システムもドライサンプからウエットサンプへと変更されているとはいえ、250km/hの最高速度を誇ったこのGTの仕上がりにフェルッチオは非常に満足したという。前後のサスペンションはコイルスプリングを組み合わせるダブルウイッシュボーン、さらに4輪ディスクブレーキを採用するなど、技術的な先進性もフェルッチオが大いに誇るところだった。

350GTの生産は1964年5月から開始され、サンタアガタ・ボロネーゼの地に誕生した新興勢力ランボルギーニの名は、早くもイタリアのみならず世界中のカスタマー、とりわけフェラーリやマセラティといったモデルを購入してきた富裕層の耳に届くようになった。350 GTの生産台数には諸説あるが、最終的に135台あるいは143台が生産された。

正常進化版「400 GT」は1966年にデビュー

ランボルギーニ_400_GT_フロント_スタイル_02
350 GTのV12をボアアップして4.0リッターへと排気量を拡大した400 GT。最高出力は390psへと向上し1966年にデビューを果たす。エクステリアも丸目4灯ヘッドライトへ変更された。

1966年、フェルッチオはより高性能なモデルへと進化させることを指示。まず誕生したのは350 GTをベースとした4.0リッター仕様で、これは350 GTの3.5リッターユニットをベースにボアを77mmから82mmに拡大し、新たに4.0リッターの排気量を得たものだ。それによって320ps/6500rpmの最高出力を得たのである。ちなみに当初この4.0リッターエンジンを搭載したモデルは、350 GTの4.0リッター仕様としてランボルギーニでは扱われており、後に誕生する400 GTと両方の特徴を併せ持つことから、400 GT インテリムと称されることも多い。

4.0リッター仕様のGT「400 GT」が正式にデビューを飾ったのは、1966年のジュネーブ・ショーでのことだった。搭載エンジンは前で解説したとおりの320ps仕様。組み合わせられるトランスミッションも、350 GTから受け継がれたZF製の5速MTだったが、デファレンシャルはこの時にランボルギーニの自社製へと変更される。ボディサイズはキャビンを2+2のデザインとするために(350 GTは3シーター、もしくは2シーターだった)全長と全高が若干拡大され、それに伴って車重も90kgほど増加し1290kgとカタログには記載されている。

ボディサイズを若干拡大したうえ、スチールボディに変更したことで車重は350 GTより90kg増加した400 GT。総生産台数は274台と言われている。

エクステリアでは350 GTの楕円形2灯式から丸型4灯式を採用したのが大きな特徴。さらにボディの素材もスチールに変更され、これが車重の増加に大きく影響した。400 GTの生産は1968年まで継続され、生産が終了するまでに274台がサンタアガタ・ボロネーゼの本社工場を後にしたとされる。ランボルギーニの創生期を支えたGTは、現在でもその価値とファンからの支持は非常に高い。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ 350 GT

発表:1964年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:3464cc
最高出力:199kW(270ps)/6500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1200kg
最高速度:250km/h

ランボルギーニ 400 GT 2+2

発表:1966年
エンジン:60度V型12気筒DOHC
総排気量:3939cc
最高出力:235kW(320ps)/6500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:RWD
車両重量:1290kg
最高速度:250km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…