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コロナ禍だからこそのVR
2014年、VRデバイスを開発していたオキュラスをFacebookが20億ドルもの巨額で買収すると聞いた時、誰もが耳を疑ったに違いない。さらにはその後、オキュラスが技術を盗んでいると訴えられ、その解決金として5億ドルをFacebookは支払っている。
当初は羨望の的だったVR技術も、むしろ装着した姿を滑稽と思う人が多くいても不思議ではない。しかしFacebookはオキュラスに投資を続け、とうとう人々の心を掴める製品にまでたどり着いた。それが2020年10月に発売されたQuest 2だ。実はガジェット好きの僕でさえ、その実力を疑っていた。ところが3万円台で入手できる上、別途、ゲーミングPCは不要。単体でアプリを動かすことができ、仮想世界へと没入するためのコントローラも付属するこの製品の体験は驚くものだった。
異なる体験の質
リゾートでパターゴルフコースを友人と周り、渓流で気の合う仲間とゆったり釣りを楽しみ、外出自粛で運動不足な休日をグループフィットネスで汗を流す。コロナ禍がなければ、VRがもたらす現実から逃避するかのような娯楽空間への感度も低かったかもしれない。しかし、コミュニケーションに飢えた僕の心には突き刺さった。
ご存知の通り、世の中ではプレステ5が品薄で買えないほどの人気を誇っている。これもコロナ需要と言われているが、Quest 2のグラフィックスはPS5に遠く及ばない。映像の質だけを見れば前世代だが、今この瞬間、どちらでステイホームの時間を過ごしたい? と言われれば2つ返事でQuest 2と答える。なぜそう思うかといえば、これは“体験の質”でしかない。極めて緻密で現実感のあるグラフィックスと物理シミュレーションで彩られるPS5の世界は、従来からのゲーム世界を最上級に引き上げてくれる。これはこれでひとつの究極の形だが、あくまでも従来のゲーム機の領域だ。
圧倒的な没入感
一方Quest 2がもたらしてくれるのは、VR、すなわち仮想世界に入り込んだかのような感覚だ。例えグラフィックスの質が前世代だろうと、その世界に入り込んでいく方法が“俯瞰”なのか“自分視点”なのかでは大きく異なる。その場にいる気分になり、そこに気の置けない友人が集まれば、例えやっていることがトランプの七並べでも楽しいに違いない。それはVRの本質でもあるけれど、Quest 2がもたらしてくれるのは、その世界へと安価、かつ他に特別なデバイスを用意することなく単体で楽しめるようにしてくれたことだ。
おかげでGWも、毎日のように屋外で友人とキャンプした気分になれたし、自宅でフィットネスに明け暮れることで体重増加も防ぐことができた。ちょっと言い過ぎだって? そんなことはない。ガレージのSUVを駆ってキャンプに出かけた先で、Quest 2を使って友人とネットワークゲームを楽しんでいる人がいてもまるで不思議じゃない。まずは体験してみてほしい。VRゴーグルを装着した人たちが、何もない空間でバカみたいにエア◯◯な動きをする人たちを決して笑えなくなるだろう。
例外なく誰でも楽しい。そんな実力をVRデバイスは既に備え始めたのだ。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 7月号
PRICE
3万7100円〜4万9200円
評価
とにかく楽しく癒されるコロナ禍NO.1装置。騙されたと思って使って欲しい。装着感はさほど高くないがオプションでEliteストラップとフィットパックを追加購入すると格段に改善する。
コストパフォーマンス:5
娯楽性:5
現実感:5
画質:4
装着感:3
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