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創業50周年を迎え、未来を見据えるBMW M社
BMW M社がテストを開始したフル電動ハイパフォーマンス・プロトタイプは、4基の電動モーターと統合されたドライビング・ダイナミクス・コントロール・システムを搭載。未来の高性能電動スポーツカーに相応しい、極めてエモーショナルなドライビング体験が可能になるという。
BMW M社はこの電動プロトタイプにおいて、新たなドライブコンセプトを導入。同社が持つモータースポーツなどから得た専門性を、ローエミッションビークルにも移行可能なことを示した形だ。フル電動駆動システムに革新的なマネージメントシステムを組み合わせることで、BMW M社の内燃機関モデルの特徴である、優れた運動性、俊敏性、正確性の実現がEVでも可能になった。
創業からちょうど50年、BMW M社は電動モビリティに向けた変革の真っ只中にいる。この記念すべき2022年には、すでにフル電動モデルの「i4 M50」と「iX M60」がマーケットに投入。さらに電動フラッグシップサルーンをベースとした、初のMモデル「i7 M70」が、早ければ2023年にも発売される予定だ。BMW M社のフランク・ヴァン・ミールCEOは、彼らが進める電動化について次ように説明している。
「記念すべき50周年を迎えましたが、私たちは振り返るだけでなく、何よりも前を向いています。2022年内には、V8 Mハイブリッドドライブを搭載したBMW M社初のハイパフォーマンスカー『XM』の生産が開始される予定です」
「2023年にはBMW M ハイブリッド V8で、北米で開催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のLMDhカテゴリーに参戦。さらに、その1年後にはル・マン24時間レースをはじめとする、WECへの参戦も決まっています。世界中のファンの皆さんと同様に、私もその時をワクワクしながら待っています」
BMW i4 M50をベースにテスト車両を開発
BMW M社のエンジニアは、将来のフル電動ハイパフォーマンスカーに搭載するドライブトレインとシャシーテクノロジーの研究開発を行うべく、BMW i4 M50をベースにテスト車両を開発した。
この電動プロトタイプは、拡大されたホイールアーチに専用設計の高性能フロント&リヤアクスルが組み込まれた。フロントセクションには、M3/M4シリーズに採用されたボディストラット・コンセプトを採用。極めてダイナミックな走行状況下における、高いねじれ剛性を実現した。また、ラジエーターユニットを含む冷却系統の配置は、現行の高性能スポーツカー用に開発された仕様をベースにしている。
ハイパフォーマンス電動駆動システムの核となるのが、4基の電気モーターを搭載した「M xDrive」4輪駆動システム。4輪それぞれを独自の電気モーターで駆動することで、極めて高速かつ正確な無段階トルク配分が可能になった。電気モーターそれぞれがインテリジェントに反応し、パワーとトルクを数ミリ秒以内の時間で正確に配分。従来の駆動システムでは実現できなかったレベルで、アクセルペダルからの入力が反映されることになる。
これにより、テクニカルなサーキットや悪路といった極めて厳しい条件下においても、ドライバーはまったく新しいレベルのドライビング体験が可能になる。これまでにないレベルのビークルダイナミクスと駆動制御方式は、開発最初期はバーチャルモデルで、次にテストベンチでと、段階的な開発とテストフェーズを経てきた。今回、実際のプロトタイプ車両に搭載し、実用的なテストが行えるまでに熟成が進められたかたちだ。
テストが行われるプロトタイプ車両の室内には、あらゆる走行シーンを詳細に分析するための計測機器を搭載。完璧な駆動トルク配分を実現するための理論的な結果を、シミュレーションやベンチでのテスト結果と、実際の路上における現実の結果と比較する。ここで得られたデータやフィードバックを、プログラミングなどに反映させていくことになる。