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Audi skysphere concept
最大250mm変化する「アダプティブホイールベース」
アウディ スカイスフィアは、アウディブランドが未来のラグジュアリーを再定義する方法を示しているコンセプトカー。それは、運転だけに留まらない。このコンセプトモデルはパッセンジャーを魅了し、これまでにない体験を提供するという明確な目標を持って設計された。
パッセンジャーに最大限の自由をもたらすため、アウディ スカイスフィアは「グランドツーリング」体験と「スポーツ」体験という、2つの全く異なる運転体験を提供できるように設計された。
これを実現するため、アダプティブホイールベースという新しいテクノロジーを採用。電気モーターとボディ/フレームコンポーネントが互いにスライドするという洗練されたメカニズムにより、ホイールベース及び車両の全長を最大250mm変化させることができる。同時に車高も10mmの範囲で調整され、快適性とドライビングダイナミクスを強化する。
スポーツモードとグランドツーリングモード
ドライバーはボタンを押すだけで、好みの走行モードを自由に選択することが可能。「スポーツ」モードを選択すると、全長は4.94mとなり、リヤホイールステアリング(4輪操舵)と相まって、このEVロードスターをきわめて俊敏に走らせることができる。
自動運転を実現する「グランドツーリング(GT)」モードを選択すると全長5.19mに延長され、最大のレッグルームが出現。同時にシームレスに統合されたデジタルエコシステムによるサービスを利用しながら、移り行く空や景色を楽しむことができる。
このモードでは、ステアリングホイールとペダル類が乗員から見えない位置に格納され、それによって創出される広々としたスペースはスポーティなEVコンバーチブルにまったく新しい可能性を開く。その一方で、アウディ スカイスフィアは、センサーシステムで道路と交通状況を自動的に監視することにより、乗員を目的地まで安全に送り届けてくれる。
名車・ホルヒ 853 ロードスターとのつながり
アウディ スカイスフィアは、米国カリフォルニア州モントレーとその周辺で開催される自動車関連イベント「モントレー・カーウィーク」の一環として、2021年8月13日にペブルビーチゴルフコースのフェアウェイでワールドプレミアされる。
アウディ スカイスフィアの設計は、マリブにあるアウディデザインスタジオで行われた。マリブは、ロサンゼルスの郊外と北カリフォルニアを結ぶ有名な海岸道路、パシフィックコーストハイウェイのすぐ近くにある。このクリエイティブなプロジェクトを担当したのが、スタジオマネージャーのゲール ビュザンと彼が率いるチーム。この革新的なニューモデルは、アウディの歴史における伝説的なクラシックモデル「ホルヒ 853 ロードスター(Horch 853 roadster)」からインスピレーションを得た。
この全長約5.20メートルの印象的なコンバーチブルモデルは、1930年代のモダン ラグジュアリーを定義しただけでなく、2009年にペブルビーチで開催されたクラシックカーのコンテスト「コンコース デレガンス」でも優勝している。
アウディ スカイスフィアとホルヒ 853 ロードスターとの視覚的な繋がりは、その寸法、コンパクトなキャビン、長いボンネットを備えたプロポーションに限定されている。
ホルヒ 853 ロードスターは、排気量5.0リッターの直列8気筒エンジンを搭載したが、アウディ スカイスフィアのフロントアクスルとフロントウインドウの間には充電器、DC/DCコンバーターといった電気駆動コンポーネントに加え、アダプティブホイールベース用のアクチュエーターとエレクトロニック/メカニカルコンポーネントが搭載されている。また、トランクルームには専用にデザインされたふたつのゴルフバッグを積載することが可能となっている。
最高出力465kWを発揮する電動ドライブシステム
デザインプロジェクトマネージャーのゲール ビュザンは、アウディ スカイスフィアについて次のようにコメントしている。
「電動化、デジタル化、自動運転といった新しいテクノロジーにより、現代の典型的なロードスターをはるかに超える体験を提供することが可能になりました」
リヤアクスルに搭載された電気モーターはリヤホイールを駆動。最高出力465kW・最大トルク750Nmを発生するこの電気モーターは、重量1800kgのロードスターを瞬時に加速させることができる。前後重量配分を約40:60に設定したことによってリヤアクスルに十分なトラクションが生まれ、フル加速した場合は0-100km/hを4秒で走り抜ける。
アウディ スカイスフィアのバッテリーモジュールは、主にキャビン後方に搭載。これは、車両の重心を下げて敏捷性を高めるための理想的な配置となる。さらに別のバッテリーモジュールをインテリアの運転席と助手席の間のセンタートンネル内にも搭載。これは、ビークルダイナミクスを考慮した結果だという。バッテリー容量は80kWh以上で(予測値)、経済的なGTモードで走行した場合、500kmを超える航続距離(WLTPモード)を実現している。
スイッチひとつで変更可能なステアリング特性
サスペンションは、フロント及びリヤともにダブルウィッシュボーンを採用。アッパー及びロワーウィッシュボーンは、鍛造または鋳造アルミニウム製となる。ステアリングは、前輪と後輪を制御するステアバイワイヤシステムを介して行う。このシステムはフロントアクスルに機械的に接続されていないため、ドライバーはボタンにタッチするだけで、さまざまなステアリングレシオと設定を選択することができる。
これにより、ステアリングを非常にダイレクトな設定から、快適性重視の設定まで、幅広く調整することが可能になった。さらに駐車時にはステアリング操舵力を変化させることもできる。リヤアクスルステアリングとアダプティブホイールベースは、車両の回転半径を小さくするためにも役立つシステムとなった。
洗練されたアウディのシャシーテクノロジーにより、サスペンションは幅広い走行条件に対応。このコンセプトモデルには、最新世代のエアサスペンションが装備され、3つの独立したエアチャンバーを制御することにより、優れた快適性を提供する。素早い加速時には、個々のチャンバーを無効にすることにより、スポーティな走行性能を実現。その場合、スプリング特性がよりプログレッシブな設定となり、ロールとピッチが最小限に抑えられる。また、車高を10mm低下させることで、空気抵抗を減少させることも可能。これは長距離を走行する場合に特に効果を発揮する。
アウディ スカイスフィアのアクティブサスペンションは、車両のハンドリング特性を変化させる際に主要な役割を果たす。コースティングする場合、個々のホイールを選択的に上下させることによって、路面の凹凸やうねりを補正。これはナビゲーションシステムのデジタル予測機能と、アクティブシャシーの高度なコントロール、作動システムを連動させることによって実現した。
空力デザインが採用された23インチの合金ホイールには、285/30タイヤを装着。このタイヤは、低い転がり抵抗と加速時及びコーナリング時の優れたグリップを高次元でバランスさせている。
スピードスターとシューティングブレークを組み合わせたデザイン
アウディ スカイスフィアの全長は5.19m(ホルヒ 853 ロードスター:5.23m)、全幅は2.00m(同:1.85m)。ホルヒ 853 ロードスターとの顕著な違いは全高に表れている。ホルヒ 853 ロードスターは、高くそびえる象徴的なデザインにより、その全高は1.77m。その一方でアウディ スカイスフィアは「スポーツ」モードを選択した場合、低い重心と優れたエアロダイナミクスを実現するため全高は1.23mに設定された。
ホルヒ 853 ロードスターとの決定的な違いは、そのディメンションではなく、ボディラインにある。豊かなカーブを描き、大きく張り出したアウディならではのホイールアーチを備えたアウディ スカイスフィアは、幅広いトレッドを強調し、ダイナミックな走行性能を明確に表現した。
サイドビューの特徴は、長いボンネットと、特にフロントにおける短いオーバーハング。ホイールアーチとボンネットの表面は、有機的な曲面から構成されている。風洞実験室でテストが繰り返されたリヤエンドは、スピードスターとシューティングブレークのデザイン要素に、トラディショナルでスリムなデザインの大きなガラス面を組み合わせた。
また、アウディ スカイスフィアのために専用デザインされた2個のバッグは、リヤウインドウ下のスペースに置くことが可能で、クロスパターンの専用ストラップで所定の位置に固定することができる。
様々な演出が与えられたLEDライトシステム
ラジエーターグリルを持たないフロントエンドには、アウディブランドを象徴するシングルフレームと、発光3Dデザインのフォーリングスエンブレムを装着。シングルフレーム全体とその側面エリアには、ホワイトのLEDエレメントが配置され、視覚的な効果を演出する。機能的な面だけでなく、車両をロック/アンロック時に作動するウェルカムシーケンスが含まれている。
フロントサイドに設置されたデイタイムランニングライトは、ライティングユニットに「視線」を送るような印象を与える。ホイールベースを変更すると、前後のLEDが特別なダイナミックシーケンスを展開。さらにリヤエンドにも、車幅全体に広がるデジタル制御のLEDライトを採用した。垂直に切り落とされたリヤサーフェイスには、無数の赤いLEDがルビーのように点在。ライティングユニットのオンとオフを切り替えると、リフレクターがダイナミックな光と影の効果を演出する。
ホイールベースを変更し、ドライブモードを「グランドツーリング」から「スポーツ」に変更すると、ライトシグネチャーも変化。特にシングルフレーム周辺エリアでは、アウディ スカイスフィアのキャラクターが変化したことが明確に分かるようになっている。
サイドビューの特徴は、リヤホイールアーチに突き刺さっているように見えるロッカーパネル。これは、ホイールベースを変更するときに必要な機能で、実際にホイールベースを後方に押す働きを担っている。
ロッカーパネルは、車両のフロントエンドに固定されており、ホイールベースを変更すると、このパネルがドアの下で後方にスライド。これにより、ホイールベースは25cmの範囲で大きく変化する。これは、アウディ A8 Lのサイズから、アウディ RS 5のサイズへと変化することを意味する。
レベル4の自動運転に対応した先進的なインテリア
今回のプロジェクトでは、将来的に3台のコンセプトモデル(アウディ スカイスフィア、アウディ グランドスフィア、アウディ アーバンスフィア)が発表される予定。アウディは、乗員を取り巻く空間を「sphere」(スフィア=球)と呼び、インテリアデザインの中心的エレメントとして採用している。3台のコンセプトモデルは、すべてレベル4の自動運転に対応しているため、特定の道路や交通状況では、ドライバーはクルマに運転を完全に任せることが可能になる。
操作系統を隠した際のインテリアには、アールデコの世界からインスピレーションを得た、明るく広々とした環境を実現した。快適なシートはデザイナー家具を連想させまるが、決して妥協することなくドライバーシートとしての役割も果たしている。サイドサポートと安全機能は標準パッケージに含まれる。
シート地は、持続可能な方法で製造されたマイクロファイバーファブリックを採用。このシートは、多彩なポジションに移動できるため、飛行機のファーストクラスのような広々としたレッグルームを生み出すことが可能になっている。シート地だけでなく、環境認証を受けたユーカリ材や合成皮革など、持続可能な方法で製造された他の素材も採用された。
「スポーツ」モードに切り替えると、アウディ スカイスフィアのインテリアは、人間工学的に完璧なドライビングマシンに変化。この場合、シャシーやボディとともにセンターコンソールのインストゥルメントパネルとモニターパネルも後方に移動する。ドライバーは、ステアリングホイールやペダルを含むすべてのコントロール類を、最適な位置に調整することが可能だ。
ダッシュボードとセンターコンソールの上部にある大きなタッチパネル(幅1415mm、高さ180mm)は、車両とインフォテインメントシステムの操作に使用。「グランドツーリング」モードでは、このタッチパネルを用いてインターネット、ビデオ会議、映画コンテンツのストリーミング再生などを行うこともできる。また、ドアに設置された小さなタッチパネルはエアコンを操作するために使用する。
このラグジュアリーなコンバーチブルにふさわしい高品質なサウンドシステムは、たとえ走行中でもコンサートホールのようなサウンド体験をパッセンジャーに提供。スピーカーはドアパネル背後やリヤインテリアウォールにもいくつか配置され、サラウンドサウンドを生成する。また、ヘッドレストの形状により、オープン時の乱気流や不快な風切り音も防ぐことができる。