サーキット愛好家のため最新型でさらに魅力を増した「シビック・タイプR」

まさに日本の誉れ! 「ホンダ シビック タイプR」はスーパースポーツカーに引けを取らぬ走りが魅力

11代目シビックのスポーツグレード、シビック・タイプRが登場した。6代目となるシビック・タイプRの開発コンセプトは先代と同じ「アルティメットドライビングプレジャー」で「2.0」に進化した。タイプRの聖地、鈴鹿サーキットでその意味を考えた。

Honda Civic Type R

伸びやかとなったエクステリア

張り出したリヤフェンダーが端正にまとめられ、先代のガンダム的な雰囲気が減った。新型シビック・タイプRは端的に言ってシンプルかつ美しいデザインになったと感じる。プラットフォームは先代のキャリーオーバーとはいえ、先代と比較して、全長で20mm、ホイールベースで35mm長く、全幅が15mm幅広と全体に大型化した。一方全高は13mm低められているので伸びやかなフォルムとなったのは間違いない。

先代同様のK20C型2.0リッター直4ターボエンジンに6速MTを組み合わせ、駆動方式FWDは当然不変。エンジンは最高出力で10‌PS、最大トルクで20‌Nmアップし、それぞれ330PS、420Nmとなった。ドライビングモードは一般道向けの「コンフォート」、ワインディングや荒れた路面のサーキット向けの「スポーツ」、今回の鈴鹿サーキットのような平滑路面サーキット向けの「+R」、6つのパラメータを好みでセッティングできる「インディビジュアル」の4種類。

シフトレバーの脇にモード切り替えスイッチが用意され、「+R」は専用ボタンで選択する。なお6つのパラメーターとはエンジン、ステアリング、サスペンション、エンジンサウンド、レブマッチ、メーター表示。+Rを選択するとタコメーターがバータイプに変わり、LEDレブインジケーターとブザー音でシフトタイミングを的確に知らせてくれる。

あまりにも便利なレブマッチ機能

試乗は先代シビック・タイプRのリミテッド・エディション試乗会でも担当してくれた腕利きエンジニアの先導だ。あの時はモード変更を試す余裕が無く、ついていくだけで精一杯だったので、今回「そこそこ(のペース)にしてくださいよ」と言うと、「こっちは旧型なんで全然余裕ですよ」と笑って言う。とはいえプロのテスト走行で鈴鹿のラップタイムが先代比約1秒速いくらいでは、はたしてどうなるか……。

半信半疑でピットからスタートする。先代でも良好だったシフトフィールはさらにブラッシュアップされた印象で吸い込まれるように入っていく。多くのスポーツカーがMTを廃止する中、シビック・タイプRはかたくなに6速MTを死守している。レースをするのでもタイムアタックするのでもなければ、走っていて楽しいのはMTだ。レブマッチというオートブリッパー機能が俊敏なシフトダウンも可能にしてくれる。シケイン進入時、フルブレーキからの3速から2速など、吸い込まれるように入っていくのはまさに快感だ。唯一の懸念はこのレブマッチ機能があまりにも便利で、シフトを丁寧にやらなくても入ってしまい、技量が低下するかもしれないということだ。

直線もコーナーも明確に速くなった

先代と10‌PS以上の差を感じたのがストレートでの速度の伸びだ。今回の試乗では1セット4周だったが、4周目でもパワーのたれが少ないと感じた。これは冷却性能も大いに貢献しているだろう。フロントグリルの開口部は整流の意味とエンジン性能維持の向上にも効果がありそうだ。

コーナリングではインフォメーションとグリップの高さが両立している。S字でも逆バンクでもグリップがあまってしまう。明確に苦しそうな先代リミテッド・エディションを安心してグングン追い上げられる。タイヤ幅が245から265へと拡大しているのが理由のひとつだ。先代の20インチから19インチにダウンしたが、リバースリム形状を採用したことで小さくなった印象はないし、バネ下重量を考えれば有利だろう。

安定感は恐ろしく高い。路面が荒れていて、足まわりの差が出るダンロップコーナーでもフルスロットルで加速できる。+RモードならVSAオンでもタイトコーナーで必要以上に踏み込まなければ、制御はほとんどわからない。だがその安定性の高さ故、逆バンクやスプーンの入り口などでまったくテールが出る気配がない。先代ではリヤを振り出す操舵をすればスーッと流れ出したが、新型のリヤは同様の運転でもどっしりと安定している。まるで長いホイールベースの一格大きなモデルに乗っているかのようだ。この代替わりは大きなギャップとなるだろう。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ホンダ・シビック・タイプR

ボディサイズ:全長4595 全幅1890 全高1405mm
ホイールベース:2735mm
車両重量:1430kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1995cc
最高出力:243kW(330PS)/6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2600-4000rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後265/30ZR19
環境性能:12.5km/L(WLTC)
車両本体価格:550万円

【問い合わせ】
Hondaお客様相談センター
TEL 0120-112010
https://www.honda.co.jp

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…