ロータス最後の内燃機関車「エミーラ」は意外とラグジュアリーだった?

「日常辛くない」ロータス最後の純内燃機関モデル「エミーラ」の6速MTをサーキットで堪能

初めはスポーツモードやトラックモードにすると、排気音が変わり俄然やる気のあるサウンドを奏で始め、アクセルのつきもよくなった。
初めはスポーツモードやトラックモードにすると、排気音が変わり俄然やる気のあるサウンドを奏で始め、アクセルのつきもよくなった。
ロータス最後の内燃機関車として登場したエミーラ。従来のアルミバスタブシャシーでありながら、これまでとは一線を画するエクステリアと豪華な室内に仕立てられているという。日本上陸第1号車に袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗した。

Lotus Emira V6 First Edition

搭載するのは3.5リッターV6スーパーチャージャーモデル

ロータスは「ハイブリッドモデルを造らない」と明言しているから、今後登場するSUV「エレトレ」やハイパーカー「エヴァイヤ」さらにコンパクトなスポーツカーといったBEVの専業メーカーとなるのが既定路線だ。つまり昨年生産を終えたエリーゼやエキシージ、エヴォーラの後を継ぐエミーラこそ、ロータス最後の内燃機関搭載車となる。かつてエキシージスポーツ410を半年あまりに渡って日常使いをテストしてきた身としては感慨深い。

全長×全幅×全高は4413×1895×1225mmで、もっとも近いエヴォーラと較べて23mm長く、45mm幅広く、14mm低くなった。ホイールベースは2575mmで同値(ちなみにエキシージは2370mm)なので、エヴォーラの押出し結合アルミニウムシャーシを部分的に流用していると想像できる。ただし、足まわりなど設計が異なり、新たな乗り味をもたらしているという。

パワートレインはこれまでエキシージやエヴォーラにも採用されたトヨタ製3.5リッターV6スーパーチャージドとAMG製の2.0リッター直4ターボが用意される。いずれも横置きに搭載され、変速機は6速MTとV6に従来と同じ6速ATが、直4に新しい7速DCTが組み合わされる。今回試乗した個体は初期限定車のV6ファーストエディション6速MTモデルだ。プロトタイプではなく市販モデルで、今回のような試乗会や全国のディーラーに展示するために本国から取り寄せた貴重な1台だという。

レーシーではなくラグジュアリー

生粋のスポーツカーでありながら、今後ADASの充実も宣言されており、ACCや衝突予防システム、車線逸脱警報などが搭載される予定で、ますます人気の過熱が予感される。

軽量を是とするロータスだけあって、可変ダンパーや大仰な空力付加物の類いは装備されない。その甲斐あって車重は1458kg(DIN)と軽量だ。ミニマルなスタイリングだが、エヴァイヤで培った知見を元に可変エアロなしで適切な前後バランスのダウンフォースを発生するという。ただし競技用GT4マシンには大型のリヤスポイラーが装着されているようだ。

スタイリングはこれまでの見るからに軽量でレーシーな趣から一転、ラグジュアリーなスーパースポーツ的イメージとなった。フラッシュサーフェス化されたドアノブは断然開けやすい。試乗車に装着された12Way電動調整式プレミアムスポーツシートに腰を下ろす。座面高はやや高め。

室内はメーターがエキシージの最終モデルと同様にTFTとなったほか、センターにも10.25インチのタッチスクリーンを設置しており、トリムも含めしっかりモダナイズされている。右ハンドルのダッシュパネル右下には電動パーキングブレーキスイッチとメーター照度調整ダイヤル、そしてリヤゲートオープナーが備わる。リヤゲートを開けるとV6のロゴが誇らしげなエンジンと、ラゲッジスペースが現れた。荷室容量は151リットルで先の電動パーキングブレーキと併せて隔世の感を覚える。なおラゲッジはシート後方にも208リットルの空間があり、あわせて359リットルの容量を誇る。一方、フロントフードはあくまでサービスパネルなので、これまで同様開かない。

ロータスにしては快適な「ツアーパック」

赤いフタを跳ね上げ、スタートスイッチでV6エンジンを始動。ツアーモードで慎重に発進する。低速トルクは豊かだ。軽量ボディと相まって、高いギヤを選んでもスムーズに加速するのはこれまでのロータスに通じる物を感じる。ツアーで走る分には静かで快適そのもの。100km/hでの回転数は6速2000rpm、5速2500rpm、4速3000rpmとなった。

なかなかアクセルを踏まないのには訳があって、正直に報告すれば、先に述べたように試乗車が貴重な車両のため4000rpmのリミットが厳命されていたのだ。レッドゾーンは7000rpmなので実力の半分程度の出力だろうか。実際パワーメーターを見ていると205bhp(208PS)しか発揮していなかった。

それでも気を取り直してスポーツモードやトラックモードにすると、排気音が変わり俄然やる気のあるサウンドを奏で始め、アクセルのつきもよくなった。メーター表示が見やすくなるが、今回のように4000rpmの上限では却って見にくい。6000rpm以上の高回転まで回せば、シフトタイミングを促すランプが点灯するが、どのような光り方をするのか確認はできなかった。

サスペンションは、スポーツ走行と一般道の快適性を両立する「ツアー」とサーキットもこなせる「スポーツ」が選択可能だが、今回はツアーサスにグッドイヤー・イーグルF1スーパースポーツタイヤを組み合わせた「ツアー」パックだった。エキシージスポーツ410を半年あまりテストしていた経験で言うなら硬すぎず、快適なグランドツーリングが楽しめそうだ。なおスポーツパックはオプションでミシュラン・スーパースポーツカップ2が選択可能。いずれも承認タイヤである。なおホイール径は前後20インチで前後ミックスを好む(?)ロータスとしては珍しいかもしれない。

ADASも搭載される見込み

シフトフィールはずっとよくなった。急げないシフトは相変わらずだが、「カチッ」でも「グニャ」でもない「シャリッ」と入るこの感じは独特だ。ブレーキを残したり、多めに、あるいは早めにステアリングをきったり、いくつかの操舵パターンでコーナーを試したが、ノーズはこれまでよりも素直で入りやすい印象だ。電動油圧パワステのステアフィールはエヴォーラによく似ている。

あいにくのウエットでブレーキはそれほど追い込まなかったが、ABSの制御もこれまでと較べて緻密な印象だ。フルブレーキからのターンインでフロントの入りの良さも改善されていそうだ。一点だけワイパーブレードの張力が弱く、フロントウインドウを拭き上げる力が乏しいことに要改善を感じた。

日本でのV6と直4のファーストエディション受注台数は450台。グローバルで2000台というから日本の比率は多いと言えるだろう。やや遅れているデリバリーはもうすぐ始まるという。今後ADASの充実も宣言されており、ACCや衝突予防システム、車線逸脱警報などが搭載される予定で、ますます人気の過熱が予感される。

車名は「司令官」あるいは「リーダー」という意味の古代言語に由来するそうだが、これまで1500台に過ぎなかった年間販売台数をいっきに7000台以上に押し上げるポテンシャルを秘めていると感じた。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年12月号

SPECIFICATIONS

ロータス・エミーラV6ファーストエディション

ボディサイズ:全長4413 全幅1895 全高1226mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1458kg(Kerb DIN)
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:3456cc
最高出力:298kW(405PS)/6800rpm
最大トルク:420〈430〉Nm(42.8〈43.8〉kgm)/2700-6700rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20(8.5J) 後295/30R20(10.5J)
最高速度:288km/h
0-100km/h加速:4.3〈4.2〉秒
車両本体価格:1452万円

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
http://www.lotus-cars.jp

グッドウッドに展示された新型ミッドシップスポーツカー「エミーラ」(左手前)とレース仕様の「エミーラGT4」(左中)、BEVのハイパーSUV「エレトレ」(右)、限定生産のBEVハイパーカー「エヴァイヤ」(左奥)。

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吉岡卓朗

ゲンロクWeb編集長。趣味はクルマを用いたラリーやレースなどモータースポーツ活動だったが、現在はもっぱ…